Duplicity


2009年5月10日(日)「デュプリシティ スパイは、スパイに嘘をつく」

DUPLICiTY・2009・米/独・2時間05分

日本語字幕:手書き書体下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://duplicity-spy-spy.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

トイレタリー産業のエクイクロム社の社長ディック・ガーシク(ポール・ジアマッティ)とB&R社の社長ハワード・タリー(トム・ウィルキンソン)は犬猿の仲で、お互いに専門家を雇い熾烈な情報戦を展開していた。エクイクロム社は新しく元イギリス諜報機関MI6のエイジェントだったレイ(クライヴ・オーウェン)を雇い、監視に当たらせることにした。そしてレイは、エクイクロム社がB&R社に潜入させた二重スパイとコンタクトを取るが、なんとその二重スパイは、5年前、ドバイで自分をだまして情報を奪ったCIAの女性エイジェント、クレア(ジュリア・ロバーツ)だった。もたらされた情報は、B&R社が若き天才科学者を使って、画期的な新製品を開発したというものだった。レイとクレアたちはB&R社が何を開発したのか探り、それを盗み出すため一計を案じる。

74点

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 サブ・タイトルからお気軽なスパイ・コメディかと思ったら、意外に骨太なスパイ活劇、そしてサスペンスだった。もちろんコメディの要素はあるが、それよりハラハラドキドキの方が大きかった。そして、プロのスパイの男と女のだまし合い。信頼できるのかどうか、観客も登場人物もわからない。その微妙な関係。

 ただ、いかんせん、時間軸がバラバラでわかりにくくされているのに加えて、日本人的に人物の名前が覚えにくいため、一層わかりにくくなっている。しかも字幕は情報量が少ないからMaxわかりにくい。日本語吹替版ならも少しわかりやすいのかも。

 なかなかの大どんでん返し。冒頭がコミカルなので油断していると、意外に本格的なスパイ・ドラマでまずだまされる。なにしろポール・ジアマッティとクライヴ・オーウェンの顔合わせと言えば、ありえないめちゃくちゃガン・アクションの「シューテム・アップ」(Shoot'em Up・2007・米)を思い出してしまって、まったく期待できない感じ。ところが、そんなことはなかった。やっぱり脚本のでき、監督の役割は大きいということ。ヒゲを剃ったクライヴ・オーウェンはイケててカッコイイし、ジュリア・ロバーツも魅力的できれい。

 その監督・脚本はトニー・ギルロイ。元は脚本家で、巨大病院の陰謀を描いたミステリー「ボディ・バンク」(Extream Measures・1996・米)、キアヌー・リーブスのホラー「ディアボロス/悪魔の扉」(The Devil's Advocate・1997・米/独)、民間軍事会社の男の人質救出作戦を描いたアクション「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)、「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米ほか)シリーズなど、いずれも面白い作品を手がけている人。前作「フィクサー」(Michael Clayton・2007・米)で監督デビューした。ちょっといまひとつの感じはあったが、本作で実力発揮か。

 主要人物はクライヴ・オーウェンとジュリア・ロバーツ、そして両社の社長ポール・ジアマッティとトム・ウィルキンソンの4人。

 クライヴ・オーウェンは最近映画でまくりの感じで、「ザ・バンク 落ちた巨像」(The International・2009・米ほか)に出ていたばかり。「ボーン・アイデンティティー」では殺し屋を演じていたが、強烈だったのは「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・日/英ほか)。

 ジュリア・ロバーツはつい最近「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(Charlie Wilson's War・2007・米)に出ていた。「クローサー」(Closer・2004・米)でクライヴ・オーウェンと共演している。なんといっても「プリティ・ウーマン」(Pretty Woman・1990・米)のヒロイン役が良かったが、今話題の人キーファー・サザーランドと共演したホラー「フラットラナーズ」(Flatliners・1990・米)、異常な夫から逃れる妻を描いたサスペンス「愛がこわれるとき」(Sleeping with the Enemy・1991・米)あたりが面白かった。アップでピアスの跡がちょっと気になった。

 ポール・ジアマッティはコミカルな役が多い人だが、「ベスト・フレンズ・ウェディング」(My Best Friend's Wedding・1997・米)でジュリア・ロバーツと共演している。傑作ポリス・アクション「交渉人」(The Negotiator・1998・独/米)で人質を演じて強い印象を残した。最近では幻想ミステリー・ロマンスの「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・チェコ/米)が良かった。しかもおいしい役。

 トム・ウィルキンソンも最近でまくりで、トム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)で逃げを打つ将校を、暴力満載の「ロックンローラ」(Rock N Rolla・2008・英)では恐ろしいギャングのボスを、トニー・ギルロイの「フィクサー」ではクライアントの目の前で裸になる弁護士を演じ、古くは男性ストリップを描いた「フル・モンティ」(The Full Monty・1997・英)にも出ていた。本作では机の上に見事な盆栽が乗っている。

 特に夜景が美しく撮られていたが、デジタル撮影かと思いきや35mmフィルムで、レンズを使った本物のシネスコ・サイズ。それゆえかもしれない。画質も良い。撮影監督はロバート・エルスウィット。トニー・ギルロイ監督とは前作「フィクサー」で仕事をしている。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(There will be Blood・2007・米)ではアカデミー撮影賞を受賞している。

 タイトルは、なぜかDUPLICiTYとiだけが小文字。なぜなんだろうと考えていると、スタッフ/キャーストもどこか1文字だけが小文字になっているデザイン。タイトル・デザインしている人の名はわからなかったが、グラフィック・デザイナーが担当しているとしたら、ケヴィン・L・レイパーという人か。なかなかシャレている。

 公開10日目の2回目、前日に座席を確保しておいて、20分くらい前に着いたら開場済み。最終的に183席に6割ほどの入り。男女比は4対6くらいで女性の方が多く、老若比は半々くらい。女性の方が若い感じ。

 スクリーンはシネスコで開いていて、半暗になってからビスタへ。いつもながらワケのわからないキューピーのCMのあと始まった予告で気になったのは……

 またまたフジTVで、3D-CGアニメ「ホッタラケの島」は、少女の冒険談らしい。そして同じくアニメで「NARUTO疾風伝」も夏休み公開。

 上下マスク、フジTVの「アマルフィ 女神の報酬」は新バージョン。色が濃く、良い感じ。同じく上下マスクの「ウィッチマウンテン」は超能力少年と少女が地図から消された山を、もとザ・ロックのドウェイン・ジョンソンと一緒に探す話らしい。少女は「リーピング」(The Reaping・2007・米)のイナゴ少女、アナソフィア・ロブ。面白そう。

 スクリーンがシネスコになってから、「ブレードランナー風」ドルビー・デジタルのデモがあり、ニコラス・ケイジの「ノウイング」の予告の後、本編の上映。


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