The International


2009年4月5日(日)「ザ・バンク 墜ちた巨像」

THE INTERNATIONAL・2008・米/独/英・1時間57分(IMDbでは118分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/theinternational/
(音に注意。入ると画面極大化。POPを可にすれば全国の劇場案内も)

ドイツ、ベルリン。巨大国際銀行IBBCの不正疑惑を追うニューヨーク検事局の捜査官が、合同捜査を行っていたパートナーのインターポール捜査官サリンジャー(クライヴ・オーウェン)の目の前で、何者かに毒殺される。そらにその情報提供者もまもなく殺されてしまう。ニューヨーク検事局の上司エレノア(ナオミ・ワッツ)は手がかりを追ってサリンジャーと合流するが、情報を握っていると見られたイタリアの武器会社の社長も目の前で狙撃されしまう。

77点

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 怖い映画。タイトルからもっと社会派的なものを想像していたが、スパイ・アクション的で、強烈なものだった。もちろん世界を裏でコントロールする巨悪の存在を告発するような形になっているから社会派的ではある。絶妙なリアリティで、本当にありそうな話に思える。物語の展開にドキドキし、この巨悪の存在に恐怖することになる。

 次々と関係者、証人が殺されていくことも怖いし、その手口も怖い。そういう仕事を引き受けるプロがいて、淡々と実行していくさまも怖い。それを追う捜査官たちの奮闘はよくできたスパイ映画を見ているようだ。思わぬ所にあった足跡からその姿が次第に明らかになってくるところなど実に鮮やか。

 それでいて、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で展開する銃撃戦は派手でありながらリアルで、もの凄い緊迫感。銃声も恐ろしいし、ゴミ箱の陰に隠れたくらいじゃ簡単に銃弾は貫通してやられてしまうその銃弾の恐ろしさ。

 司法機関上層部まで動かしてしまう巨悪の恐ろしさ。証拠を隠滅するため、片っ端から関係者を殺していく。「戦うなら司法の枠内にいてはダメだ」と言われる。その外に出て戦う覚悟があるかと。うーむ、なんという世界。

 インターポール捜査官を演じたクライヴ・オーウェンは、冗談のようなアクション映画「シューテム・アップ」(Shoot'Em Up・2007・米)とそっくりの無精ヒゲで嫌な予感がしたが、悪くはなかった。ちょっとピアスの跡が気になったが、ほとんどのハリウッド・スターはピアスしてるし……。使った銃は警察から渡されるベレッタM92、グッゲンハイム美術館ではNYPDの刑事が持っていたシルバーの3インチくらいのS&Wリボルバー、最後にはアーミン・ミューラー=スタールが持っていたCZ。インターポールは操作だけで逮捕などはしないから銃を持っていないらしい。

 美女ナオミ・ワッツは検事という意外な配役。最近は「ファニー・ゲームU.S.A.」(Funny Games U.S.・2007・米ほか)や「イースタン・プロミス」(Eastern Promises・2007・英ほか)など強烈な作品に良く出ているが、本作もその部類に入るだろう。本作はこの人がいなかったら男臭いモノクロのような映画になっていただろう。

 IBBCの暗黒部分担当はアーミン・ミューラー=スタール。つい最近「イースタン・プロミス」で恐ろしいロシアン・マフィアのボスを演じていた人。優しいおじいさんの印象だが、それが逆に怖い雰囲気を倍増させている感じ。

 IBBCのの頭取を演じていたのは、ウルリク・トムセン。ゲームの映画化「ヒットマン」(Hitman・2007・米)でロシアの大統領候補を、思わせぶりミステリー「ブロークン」(The Broken・2008・仏/英)でカウンセラーの医師を演じていた人。やっぱりちょっと怖い感じがする。ただ予告でこの頭取とインターポール捜査官の対決を見せてしまっていたのはイカンと思う。

 無表情の殺し屋を演じたのは、ブライアン・F・オバーン。たぶん監督の意図なのだろう、この人も優しげな顔をしている。ただ無表情なので怖い。ブルース・ウィリスとビリー・ボブ・ソーントンが共演した銀行強盗映画「バンディッツ」(Bandits・2001・米)や、イーストウッドの感動作「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)の神父、話題が先行した「ニュー・ワールド」(The New World・2005・米)などに出ていた。使った銃はグロック。狙撃シーンではレミントンのライフルのようだったが、ボルト・ハンドルだけがシュタイアのようだった。カートリッジはおとりが普通のタイプで、殺し屋が使ったのはベルテッド・タイプ(.300 Win Magあたりか)だったような。

 グッゲンハイム美術館のヒットマンたちが使うのは、シュタイアーのTMPサブマシンガンをスイスのブルッガー・ウント・トーメ社が買い取ってレールを装着するなどしたTP-9。ラストのイタリアの殺し屋が持っているのはシルバーのブローニング・ハイパワー。エキストラクター露出タイプだったからMKIIIか。

 脚本はエリック・ウォーレン・シンガー。本作にちょっと出ているらしい。脚本は本作1本のみ。こんな作品が描けるなら今後も期待できそうだ。ただ自作は決まっていないらしい。

 監督と音楽はトム・ティクヴァ。ドイツ生まれで、フランカ・ポテンテの「ラン・ローラ・ラン」(Lola Rennt・1998・独)の監督・脚本・音楽を手がけた人。最近では奇妙なテンポのエロ・グロ映画「パフューム ある人殺しの物語」(Perfume: The Story of t Muderer・2006・独ほか)を手がけた人。特にアクション・シーンの構成がうまいような気がする。今後も期待だ。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は前日に予約しておいて、15分前くらいに着いたら、10分前くらいに開場。スクリーンはビスタで開いていて案内を上映中。

 最終的に287席に4.5割くらいの入り。もっと入っても良いと思う。料金分はキッチリ楽しめる。ほぼ中高年で、男女比は半々くらい。

 トイレに行ってくると間もなく半暗になって、予告を上映。気になったのは……スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「ターミネーター4」。凄い迫力と期待感。ほとんど戦争映画のような感じだ。物語はさっぱりわからないが、新バージョンでの予告。あの曲がまたそそる。クリスチャン・ベールが良い感じ。

 そして、何と早くもシリーズ第2作目「トランスフォーマー リベンジ」の予告がスタート。シネスコの大画面で見ると凄い迫力と臨場感。圧倒される。ただ、マイケル・ベイなので、良いのは絵ばかりという可能性もあるが……。とにかく凄いことだけは確か。


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