Bangkok Dangerous


2009年5月16日(土)「バンコック・デンジャラス」

BANGKOK DANGEROUS・2008・米/独・1時間40分(IMDbでは99分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、川又勝利/ビスタ・サイズ(1.85、Arri)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.bangkok-dangerous.jp/
(音に注意。ポップアップを許可で表示。全国の劇場案内もあり)

世界を股にかける一匹狼の殺し屋ジョー(ニコラス・ケイジ)は、協力者も殺してしまう冷徹さを持っているが、そろそろ引き際と考えていた。最後の仕事を4件受ける契約でバンコクにやってくる。街で見つけたスリのコン(シャクリット・ヤムナーム)を協力者に雇い、連絡係のダンサー、オーム(パンワード・ヘンマニー)からブツを受け取る役をやらせる。最初の仕事で腕を怪我し、近くの薬局へ行くが言葉がわからず苦労していると、聾唖の女性フォン(チャーリー・ヤン)が身振り手振りで治療法を教えてくれる。やがてジョーはフォンを食事に誘い、2人は親密になっていくが……。

71点

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 うーん、オリジナル版の脚本と監督を使っても、ハリウッドで撮ると深みのない良くある話にまとまってしまうのか。じわーっと感じさせる深い切なさ、優しさが、うわべだけのチープなものになってしまったかのよう。

 物語も役名は同じでも、プロデューサーでもある主演のニコラス・ケイジのイメージに合わせて変えてしまったようで、それが結果的に悪い方に行ってしまった。オリジナル版ではコンが主役で、しかも聾唖で、人の優しさを知らずに育ったという設定。だからクールに人が殺せる。そんな男が優しい美少女のフォンと出会って変わっていくのは納得できる。しかしハリウッド版ではマカロニ・ウエスタンの師匠と弟子みたいになっていて、展開が今ひとつ納得できない。どうしてもニコラス・ケイジをタイという環境の中に置くには、こうするとか無かったのだろう。年齢的にもニコラス・ケイジじゃ弟子というわけにはいかないし。

 結果、ストーリーは違うが、何だかガンマンが弟子にテクニックを教えるジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリフの「怒りの荒野」(I Giorni Dell'ira・1967・伊/独)みたいなことに。ガンマン10箇条じゃなくて自分の信条ということになっているものの「引き際を知れ」「質問をするな」「跡を残すな」「堅気の人間と交わるな」とか、似たような感じ。トリガーはプル(引く)じゃなくスクウィーズ(絞る)だとか。しかしアメリカの今の教え方は、ジャーク(ガク引き)じゃなくてプレス(圧する)と言っているけど。

 ニコラス・ケイジの凄いところは、積極的に新人監督やアジアの監督の作品でも、自らプロデュースしたり出演したりするところ。そのせいか酷い作品にも出ている。といっても、初期の頃から変わった作品にも出ていたわけで、彼は初心を忘れていないということなのかも。その面で、サンドラ・ブロックと似ている。最近で面白かったのはリー・タマホリ監督の「NEXTネクスト」(Next・2007・米)かなあ。「ゴーストライダー」(Ghost Rider・2007・米/豪)や「ウィッカーマン」(The Wicker Man・2006・米/独/加)は酷かったもんなあ。使っていた銃は、冒頭の狙撃ライフルが、イギリスのL96A1、ピストルはグロック。イングラムSMGも使う。後半のスナイパー・ライフルはフルート付きのバレルを装備したレミントンのようだった。スコープはブッシュネルの3-9×40、目が近すぎたけど。使っている腕時計は、どうやらスイスのVentura社のV-Tec Sigmaらしい。1本2,000ドルくらい。バイクはBMWのK1200Rのようで、こちらは200万円くらいとか。

 オリジナル版では主人公だったコンを演じたのはシャクリット・ヤムナーム。タイの人気俳優だそうだが、本作のメイクではチンピラにしか見えない。タイが舞台のスティーヴン・セガールのワン・マン映画(アメリカではビデオ公開)「沈黙の聖戦」(Belly of the Beast・2003・加ほか)に出ていたらしい。

 聾唖の美女フォン役はチャーリー・ヤン。香港の女優さんで、一旦引退していたがジャッキー・チェンの「香港国際警察」(New Police Story・2004・香/中)から復帰したという人。その後ツイ・ハーク監督の「セブンソード」(Seven Swords・2005・香/中)にも剣士の1人で出ていた。

 連絡係のダンサーの美女オームは、パンワード・ヘンマニー。本作の前にタイ映画に出ているようだが、日本劇場未公開。残念。

 水上マーケットで使われるのはベレッタM92F。日本でもR-15指定だけあって、スクリューで腕が飛んだり、爆発で上半身が飛んだりする。SWATが使うのはM16にチーク・ピースを付けたスナイパー・タイプ、ヤクザはMP5Kやガバメントなど。武器係はケヴィン・ゴドキンという人。この前はTVのミリタリー・アドバイザーや特殊効果をやっていたらしい。本作は銃器の効果もなかなか良かったのではないだろうか。

 監督は双子のオキサイド・パンとダニー・パン。TVコマーシャルを手がけていたというだけあって、絵作りがうまい。オリジナル版の「レイン」(Bangkok Dangerous・2000・タイ)監督・脚本はもちろん、ジェシカ・アルバでリメイクされた傑作ホラー「the EYE【アイ】」(The Eye・2002・香ほか)、時間軸バラバラ殺し屋物語「テッセラクト」(The Tesseract・2003・英ほか)の監督・脚本など、すごい実力の持ち主。すでにハリウッドでクリスティン・スチュワートの「ゴースト・ハウス」(The Messengers・2007・米/加)を撮っているが、やはり脚本は別。ハリウッド・リメイクの「アイズ」(The Eye・2008・米)も脚本は本人たちではなかった。この辺に問題があるのでは。

 本作の問題ありの脚本は、ジェイソン・リッチマン。アンソニー・ホプキンスとクリス・ロックが共演したアクション・サスペンス「9デイズ」(Bad Company・2002・米/チェコ)の脚本を書いているが、その後パッとした活躍もないまま本作へ。なぜ?

 絵が良いなと思ったら、オリジナル版の「レイン」の撮影を手がけたデーチャー・スリマントラ。「the EYE【アイ】」、「テッセラクト」などの撮影も手がけている。

 公開8日目の初回、40分前くらいに着いたら新宿の劇場は中高年男性が1人。まもなくドアが開いて、地下の階段下へ移動。20分前くらいに開場となった。この時点で中高年男性が7〜8人。最終的に全席自由の588席に60人くらいに入り。これはチト少ない感じ。ほとんど男性で、女性は4〜5人。

 チャイムの後アナウンスがあって、カーテンが左右に開いてビスタでCM・予告。だいたいいままで見たもので、新しいものはなかった。アニメの「エヴァンゲリヲン新劇場版:碇」、「七人の侍」のようなお話の上下マスク「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」、「羅生門」のリメイクらしい「TAJOUMARU」、ニンジャ特殊部隊の上下マスク「G.I.ジョー ライズ・オブ・コブラ」、手塚治虫原作の上下マスク「MW」、期待させる物があるSFの上下マスク「スタートレック」、絵がスゴイ上下マスクの「ザ・スピリット」……などなど。


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