Frost/Nixon


2009年3月29日(日)「フロスト×ニクソン」

FROST/NIXON・2008・米/英/仏・2時間02分

日本語字幕:手書き書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://www.frost-nixon.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1974年8月9日、アメリカ第37代大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)が、ウォーターゲート事件により任期途中で辞任するという前代未聞の事態となった。しかし辞任会見で国民への謝罪はなく、Vサインを掲げて堂々と去っていった。それをイギリスのトーク・ショー司会者で、オーストラリアでも番組を持つプレイボーイの人気者デビッド・フロスト(マイケル・シーン)はTVで見ていた。全世界で4億人もの人が見たということから、アメリカ進出をもくろむフロストは、さっそくプロデューサーのジョン・バート(マシュー・マクファディン)に相談し、ニクソンにインタビューを申し込む。一方、納得できない講演会を続けていたニクソン側も、3大ネットワークの1つCBSのマイク・ウォレスとイギリスのデビッド・フロストのインタビュー申し込みを検討していた。これを利用し、再び政界に復帰しようと考えていたのだ。ニクソンはより組みやすく、より高額な料金を提示してきているフロストのインタビューを受け入れることにする。

75点

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 実話の映画化。実話なのでどんでん返しや派手な仕掛けはないが、実話ならではのハラハラさせる先の読めない展開がある。ドキュメンタリー風の作り方なので、絵はあまりきれいではないが、シネスコ画面を生かした絵作りもあり、見せる。ただ、やはり盛りだくさんの内容を字幕にするには無理があるので、より深く理解するためにはDVDの日本語吹替版の方が良いかもしれない。

 とにかく素晴らしいのは、ニクソンを演じたフランク・ランジェラ。それほどニクソンを知っているわけではないが、見ている内にニクソンにしか見えなくなってくる。そして、最初は余裕でフロストをあしらい、政治家らしく答えを一般論に持って行ったり、関係ない話にすり替えていったり、しかもしゃべり続けてつけいる隙を与えないのだが、フロストの反撃をくらいついに感情的に答えて馬脚を現してしまうあたりのリアルさ、そして彼の焦り……実に見事。ボクにはジョン・バダムの「ドラキュラ」(Dracura・1979・米/英)のイメージが強い。最近では「スーパーマン リターンズ」(Superman Returns・2006・豪/米)でクラーク・ケントが勤めるデイリー・プラネット紙の編集長を演じていた。

 当然、相手役のフロストを演じたマイケル・シーンもすばらしい演技。とても「アンダーワールド」(Underworld・2003・米/独ほか)のライカン族の長とは思えない。「クィーン」(The Queen・2006・英ほか)じゃ二枚目の英国首相トニー・ブレアだったもんなあ。ニクソンに先制攻撃を食らって。ハトが豆鉄砲を食らったような顔になるところが見事。彼の本当の顔ってどれなんだろうと思ってしまう。資金繰りのため舞台裏で奔走するところもリアルだった。

 すべて作り物でありながら、演出としてドキュメンタリーの形式を取っていて、主要登場人物があとでインタビューに答える形で当時を振り返る。もちろんそこに登場するのは本人ではなく役者さんたち。ただし、実際にその場にいた人も出演しているという。ホワイト・ハウスから飛び立つヘリのパイロットは本当に操縦したパイロットだそうだし、フロストの誕生日パーティ゛はレストランの経営者が自分の役で出ているという。また、ニクソンの住まい、ラ・カーサ・パシフィカはセットではなく本当の場所らしい。

 ニクソンの側近、ジャック・ブレナンを演じたのはケビン・ベーコン。ケニー・ロギンスの主題歌が大ヒットした「フットルース」(Footloose・1984・米)でブレイクした人で、最近は悪役が増えてきて「秘密のかけら」(Where the Truth Lies・2005・加/英)も怖かった。

 フロスト側のスタッフとなるノンフィクション作家のジェーズ・レストンを演じたのは、性格俳優とでも呼ぶべきサム・ロックウェル。「キャメロット・ガーデンの少女」(Lawn Dogs・1997・英)や「グリーンマイル」(The Green Miles・1999・米)は強烈だった。しかし一方で「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)や「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy・2005・米/英)などのコメディにも出ている。最近は「ジェシー・ジェームズの暗殺」(The Assassination of Jasse James by the Coward Ford・2007・米)でジェシー・ジェームズを暗殺する男の兄を演じていた。

 同じくフロスト側のスタッフとなるジャーナリストのボブ・ゼルニックを演じたのは、オリバー・プラット。印象に残ったのはマイク・ニコルズの「ワーキング・ガール」(Working Girl・1988・米)あたりからか。名脇役という感じ。最近見たのはウェズリー・スナイプスの「スナイパー」(Liberty Stand Still・2002・独/加)だったか。

 プロデューサーのジョン・バートを演じたのは、マシュー・マクファディン。イギリス生まれで、ちょっと雰囲気がジョン・キューザックに似ている。TVの仕事が多いようだが、キーラ・ナイトレイの「プライドと偏見」(Pride & Prejudice・2005・仏/英)に出ていたらしい。他に日本公開されたものだと、なかなか面白かったWWII暗号解読戦「エニグマ」(Enigma・2001・英)もある。TVでは「MI5」(Spooks・2002〜2004・英)が最近日本でDVD発売された。髪の色が違うので印象がだいぶ違う。

 原作・脚本・製作総指揮を務めたのは、ピーター・モーガン。元は舞台劇だという。なんと「クイーン」(The Queen・2006・英/仏/伊)や「ラストキング・オブ・スコットランド」(The Last King of Scotland・2006・英)の脚本も手がけている。さらには見ていないが「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl・2008・英/米)も書いているらしい。だいたいジャーナリスティックな感じがする傾向のものが多いような。

 監督はロン・ハワード。元は役者でTVから始めやがて映画に。有名なのはジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」(American Graffiti・1973・米)やジョン・ウェインの最期の映画「ラスト・シューティスト」(The Shootist・1976・米)など。監督作品では初の長編劇場映画となった「バニシング IN TURBO」(Grand Theft Auto・1976・米)や、「スプラッシュ」(Splash・1984・米)、「コクーン」(Cocoon・1985・米)のファンタジー作品を手がけ、最近では話題作「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code・2006・米)があり、続編が近日公開予定。すべてが面白いわけではないが、面白いものはめちゃ面白い。

 公開2日目の初回、1時間ちょっと前に着いてとりあえず当日券と前売り券を交換。初回のみ全席自由。銀座の劇場は劇場へのエレベーターが動いておらず、ボックス・オフィスの近辺で待つ。30分前くらいにエレベーターが動き出した時に20人くらいの行列。ほぼ中高年での男性で、女性は3人ほど。

 スクリーンはシネスコで開いており、次第に若い女性も増えてきて、10分前くらいから半暗になってビスタで案内を上映。最終的には224席の9.5割くらいが埋まった。若い人は1割くらい。女性は4割くらいになった。

 ほぼ暗くなって始まった予告は……事件現場の部屋の掃除をする若い女性コンビを描いた「サンシャイン・クリーニング」はコメディらしいが、かなりのインパクト。主演は「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)のエイミー・アダムス。ちょっと見たいなあ。

 アカデミー賞候補にもなったミッキー・ロークの上下マスク「レスラー」は、予告だけではわからないが、なんだか涙の予感。「忘れられない人」(Untamed Heart・1993・米)のマリサ・トメイがでているのが気になった。

 上下マスクの「路上のソリスト」はジェイミー・フォックスとロバート・ダウニーJr.が共演する実話の映画化らしい。天才的チェリストとそれを報道したコラムニストの物語。かなりの感動作らしい。

 上下マスクの「ミーシャ ホロコーストと白い狼」は、WWII時ナチスに追われた少女が生き延びるために狼の群れに入るという物語らしい。カワイイ少女だが、かなりつらい物語のようだ。

 暗くなって、シネスコになり、ドルビー・デジタルの機関車のデモの後、本編の上映。


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