Slumdog Millionaire


2009年4月25日(土)「スラムドッグ$ミリオネア」

SLUMDOG MILLIONAIRE・2009・英・2時間00分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル&フィルム、マスク、Super 35、Arri)/ドルビーデジタル

(英15指定、米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://slumdog.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2006年、インド、ムンバイ。コールセンターでお茶くみとして働くジャマール(デーヴ・パテル)は、ある目的からインドで大人気のTV番組「クイズ$ミリオネア」に出場することにする。強運も手伝い、彼はみるみる難問を解いて行く。そして全問正解まであと2問となった時、インチキを疑われたジャマールは警察官によって厳しい尋問にかけられる。そこには、答えに結びつく厳しい現実の彼の人生があった。

73点

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 良くできたドラマだが、インドの辛い現実を目の前に突きつけられ、暗澹たる気持ちになる。映画の中でアメリカ人観光客をだましてなぐられるジャマール少年が言う「これがインドの現実だ」と。するとだまされたアメリカ人夫婦はボコボコにされた少年にお金を渡し「アメリカを見せてやる」と言う。うむむ。さすがイギリス映画、皮肉が効いている。

 クイズ・ショーで正解を続けただけで、不正を疑われ、拷問にかけられるという現実。摩天楼のすぐ横にスラム街があり、ゴミの山もあり、人さらいがいて、ストリート・チルドレンもあふれ、暴力もあふれている。もっと宗教的な国、かけ算を20の段まで言える国、ソフトウエア技術者を続々と輩出している国というイメージがあったが、現実はだいぶ違うようだ。身分の違いというより貧富の差が激しい。「ムトゥ踊るマハラジャ」(Muthu・1995・印)は甘すぎる。多くの人が映画に群がるように、一攫千金のクイズ・ショーに人々が夢中になるのも当然のことなのだろう。

 「クイズ$ミリオネア」は、みのもんたの司会で知られるフジTVの番組だが、オリジナルはイギリスのITVの番組なんだとか。だからそのままイギリス映画になっても何ら不思議はないというわけ。当然かつてのイギリスの植民地であったインドでは、イギリスの番組が流れていてもおかしくない。スラム街でさえ英語が普通に話されていても、また当たり前なのだろう。そしてイギリスがインドの映画を作ることも不思議ではないと。

 ヒンディー語かなにかで話す場合、英語字幕が出るのだが、その見せ方が良い。薄く色の付いた座布団の上に白抜き文字なのだ。しかも常に画面下というわけではなく、ときどきで場所が変わる。そして大きさも日本語字幕に比べてかなり控えめで、ジャマにならない。逆に言うとスクリーンの小さな小劇場では読みにくいかもしれないが、日本のように小さな劇場は世界にはあまり例がないのかもしれない。

 劇中「ボンベイがムンバイになってインドは変わった」というようなセリフがある。近代的な高層ビルのすぐ横に掘っ立て小屋が連なるスラム街が共存する。ちなみにボンベイは英語で、ムンバイは現地のマラーティー語だそうで、1995年に変更されたらしい。

 ジャマールは3人によって演じられている。現在を演じているのがデーヴ・パテルで、1990年のイギリス生まれ。主にイギリスのTVで活躍していたらしいが、監督のダニー・ボイルの娘の推薦で本作の主役に抜擢されたらしい。本作が劇場映画デビュー作。

 少年時代を演じたのが、タナイ・チェーダ。2006年からインド映画で活躍しているらしい。

 ウンコまみれになる幼少期を演じたのが、アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール。なかなか愛嬌のあるかわいい子で、本作がデビュー作。今後どうなるのか。

 同時期のラティカを演じたのはルビアナ・アリ。実際にスラム街で暮らしているらしく、父親の人身売買疑惑が報道されたこともある。まさに映画のような状況。

 現在のラティカを演じた美女はフリーダ・ピント。1984年のインド生まれ。大学を卒業後モデルとなって、TVにも出ているらしい。映画とは正反対の上流階級ということか。

 高価そうなピアスを付けた、ワンマンで傲慢な番組MCを見事に演じたのは、アニル・カプール。インドの有名な俳優で、実生活では子供たちへの新活動をしているそうで、本作の出演料を全額、市民登録されない子供のために寄付したんだとか。これまた本作のキャラクターとは正反対。ただ上流階級であることは間違いない。

 監督はダニー・ボイルとラヴリーン・タンダンの2人。ダニー・ボイルは「シャロウ・グレイブ」(Shallow Grave・1995・英)や「トレインスポッティング」(Trainspotting・1996・英)で知られるイギリス人監督。「ザ・ビーチ」(The Beach・1999・米)とか「28日後...」(28 Days Later...・2002・英/米/蘭)はいまひとつピンと来なかったが……。

 ラヴリーン・タンダンはインド人女性監督で、監督としては本作のみ。メインはキャスティング・ディレクターだったようだ。「モンスーン・ウェディング」(Monsoon Wedding・2001・印/米/仏/伊)、「ニュー・ワールド」(The New World・2005・米)、「その名にちなんで」(The Namesake・2006・印/米)、そして本作も手がけている。

 原作はヴィカス・スワラップの「ぼくと1ルピーの神様」(Q&A、ランダムハウス講談社・刊)。ヴィカスはインドの現役官僚という変わり種の小説家。当然上流階級。脚本はサイモン・ビューフォイ。イギリス生まれで、「フル・モンティ」(The Full Monty・1997・英)や「シャンプー台のむこうに」(Blow Dry・2001・米/英/独)などを手がけている人。そう思って見るとなるほどと納得できる。

 兄が使う銃はパイソン4インチ。ただ異常にツヤ消しっぽいので、実銃ではなくトイ・ガンかもしれない。なぜかコルト45などと呼んでいる。「リボルバーを発明したのは」「サミュエル・コルト」という問題もあった。殺し屋が使っていたオートマチックはなんだかわからなかった。

 公開8日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、ほぼ60分前に着いたら、窓口は開いておらず、誰もいなかった。20分前オープンの予定とある。それを見て帰る(どこかへ行く)人も多かった。40分前くらいで6〜7人。ほぼ中高年男性で、女性は2人。30分前くらいに窓口が開き、この時点で15人くらい。雨の日だったので、早く開けたのかも。

 最終的に224席に7割くらいの入り。男女比は半々よりわずかに男性が多いくらいで、高齢者は1割くらい。ほとんどは中年層。

 10分前くらいから案内を上映。半暗になって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「デュプリシティ スパイは、スパイに嘘をつく」は公開が近いというのにまだ古いバージョンのまま。これは期待できないのかも。

 上下マスクの「セントアンナの奇跡」は、現代のニューヨークと1944年のフィレンツェのできごとが連動していく話らしい。兵士たちが1人の子供を守ろうとする。なんだか感動的で面白そう。さらに上下マスクの「サンシャイン・クリーニング」は殺人現場のクリーニングというアルバイトを若い女の子が2人でやるお話。設定だけでも面白そうだが、どちらも劇場がなあ……。

 上下マスクの「レスラー」は、落ち目になったプロレスラーの話らしい。後味の悪い映画のベスト10に入っていたようだが、マリサ・トメイがいいなあ。上下マスク「路上のソリスト」も、感動的な話らしい。音楽がらみで実話というのはよくあるパターンだが。やはり上下マスクの「ミーシャ ホロコーストと白い狼」も興味深い話。第二次世界大戦時のユダヤ人少女を描いたもので、生きるため狼の群れに入るというものらしい。

 場内が暗くなり、スクリーンがシネスコになって、ドルビーデジタルのヘリのデモがあって、本編の上映。




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