The Code


2009年5月17日(日)「THE CODE/暗号」

2008・THE CODE プロジェクト・2時間04分

丸ゴシック体下/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル



公式サイト
http://www.tantei5.com/thecode/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

川崎市にある巨大探偵事務所「探偵事務所5」の暗号専門探偵507(尾上菊之助)は、天才的な暗号解読能力を持つ。そして解けない暗号を解いてみたいと上司に申告し、上海支局から回ってきた暗号を解くため上海に向かう。上海支局には万年平探偵の523(斉藤洋介)と宍戸会長(宍戸錠)がおり、話を持ってきたのはギャングの女、美蘭(メイラン、稲森いずみ)で危ないから断ったという。しかし暗号が気になる507は、女が働いているというキャバレーに会いに行く。女は暗号を解いて失踪した父を捜し出して欲しいという。その暗号とは美蘭の背中に彫られた刺青だった。それを見た507はすぐに命を狙われる。

70点

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 うーん、これは……。冒頭の長いアヴァンで描かれるおふざけで、観客はどん引き状態に。そのまま本編に強引に持って行くものの、クライマックスにさしかかるといきなりブレーキが掛かり、とんでもなくゆっくりとした展開。笑えないギャグと、おふざけのために感動できない感動話。バランスがとても悪い印象。セリフもいかにも書きましたという感じで、文語調でリアリティーがない。

 おふざけではなく、せめてギャグくらい、できればユーモアのレベルで止めておいて欲しかったが、悪ノリで暴走しちゃったという感じ。探偵事務所は日曜日の朝にTVでやっている子供向け30分番組の秘密基地ような感じ。100連発の銃撃戦にもガッカリだが、錠さんの時代錯誤なピースメーカーとガンベルトの早撃ちにも興ざめだった。しかも高齢だから、ちょっと手もとがおぼつかない感じで、そんなの見たくなかった。さらに、先輩役の松方弘樹が1942年生まれで、後輩役の宍戸錠が1933年生まれ。老けメイクしても松方の方がハッキリと若々しく見える。中国が舞台で中国ロケしているのに主要な中国人役が日本人だし。つまり、それらも含め、みんなジョークということなんだろうか。どうしてこれが日本探偵協会推薦?

 宍戸錠はプロデューサーも務めていて、「エースのジョー」こと会長役。大藪春彦原作の日活の「探偵事務所23 くたばれ悪党ども」(1963・日)と「探偵事務所23 銭と女に弱い男」(1963・日)に出ている。2と3を足して5で「探偵事務所5」なのか。最初に「探偵事務所5シリーズ」と出る。WEBでリリースしていたシリーズ(2005)の発展版ということらしい。でもそうならピーメよりは日活コルトの方がイメージのような気がするが。

 主演は尾上菊之助。映画出演はこの前に「怪談」(2007・日)の祟られる二枚目、そしてリメイク版「犬神家の一族」(2006・日)の佐清役などがある。「怪談」などはピッタリという気がしたが、本作はどうなんだろう。暗号解読の天才、インテリという雰囲気はあると思うが。

 ファム・ファタールは稲森いずみ。きれいな人だが、あまり映画のイメージがない。本作の場合は監督が使いたかったという印象が強い。実に必要ない部分までじっくり撮っている。シャワー・シーンか、できればベッド・シーンを撮りたかったのではないかと邪推したくなるほど。

 監督・脚本は林海象。「帝都物語」(1988・日)の脚本や、ヘンテコ時代劇の「ZIPANGジパング」(1990・日)の監督・脚本などが記憶にあるが、あとは本作まで印象に残っていない。ただTVの「私立探偵 濱マイク」は林の原作らしい。

 松方が使っていたのは南部十四年式拳銃。中国ロケでは実銃のカットもあったような。三八式歩兵銃はオートマチックのように連射していた。稲森は九四式拳銃、中国人ヤクザはトカレフ、ガバの彫刻入り、そして実銃ベースの中国版PPsh43の五三式サブマシンガンなど。なかなかリアルだったが、人体弾着で火花が出るというのは、金属の体なのかギャグなのか。そして、ラストの鍵になるペンダントにしたお守りの弾薬を使って撃つというのも夢物語かその逆という感じで信じられない。とても撃てる状態の弾には見えない。そして撃たれた男の眉間に銃弾が埋まっているのもなあ……。

 数字がくるくると回ってアルファベットになるのは面白かった。どこかで見た気もするが……良い感じ。誰がデザインしたのかはわからなかった。

 公開9日目の初回、銀座の劇場は全席指定になってしまったので、あらかじめ座席を確保しておいて15分前くらいに着いたら、すでに開場済み。15〜16人が座っていた。ほとんどは中高年男性。60歳以上は1,000円が大きいのか。女性は3人ほど。最終的には女性がやや増えたものの、360席にわずか1割ほどの35人くらい。ほとんど予告や広告もやっていないようだし、この不入りは当然かも。この出来だし。

 チャイムが鳴って、アナウンスがあって、カーテンが左右に開いて半暗になって始まった予告編は……。角川春樹映画「笑う警官」は絵なしの予告で、まったくわからなかった。「劇場版仮面ライダーディケイド」と「侍戦隊シンケンジャー銀幕版」は夏休みの子供を狙ったもののようだ。「ベイビィベイビィベイビィ」は 「ナースのお仕事 ザ・ムービー」(2002・日)のノリのコメディらしい。アニメ「ワン・ピース ストロングワールド」は年末のアニメ・ファンねらいというところか。

 人気作家、東野圭吾原作の「さまよう刃」は少年犯罪の話らしい。まだ公式サイトはない模様。「ガマの油」はよくわからないが、役所広司監督作品だと。

 しかし、何といっても上映が酷かった。フィルムがちゃんとセットされていなかったのが、カタカタと安定せず地震のように揺れ動いていた。上映時間の半分くらいはカタカタしていたと思う。無料上映でも観客は怒ると思う。日本の観客はおとなしい。みな我慢していたようだ。銀座の劇場でこれとは……。観客が新しい設備のシネコンなどに流れるのはしようがないだろう。


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