Underworld : Rise of the Lycans


2009年3月14日(土)「アンダーワールド ビギンズ」

UNDERWORLD: RISE OF THE LYCANS・2009・米/ニュージーランド・1時間30分(IMDbでは92分)

日本語字幕:手書き書体下、藤澤睦実/シネスコ・サイズ(HDTV、Panavision Genesis)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)(レイトショー公開)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/underworldriseofthelycans/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ヴァンパイア族が支配する昔、狼族の中に人の姿を持ったルシアン(マイケル・シーン)が生まれた。ヴァンパイア族の長老ビクター(ビル・ナイ)はルシアンを生かしておくことにし、つねに飢餓状態において人間を襲わせ、異種の狼族、ライカン族を増やして護衛として使うことを考えた。後年立派に成長したルシアンは、奴隷の中でも長老の信頼を得て特別扱いされていた。そして、ビクターの娘、女戦士のソーニャ(ローナ・ミトラ)と愛し合うようになっていた。さらにライカン族を知性のない獣、単なる奴隷として扱うヴァンパイア族に対して、ルシアンは脱出して自由の身になることを画策していた。

73点

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 なぜレイト・ショーなのか理解に苦しむ。普通に面白かった。とにかくその世界観が良くできている。中世のような時代で、剣と弓矢が支配するパワーこそ至上の世界。しかもヴァンパイア族は太陽光線の下には出られないので、つねに暗闇で暮らしている。その暗さと怪しさ。

 ただ、いまひとつストーリーはわかりにくい。情報量が多すぎて、うまく日本語に置き換えられなかったのだろう。なぜそんなことをするのかが、ひまひとつピンと来なかった。ただ、支配するものと支配されるものという、いわば普遍のテーマをうまく取り込み、しかも身分違いの恋というこれも普遍のテーマを入れ、つまりは中世の冒険活劇のような物語を、吸血鬼と狼男のアクションで描いたという感じ。よくまとめてあるし、SFXはすごいし、お金がかかっているけれど、すでのその先の話である「アンダーワールド」(Underwoprld・2003・米/独/ハンガリー/英)があるわけで、そのストーリーが変わるわけではない。だからどうなのと言われれば、どうでもない。別に知らなくてもいい話だし、知ったからと言ってどうにもなる話でもない。続編を作るにはこうするしかなかったんだろうが、そこがこの映画の一番辛いところ。肝心なところはすべて完結してしまっている。

 しかも、「アンダーワールド」の面白さは、吸血鬼対狼男の中世的雰囲気を現代に持ってきて戦わせるというところだったわけで、「2」の「アンダーワールド:エボリューション」(Underworld: Evolution・2006・加/米)から、すでに過去にもどっていく傾向はあったのだが、本作では完全に過去の世界へ行ってしまった。悪くはないが普通の映画になってしまったような感じが……。

 ヒロインのソーニャ役はローナ・ミトラ。イメージ的には「1」と「2」のケイト・ベッキンセールに近い。同じ役ではないから関係ないのだが、違和感がない。しかも美人。最近ではマーク・ウォールバーグの「ザ・シューター 極大射程」(Shooter・2007・米)で、FBIの女性捜査官を演じていた人。感情を抑えた感じが良い。

 ライカンの祖、ルシアンはマイケル・シーン。「1」からずっと同じ役を演じている。近日公開予定の「フロスト×ニクソン」では、いかにもまじめなイギリス人司会者を演じているし、「クィーン」(The Queen・2006・英ほか)では二枚目の英国首相トニー・ブレアを演じていた。作品によって全く印象の変わる人だ。同じ人とは思えない。

 悪党の親玉、ヴァンパイアーの長老の1人ビクターを演じたのはビル・ナイ。「2」からビクターを演じている。大作では「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」(Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest・2006・米)のディヴィ・ジョーンズで有名。SFコメディの「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy・2005・米/英)にも出ているし、心温まる群像劇「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)で確か年老いたロックンローラーを、脱獄コメディの「ラッキー・ブレイク」(Lucky Break・2001・英)の囚人も良かった。

 ビクターの部下タニスを演じていたのはスティーヴン・マッキントッシュ。タイム・スリップ・ミステリーの「ジャケット」(The Jacket・2005・米)で医師の一人を演じていた人。ガイ・リッチーのヴァイオレンス・アクション「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(Lock, Stock & Two Smoking Barrels・1998・英)にも出ていた。渋い二枚目。

 監督は、ずっとクリーチャー・デザインをやっていたパトリック・タトポリス。もちろん「1」と「2」も手がけている。ほかにハリウッド版の「ゴジラ」(Godzilla・1998・米/日)のデザイン、SFホラー・アクション「ピッチブラック」(Pitch Black・2000・米)、ゲームの映画化ホラー「サイレントヒル」(Silent Hill・2006・加/仏/日)、「バイオハザードIII」(Resident Evil: Extinction・2007・仏ほか)なども手がけている。結構日本とのつながりがある作品が多いかも。長編劇場映画の監督としては本作が初監督作品。

 プロデューサーの1人に「1」と「2」の監督であるレン・ワイズマンが加わっている。そしてコプロデューサーの1人に、役者としてビクターの右腕レイズも演じ、設定とストーリー作りにも参加しているというケヴィン・グレイヴォー。実はマーベル・コミックのライターでもあるらしい。「スパイダーマン」「アイアンマン」などを書いているらしい。俳優としてはTVが多いようだが、映画では「メン・イン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)で頭にも目がある宇宙人を演じていた。

 日本でもR-15というだけあって、腕が飛んだり、顔を食いちぎったり、なかなかの残酷表現。変身シーンなど、特殊効果はかなりの見物。ただやっぱりコピー防止のドットが気になった。しかも違うパターンのような配置。暗いシーンが多いのに、きれいに撮れていたのはデジタル・ビデオ・カメラだったからだろう。

 公開初日のレイト・ショー、銀座の劇場は前日に座席を確保しておいて、20分前くらいについたらロビーで待機。10分前くらいに前回が終了し、清掃の後入れ替えに。スクリーンはビスタで開いていて、床に傾斜がないので前席がジャマになる劇場。せっかきくスクリーンが大きめなのに。

 最終的には668席に6割くらいの入り。レイト・ショーとしてはきわめていい入りではないだろうか。若い人は1/3くらいで、2/3は中高年。女性はだいたい1/3ほど。

 チャイムが鳴って、アナウンスの後ほぼ暗くなって始まった予告は……フジテレビの上下マスク「アマルフィ 女神の報酬」はイタリアで発生した日本人少女失踪事件の謎を追う日本人外交官の活躍を描いたものらしい。主演は織田裕二。さらに福井晴敏監修脚色の日本軍潜水艦vsアメリカ駆逐艦の戦いを描いた上下マスクの「真夏のオリオン」は、なんだかロバート・ミッチャムの「眼下の敵」(The Enemy Below・1957・米)みたいだが……。

 少し上下マスクの「ハゲタカ」は企業買収を描く作品らしいが、内容はほとんどわからなかった。

 圧巻だったのは上下マスクで、火の玉が飛んできて街を壊し、ピラミッドや空母も壊し、それがロボットになって、車になる「トランスフォーマー リベンジ」。メカも登場しまくりで、圧倒的な映像の力が炸裂。ただ、監督はあのマイケル・ベイ。IMAX版もあるらしい。

 「1」の出来が悪かったのになぜか続編が作られるというので驚いたのが、「ピンクパンサー2」。豪華出演陣には驚いたが、なぜなんだろう。予告編だけで、かなりイタイ。

 「ワルキューレ」の長いバージョンの予告の後、スクリーンがシネスコになり、左右マスクで「ザ・バンク 落ちた巨像」の予告。クライヴ・オーウェンが「シューテム・アップ」(Shoot'em Up・2007・米)を思い出させて嫌な予感がするが、ナオミ・ワッツが出ているから大丈夫か。


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