The Shinjuku Incident


2009年5月9日(土)「新宿インシデント」

新宿事件・2009・香・1時間59分(IMDbでは120分)

日本語字幕:手書き書体下、荒木慎也/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビーデジタル

(香IIB指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.s-incident.com/
(Macでは表示されなかった)

中国の片田舎でトラクターを大切に農業に励んでいたティトウ(鉄頭、ジャッキー・チェン)は、恋人のシュシュ(シュー・ジンレイ)が日本にいるオバサンをたよって日本に行ったままもどらなかったため、同じく日本にいた弟分のアーチェ(阿傑、ダニエル・ウー)に電話しオバサンが亡くなり、シュシュと連絡が取れなくなったことを知る。そこで密航して日本に行くと、アーチェたち不法入国中国人が隠れ住む大久保で暮らし始める。ティトウは悪事は働かなかったが、やがて台南人が経営するクラブの厨房で働いている時、店に来た日本人ヤクザ江口(加藤雅也)の妻がシュシュであることを知ると、吹っ切れたように悪事に手を染めていく。

72点

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 ほぼ日本で撮影された香港映画というかジャッキー映画。アジア向け作品を作るため自らがプロデュースする「アジアン・プロジェクト」第1作なんだとか。非常に骨太で、実際の社会情勢に基づいており、暴力も満載。今までのジャッキー映画よりなかり血みどろだ。血も飛ぶが手首も飛ぶ。ダークな感じで、後味もあまりよろしくない。日本は、歌舞伎町はこんなに治安が悪かったのか……。

 日本で撮影したというわりにはコントラスト強めで、色が濃い。ただ、画質はやや劣る感じで、粒状感が目立っていた。暗いシーンが多いからだろうか。増感しているのかも。日本語は、日本の役者が多く出ているため不自然さはなかった。うまいのは、歌舞伎町が舞台でヤクザが絡んでくるストーリーでありながら、基本は中国人同士の対立、争いを描いていること。だからその点で日本人が見てもあまり不快感は起きない。

 そしてジャッキーが本作ではあまり格闘シーンを演じていない。それを期待するとガッカリしてしまうかもしれない。完全に封じているわけではないが、かなり少ない。いつまでも格闘シーンだけでは、いつか体が動かなくなって終わってしまう。だからか、ジャッキー映画お約束のラストのNGシーン集はなし。

 もちろん主演はジャッキー・チェンだが、弟分のアーチェを演じたダニエル・ウーがなかなか良い。前半は天津甘栗屋を目指す気弱な青年を好演し、後半は完全に人が違ってしまって髪を染めピアスをしてパンク野郎になってしまうところがうまかった。外見を変えても、やっぱり芯の所では気弱なところが出てしまうところも見事だし、拷問で右手を失うあたりも凄かった。最近ではユン・ピョーが出た「プロジェクトBB」(Rob-B-Hood・2006・香)に出ていた。

 ほかにも脇役の香港映画人、ジャッキー・チェン・スタント・チーム総出演と言った感じで、「エグザイル/絆」(放逐・2006・香)の殺し屋の1人ラム・シューもいる。ちなみにホンコンを演じていたのが、本作でアクション監督を務めているチン・ガーロウ。役者としての出演作も多く、古くからジャッキー・チェンのスタント・ダブルを務めてきたらしい。手がけたものに「スパルタンX」(Wheels on Meals・1984・香)、「サイクロンZ」(Dragons are Forever・1988・香)、岡村隆史の「無問題2」(無問題2・2002・日/香)では監督もやっている。

 香港映画界は写真流出事件で特に女優さんたちが大変なことになっていたようだが、目立っていた女優は2人。幼なじみの恋人のシュシュを演じたのは北京出身のシュー・ジンレイ、日本人っぽい雰囲気がある人で、日本語もかなりがんばっていた。「傷だらけの男たち」(傷城・2006・香)でトニー・レオンの妻を演じていた。ヒロイック・デュオ 英雄捜査線」(双雄・2003・香)にもでている。最新作は現在公開中の「ウォーロード/男たちの誓い」(The Warlords・2008・中/香)で、ここでも「傷だらけ……」に続き金城武と共演している。

 もう1人はティトウを助け恋人となるリリーを演じたファン・ビンビン。アンティ・ラウの「墨攻」(Battle of Wits・2006・中ほか)で原作にないヒロインの役を演じた人。「花都大戦 ツインズ・エフェクトII」(The Twins Effect 2・2004・香)にも出ているらしい。

 日本人では、長門博之、竹中直人、峰岸徹、加藤雅也といった人たちが出ている。懐かしかったのは倉田保昭だろう。すっかり悪役が多いが、かつては日本のブルース・リーと言われたこともある。1970年代初めに香港映画で悪役日本人を演じ、TBSドラマ「Gメン'75」ではレギュラーの刑事役で活躍した。最近印象に残ったのはスー・チーの「クローサー」(So Close・2002・香)だろうか。他にもちょい役でたくさんの日本のタレントが出演している。

 そしてヤクザのイメージピッタリで怖かったのが、澤田拳也。「ホーク/B計画」(B計画・1998・香)で原案とプロデュース・主演をした人。主演第2弾「カラー・オブ・ペイン野狼」(野狼・2001・日/香)のあと、K-1の魔裟斗主演の映画「武勇伝」(2003・日)を企画・出演して、本作で久々のスクリーン。

 クラブを経営する華僑のボスが怖かったが、名前がわからなかった。かなりの迫力と凄み。また中国人仲間のクェイを演じていた人はジャッキー・チェン・スタント・チームの人だったと思うが、これまた名前が不明。

 監督・脚本はイー・トンシン。元は役者だった人のようで、その後、脚本と監督もやるようになったらしい。ダニエル・ウーが主演した「ワンナイト イン モンコック」(One Night in Mongkok・2004・香)や、珍しく拳銃射撃競技も描いている「ダブルタップ」(Double Tap・2000・香)の製作と原案などを手がけている。

 基本的に武器は日本刀や蛮刀のようなもの。刃物なので怖い。それと警官の3インチのチーフスペシャル。オートマチックも出ていたが、機種は確認できなかった。

 公開9日目の2回目、新宿の劇場は35分前くらいに着いたらロビーに10人くらいの人。全席自由で、15分前くらいに入れ替え。スクリーンはシネスコで開いていた。この時点で30人くらいの人。

 最終的には406席に3割くらいの入り。結構シリアスな内容なのでこんな感じなのか。老若比は半々くらいで、女性は5〜6人。暴力表現がキツイので、これもしようがないかも。

 BGMが止まり、暗くなって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「天使と悪魔」はさすがに公開が近いので新バージョンの予告。それでも内容はよくわからない。続編だから不要ということか。

 同じく上下マスクの「消されたヘッドライン」は、「スピード」(Speed・1994・米)にキアヌー・リーブスの同僚役で出ていたジェフ・ダニエルズが太っていて驚く。役作りだろうか。


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