The Warlords


2009年5月16日( 土)「ウォーロード 男たちの誓い」

THE WARLORDS(投名状)・2007・中/香・1時間53分(IMDbでは126分、国際版110分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、税田春介/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル

(香IIB指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.warlords.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1851年、清国に始まった太平天国の乱で清国軍に加わり将軍として活躍していたパン・チンユン(ジェット・リー)は、味方であるはずのクイ将軍(シ・ザオキ)の裏切りにより部隊が全滅、自身も負傷するが、リィエン(シュー・ジンレイ)という女に助けられ、一夜を共にする。翌日、パンは盗賊のウーヤン(金城武)と出会い、彼の村に連れて行かれボスのアルフ(アンディ・ラウ)に紹介される。その村にリィエンもいて、アルフの妻だったことがわかる。そんな時、村が清国軍兵士に襲われる。パンは、こんなことを避けるには清国軍に加わるしかないと説得し、アルフ、パン、ウーヤンの3人は運命を共にするため義兄弟の契り「投名状」を結ぶ。そしてパンの戦略で近くの太平天国軍を破ると、それを手土産に清国の3大臣から清国軍としての承認を得、軍服と銃が支給される。パンは3大臣に、まず蘇州を落し、次に南京も陥落させてみせると宣言する。

73点

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 実話に基づいた血みどろの戦いの物語。欧米だけでなく、中国もその歴史は戦いの歴史だったという感じ。「太平天国の乱」は歴史の教科書にもでてくる史実だが、たぶん日本人の多くに、その名前ほどどういうものだったかは知られていないのではないだろうか。映画は「太平天国の乱」そのものは描いておらず、なぜ起きたか、誰が起こしたかなどにはまったく触れていない。その乱でどういう戦いがあり、どんな悲劇があったかだけを描いている。しかも、パン暗殺の真相はわかっていないらしい。この頃日本では、浦賀にペリーの黒船艦隊が来て(1853年)大騒ぎしていた。

 蘇州城では8,000人の太平天国軍兵士が殺され、南京城では1年以上の包囲戦で市民も含め20万人もが殺されたという悲惨な戦いが描かれている。銃不足のため敵の銃に対して肉弾攻撃で弓の距離まで押しまくり攻撃したり、攻める側も守る側も食糧不足で人を食うしかないようなギリギリまで追いつめられていたなど、とにかく悲惨さマックスの状態。仲間を殺したり捕虜を殺したり、裏切ったり裏切られたり。血が飛び、手が飛び、足が飛ぶ。死体の山に血の海……なんという恐ろしい映画。

 タイトルの投名状というのは、義兄弟の契りを結ぶものだそうだが、そのために名を連ねる者は人を1人ずつ殺さなければならないという。まったく日本人の今の感覚からは良く理解できない。しかもウーヤンのナレーションで、パンはそれを信じていなかったというのだからなおさら。

 主演のジェット・リーはハリウッドでも成功しており、その中で良かったのはリュック・ベッソン製作の「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏ほか)だろうか。最近は悪役が多い感じ。中国で撮ったものは圧倒的に「HERO」(Hero・2002・香/中)がよかった。そしてやっぱり中国というか香港で撮ったものの方が彼の魅力が生きている気がする。

 共演のアンディ・ラウはアジアを代表するスターで、映画も出まくり。製作にも乗り出していて、積極的に新人の作品にも出ているらしい。その辺も好感が持てる。そんなわけで酷い作品にも出ているが、拾い物の作品にも出ていて目が離せない。最近では金城武と共演した「LOVERS」(House of Flying Dagers・2004・中/香)が良かったし、その前だと「マッスルモンク」(Running on Karma・2003・香/中)が良かった。「上海グランド」(新上海灘・1996・香)も良かったなあ。

 金城武も映画に出まくり。つい最近「レッドクリフ Part II」(Red Clif: Part II・2009・米ほか)に出ていたし、その前には日本映画の「K-20怪人二十面相・伝」(2008・日)にも出ていた。「冒険王」(冒険王・1996・香)ではリー・リンチェイと名乗っていた頃のジェット・リーと共演している。「恋する惑星」(重慶森林・1994・香)は良かったなあ。

 浮気妻を演じたのはシュー・ジンレイ。「新宿インシデント」(新宿事件・2009・香)では日本人ヤクザの妻となるシュシュを演じていた。「傷だらけの男たち」(傷城・2006・香)で、金城武と共演している。催眠術をキーに使った「ヒロイック・デュオ英雄捜査線」(双雄・2003・香)も良かった。

 監督は製作の方が多いピーター・チャン。金城武の「ウィンター・ソング」(如果・愛・2005・香)を監督している。ほかにオキサイド・パンとダニー・パン監督のホラー「the EYE【アイ】」(The Eye・2002・香ほか)シリーズの製作や、ジーンと来るファンタジー「月夜の願い」(新難兄難弟・1993・香)の監督も務めている。なかなかの実力派。本作も当然の結果だろう。

 脚本はクレジットによると8人もの人が関わっているようだが、たぶん一番経験が豊富なのはチュン・ティンナムという人。ジャッキー・チェンの最新作「新宿インシデント」(新宿事件・2009・香)、ツイ・ハークのアクション「セブンソード」(七剣・2005・韓ほか)、ジャッキー・チェンのシリアス・アクション「新・ポリス・ストーリー」(New Police Story・1993・香)などを手がけている。

 アクション監督はチン・シウトン。武術指導の他、自ら監督もする。「HERO」、「LOVERS」、「冒険王」、「少林サッカー」(Shaolin Soccer・2001・香/中)、そして日本の「どろろ」(2007・日)も手がけている。監督では、ビデオ公開となったがハリウッドでスティーヴン・セガールの「沈黙の聖戦」(Belly of the Beast・2003・加ほか)を撮っている。たぶんもうスティーヴン・セガール作品は誰が撮っても同じだと思うが……。

 銃は先込めのパーカッション銃で、時代を反映してかなりの大口径。しかも槍のように長い。ライフリングのない、いわゆるマスケット銃だろう。単発なので長篠の戦いの三段撃ち(信憑性は怪しいが)のような撃ち方をやっている。ただ、よく見てみたら、照準器がない。しかもハンマーは反っくりかえったものがあったりでブラブラ状態。たぶん実銃ベースではないプロップ・ガンだろう。

 役者の息が白かったので、本当に寒い時期に撮影されたようだ。撮影はスタッフ共々大変だったのではないだろうか。暖房として、床下で火をたいているようなものがあったが、昔のオンドルか。

 公開9日目の2回目、新宿の劇場は35分前くらいに着いたらロビーに3〜4人の人。30分前くらいからボツボツ増え始め、25分前には15人くらいになり、20分前に案内があって整列させられた。この時点で30人くらいだったが、狭いロビーはほとんどいっぱいの感じ。

 15分前に入場となって、全席自由の場内に。とは言え、この劇場はどこも見にくい。混まないことを願うのみだ。最終的には209席に7割くらいに入り。ほとんど中高年で、あとから女性が増えて男女比は4対6くらいで女性の方が多くなった。

 それにしても、エンディングの日本語の曲はなんだろう。どうにもピッタリこない感じだった。どちらかというとアニメの主題歌かエンディングの曲といった雰囲気。詩も大げさで、シリアスな本作には合わない気がした。

 スクリーンはシネスコで開いていたが、チャイムが鳴って暗くなるとビスタになってCM・予告。上下マスクの「スター・トレック」は、最初に監督のJ.J.エイブラムスと主演のクリス・パインが登場して日本語で挨拶する新バージョン。


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