日本語字幕:丸ゴシック体下、寺尾次郎/シネスコ・サイズ(デジタル、HDCAM)/ドルビーデジタル
日系アメリカ人のジョン・レイン(椎名桔平)は、もとネービー・シールズの隊員で、今は一匹狼の殺し屋。裏の顔を持つ渋谷のクラブ・オーナー、ベニー渡辺(若松武史)の依頼を受け、政府の高級官僚を次々と自然死に見せかけて暗殺する。しかし重要機密をUSBメモリーに入れて持ち出そうとした国土交通省の川村(中原丈雄)を暗殺した際、USBメモリーを手に入れることができなかった。一方ジョン・レインの行方を追っていたアメリカCIAアジア支局はウィリアム・ホルツアー(ゲイリー・オールドマン)の指揮の下、ジョン・レインを追いつめていく。ジョン・レインはUSBメモリーの行方を追って、川村の実家に侵入するが、追ってきたCIA局員と格闘となり流れ弾で次女を死なせてしまう。手がかりを失ったジョン・レインは、次に長女のみどり(長谷川京子)がピアノを弾くジャズ・クラブのもとを訪れる。しかしここでもCIA局員に追いつかれ、みどりを連れて脱出し、2人で逃走を続けることになる。
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日本映画っぽくない日本映画。アクションたっぷりの逃走劇で、お約束の恋愛感情もうまく盛り込まれている。事件の題材も今っぽいし、よくできた仕掛けになっている。絵作りがうまく、色も濃くコントラストがしっかりしていて、画質もいい。ただ、ストーリー展開がちょっと安直な感じがした。組織に追われる男女の逃避行。雰囲気的には「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米)に似ている気がした。 アクション・シーンの緊迫感やスピード、リアルさもすばらしいが、どうにも暗殺者のジョン・レインが良い人というのは納得できない。冷酷な殺し屋であるはずなのに、途中からみどりを救う正義の味方のようになっていく。そして悪いのはCIAというお定まりのパターン。もちろん、こうならないと観客は主人公たちに感情移入できないのだからしようがないが、肝心なこの部分に説得力がない。 銃器などは日本撮影とすればトイガンがベースだろうが、なかなか本物っぽく見えた。ただ、作動音が金属っぽくなかったのは残念。ジョン・レインが使うのはベレッタM92。しかし、いまどきカップ&ソーサーは古い気がする。CIAはグロック、ヤクザはチーフのようなリボルバーも使っていた。狙撃ライフルはレミントンのM700か。 擬闘は監督のマックス・マニックス自身が担当している。使われている格闘技は「クラブ・マガ」というイスラエルの護身術らしい。「ボーン・アイデンティティ」で主人公が使っていた技と同じなんだとか。やっぱり……。特訓したのかどうかわからないが、カットが細かく割られすぎていて、せっかくの技がほとんどわからないのは残念。アクションができない人や、動きの遅い女性などの場合、演出上よく使われる手。もったいない。 マックス・マニックス監督は脚本も手がけている。オーストラリア出身で、11年間日本で暮らしたことがあるらしい。その経験を元に書いた脚本が「トウキョウソナタ」(2008・日ほか)として映画化された。 原作はバリー・アイスラーの「雨の牙」(ソニーマガジンズ刊)。日本で暮らした経験のある弁護士で、実際にCIAのスタッフとして訓練も受けたことがあるらしい。ジョン・レインを主人公にした「雨」シリーズは6本あるとか。 プロデューサーは日本人で、出演者もほとんど日本人だが、スタッフはほとんどハリウッド系のようだ。浅いピントのシャロー・フォーカスや、中央だけピントの合っているセンター・フォーカスなどの凝った撮り方もしている。やはり監督やカメラマンが日本人ではないと(オーストラリア人が多い)、こういう絵ができるということなのだろうか。 主演の椎名桔平はなかなか良い雰囲気だが、ちょっと顔がきれいすぎて、キリッとした眉や目張りが、逆にオカマのような印象を醸し出したような気がする。それが残念。ボク的には「GONIN」(1995・日)の金髪の男役がとてもインパクトがあって記憶に残っている。 やっぱり際だって良いのはゲイリー・オールドマン。うまい。説得力がある。「レオン」(Leon・1994・仏)のキレた刑事も怖かったし、「蜘蛛女」(Romeo is Bleeding・1993・英/米)もなかなか良かった。本作はこの人が出たことで格が上がった印象を与えた。 ジョン・レインに仕事を依頼したベニー渡辺を演じたのは若松武史。あまり見たことがないが、ハーフ役ということでか、日本語の発音が唯一よくわからならず聞き取りにくかった。 CIA局員のひとり、アセットを演じているのは平山祐介。モデル出身だそうだが、本作では北の工作員のような雰囲気。面白かったSF「神様のパズル」(2008・日)や「20世紀少年」(2008・日)にも出ていたらしい。 セリフもほとんどないが、存在感があったのは司令室でゲイリー・オールドマンの片腕のように働いている優子を演じた清水美沙。最近あまり見なかった気がするが、話題作「それでもボクはやってない」(2007・日)や「魍魎の匣」(2007・日)に出ているらしい。英語がうまく、ゲイリー・オールドマンとの共演も堂々としてまったくひけをとらなかった。素晴らしい。世界に出て行って欲しい。 公開9日目の2回目、銀座の劇場は前々日に予約しておいて、25分前くらいに着いたらまだ前回が終了していなかった。前回が終了、清掃後、15分前くらいに入場。 中年層がメインで、高年齢はやや少ない。女性の方が少し若い感じ。男女比はやや女性が多く、4.5対5.54くらい。最終的に470席に60〜70人の入りではちとキツイのでは。 チャイムが鳴ってアナウンスの後、半暗になってカーテンが上がりシネスコからビスタになってCM予告。気になった予告は……インドとアメリカ合作、上下マスクの「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」。インド人が中国人を助けに行く1人版「七人の侍」みたいな話で、歌あり、美女あり、アクションありの典型的インド映画っぽいのに、「少林寺三十六房」(少林寺三十六房・1977・)のリュー・チャーフィ(ゴードン・リュウ)が出ているのでひょっとしたら期待できるかも。IMDbではわすずか4.2点だが。 「劔岳 点の記」は新バージョンでの予告。実際に登山して撮影したらしい絵がスゴイ。物語は日本映画らしくウエットで暗い感じだが……。「TAJOUMARU」は小栗旬主演の時代劇。内容はよくわからなかったが、黒澤明の傑作「羅生門」(1950・日)の原作の「藪の中」の多襄丸で、ということはリメイクか。なぜタイトルがローマ字なんだろう。 上下マスク「G.I.ジョー ライズ・オブ・コブラ」はニンジャ特殊部隊で、エッフェル塔が倒れて、絵はスゴイ。内容は不明。上下マスク「MW」は新バージョン。アクション満載のようだが、やっぱり暗そう。 |