Star Trek


2009年5月30日(土)「スター・トレック」

STAR TREK・2009・米・2時間06分(IMDbでは127分)

日本語字幕:手書き風書体下、松崎弘幸/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS(IMAX版はSonics-DDP)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.startrekmovie.com/intl/jp/
(音に注意。ポップアップを可にすれば全国の劇場案内もあり)

宇宙歴2233年にUSSケルヴィンの艦長を引き継ぎ、最後の12分間で800名の乗組員を救うため犠牲となったジョージ・カークを父に持つジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)は、成長して士官学校に入り艦長候補となるが、問題ばかり起こすことから停学となってしまう。その間に同級生の異星言語学者のウフーラ(ゾーイ・サルダナ)、船医のボーンズことドクター・マッコイ(カール・アーバン)は、ベテラン艦長のパイク(ブルース・グリーンウッド)と共に、バルカン星からの救難信号を受け、USSエンタープライズの処女航海に出発することに。副艦長は地球人の母を持つバルカン人のスポック(ザッカリー・クイント)、航行士は前任者が病気のため急遽乗船することになった17歳のロシア人チェコフ(アントン・イェルチン)、操縦士も新人のスールー(ジョン・チョウ)だった。そしてカークの友人であるボーンズは、カークを置いて行くことができずに、病人として密かに乗船させる。

87点

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 おもしろい。全く期待を裏切らない。ボク的には全映画作品シリーズ中最も良くできていた気がする。これこそ映画。久々に血が騒ぐような高揚感を覚え、最後には拍手したくなった。いいなあ。マニアの人にはどうかわからないが、ボクあたりにはこれくらいがちょうど良い。

 若者たちの成長の物語。「七人の侍」(1954・日)のように、優れた能力を持つ者たちが集まり、力を合わせて難題を解決する。まさに痛快冒険活劇。映像も音響も素晴らしく、シネスコ画面で描かれる宇宙空間は、大スクリーンで見るとそこにいるような気にされてくれる。こればかりは大きなTVでも無理。ぜひ劇場で見ることをおすすめしたい。

 もちろん気になるところがないわけではない。後で考えるとブラックホールとか赤色物質とかタイム・トリップして自分自身に会うとか……しかし、それらが見ている時はほとんど気にならない。

 またほかの映画で見たような絵もところどころあって、特に冒頭のジムとウフーラが出会うバーは「スター・ウォーズ」(Star Wars・1977・米)のモス・アイズリーのカンティーナのような雰囲気があった。ジムがスポックから船外追放になる惑星は、「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(The Empire Strikes Back・1980・米)氷の惑星ホスみたいな感じだったし。ジムがバイクで疾走するシーンは「トップガン」(Top Gun・1986・米)のような雰囲気。しかし、それらが真似というより、よく取り入れて見せてくれたなあという風に仕上がっているところがいい。

 ジェームズ・T・カークを演じたクリス・パイン。スゴイ美男子というわけではないのに、スクリーンで、この作品で見ると実に魅力的。見ていないが「プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング」(The Princess Diaries 2: Royal Engagement・2004・米)の貴族の若者や、犯罪者群像活劇「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2007・英/仏/米)の殺し屋三兄弟の1人を演じていた人。

 スポックを演じたのはザッカリー・クイント。あまりに先代のレナード・ニモイの若い頃に似ていて驚いた。全米人気TVドラマ「Heroes/ヒーローズ」(Heroes・2006・米)で、超能力者の能力を奪うことができる極悪人を実に憎たらしく演じている人。こんな冷静な役とは正反対のイメージだ。

 ボーンズことドクター・マッコイを演じたのはカール・アーバン。ゲームを映画化した「ドゥーム」(Doom・2005・米/チェコ)で海兵隊緊急対応戦略部隊の兵士を演じていた人。ほかにも「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの2作目と3作目でセオデン王の甥エオメルを、「リディック」(The Chronicles of Riddick・2004・米)でモヒカンのような独特のヘアー・スタイルでネクロモンガーのヴァーコ司令官を演じている。

 スポックを仇と狙うロミュラン星人の艦長ネロを演じたのはエリック・バナ。スピルバーグの「ミュンヘン」(Munich・2005・米)の暗殺者や、「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)のデルタの兵士役など、印象に残る作品が多い。本作でも憎しみに満ちいつも怒っているようなキャラクターを見事に演じていた。

 もちろん先代のスポックはレナード・ニモイ本人これは驚いた。すでに78歳。クリント・イーストウッドとほぼ同い年。老けたなあと。TVの「スター・トレック」(1966〜1969・米)のほか「スパイ大作戦」(1969〜1971・米)の変装名人パリス役も有名。

 ベテラン艦長パイクはブルース・グリーンウッド。なんといっても「13デイズ」(Thirteen Days・2000・米)のケネディ大統領役が光っていた。基本的には良い役が多く、最近では時間逆転ミステリー・アクション「デジャヴ」(Deja Vu・2006・米/英)でFBI捜査官を演じていた。

 きついロシアなまりの17歳のチェコフを演じたのは、ロシア出身のアントン・イェルチン。ロバート・デ・ニーロとエド・バーンズが共演したアクション「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米/独)では火事になるビルにいた少年を演じ、「スパイダー」(Along Came a Spider・2001・米/独/加)ではロシア大使の息子を演じていた人。もうこんなに大人になって……。

 ウフーラを演じたのはゾーイ・サルダナ。人種問題をテーマにしたコメディ「ゲス・フー 招かれざる恋人」(Guess Who・2005・米)でロヒインを演じた人。最近では時間逆転アクション「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)で冒頭のTVリポーターを演じていた。

 転送の専門家スコッティを演じたのはイギリス生まれのサイモン・ペッグ。ファンの声で劇場公開が実現したというアクション映画「ホット・ファズ 俺たちスーパー・ポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏)で都会から左遷された警官を演じていた人。本作でもコミカルな役所になっている。トボケた感じが絶妙のうまさ。

 驚いたことに、スポックの母を演じていたのは、大人っぽくなったウィノナ・ライダー。いろいろと問題が耐えなかった人だが、さすがに38歳になるとそろそろ母親役か。ただし息子を演じたザッカリー・クイントは31歳だが……。ボクが最後に見たのは、アル・パチーノのCG女優ファンタジーの「シモーヌ」(S1m0ne・2002・米)だったか……あっ、退屈なデジタル・アニメの「スキャナ・ダークリー」(A Scanner Darkly・2006・米)にも出ていたか。

 脚本はロベルト・オーチーとアレックス・カーツマンの2人。学生時代からコンビを組んでいるようで、冒険活劇が得意らしい。大学卒業後TV界に進み、J.J.エイブラムスの「エイリアス」を手がけたことから、トム・クルーズの「M:i:III」(Mission: Imposible III・2006・独/英)を書くことになったらしい。スクリーン・デビュー作はマイケル・ベイの作品の中では面白かったSF「アイランド」(The Island・2005・米)。ただ「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)も手がけていて、どうなんだろうと。近日公開の続編も書いている。

 監督はJ.J.エイブラムス。脚本家でデビューした人で、メル・ギブソンの時空を越えた恋を描いた「フォーエヴァー・ヤング 時を越えた告白」(Forever Young・1992・米)は良かったが、マイケル・ベイの「アルマゲドン」(Armageddon・1998・)なんかはどうなんだろう。TVの「エイリアス」や「LOST」も手がけている。監督デビューは「M:i:III」で、本作は劇場作品の2本目。ひょっとしたら結構な映画マニアなのではないだろうか。ちなみにバッド・ロボットという製作会社はJ.J.エイブラムスの会社らしい。

 フェイザー銃は青と赤に光るようになっていて、チャージしている時は青で、撃てるようになると赤という感じだった。「KILL」と「STUN」で違ったのか? ほかにも可動パーツがあったようで、演技のタイミングを取るのに必要だったのかもしれないが、なかなか銃っぽくて良かった。映画ごとにデザインが変わるようだが……。

 どうもコピー防止のドットがあったようで、何カ所か気になった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は50分前に着いたら20人ちょっとくらいの行列。若い人は1/3くらいで、女性は5人ほど。雨の日で、35分前くらいに開場になった時点で、30人くらい。ペア・シート以外全席自由で、最終的には1,064席に4割くらいの入り。話題作の割りには少ない感じ。古い劇場なので、床に傾斜は付いているのに、座高の高いヤツが前に座るとスクリーンがちょっと見づらくなる。それが残念。

 チャイムの後、アナウンスがあって、前方だけが暗くなって予告へ。暗いシーンだとよく見えない。とにかく最後に1回だけしかタイトルの出ないものが多く、とても覚えにくい。だいたいは見慣れたものばかりで、新しかったのは、アニメの「8月のシンフォニー」。実在のシンガー・ソング・ライターの川嶋あいを主人公にしたものらしいが、本人が活躍中なのになぜアニメなんだろう。アニメでなければならない理由は何?


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