Chandni Chowk to China


2009年5月30日(土)「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」

CHANDNI CHOWK TO CHINA・2009・印/米・2時間35分(IMDbでは米版154分)

日本語字幕:手書き風書体下、松岡 環/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル(IMDbではdtsも)

(印U指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/chandnichowktochina/
(全世界の劇場案内もあり)

中国のある山村に北条(ゴードン・リュウ)が率いるギャング、大老(にんべんの老)がやってきて、ムラに眠る財宝を発掘し外国に売り始めた。絶大な暴力の前になすすべがなかった村人は、ムラの中央にある銅像リウ・シェンの伝説に基づき、リウ・シェンの生まれ変わりを探してインドへ向かう。インドの片田舎チャンドニー・チョークのコックをしているシドゥ(アクシャイ・クマール)は、ひょんなことから村人たちと出会い、中国人とのハーフの占い師チャップスティック(ハシ道士、ランヴィール・ショウリー)のいいかげんな通訳にだまされ、その村へ行くことになる。しかし空港で、パスポート取得の時トラブルになった美女サキ(ディーピカー・パードゥーコーン)そっくりの大老の女ミャオミャオ(1人2役)を見つけ、もみ合いになるうち彼女が体に隠した密輸品がこぼれおち未然に犯罪を防ぐお手柄をあげる。おかげでギャングから命を狙われることになる。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーん、出来の悪いナンセンス・ギャグ・マンガのよう。しかもギャグの感覚が日本人とは合わない感じで、ほとんど笑えない。コテコテというか、わざとらしすぎる。それでいてカンフー・アクションは結構真面目で、しかも感動させようとしている。画質は非常に良く、色も濃く、派手な色彩設計も美しく、クォリティが高い。CGだって合成はごく自然でレベルが高い。ノリの良い歌とぴたりと合っている集団ダンス。なのにコレかいというバランスの悪さ。これぞマサラ・ムービーか。

 確かに10年前公開された「ムトゥ踊るマハラジャ」(Muthu・1995・印)と比べると、アメリカ資本が入っているせいか、欧米のスクリーンにかけても見劣りしない音質と画質、そしてダンス、スタントではある。ボクの感じでは「ムトゥ」がヒットしたのは物珍しさということが大きかったと思う。そして芸能人がTVでやたら面白いと宣伝し、話題になったこと。文化とか宗教とかあくまり深いところとは関係ないと思う。もしそうであったなら、1本だけのヒットで終わらなかったはずだ。

 で、その「ムトゥ」と変わらないものといえば、やはり映画俳優たちは裕福な人々で、ラジニカーントほどではないが、本作の出演者たちも、モデル出身の女優を別として、ほとんどみんな太っていること。本当に低層から這い上がってきたという主演の細身のアクシャイ・クマールさえも、水に濡れて服が体に貼り付くと、かなりのメタボ。どうしても身分制度のことを思い出してしまう。ちなみに「ムトゥ」はタミール語(南部)映画で、本作はヒンディー語(公用語)映画になるらしい。

 アクシャイ・クマールは1990年代中頃にはインドでスーパー・スターになっていたらしい。どうもアクション・スターだったらしい。その片鱗は本作のカンフーでも伺える。やはり体のキレが違う。最後のオマケ的なミュージック・クリップの中ではヒゲをとってサングラスなんかかけたりしているが、さすがにカッコイイ。二枚目。スーパー・スターになったのもうなずける。ほとんどの作品が日本では公開されていないようだが。

 信じられないほどの美女は、ディーピカー・パードゥコーン。スポーツ選手からモデルになったという彼女は、さすがに「ムトゥ」の美女たちと違ってちっとも太った要素がない。だから国際的にも通用するのだろう。メイベリン・ニューヨークの世界キャンペーンに起用されたりしているらしい。

 チャップスティックことハシ道士を演じたのはランヴィール・ショウリー。もとビデオ・ジョッキーだったそうで、映画のデビューは2002年だとか。やはり日本公開作はない模様。

 敵役の北条はゴードン・リュウ。日本でもヒットし三節棍が流行った「少林寺三十六房」(少林三十六房・1977・香)に主演していた人。その後、三上博史が主演した漫画の映画化「孔雀王」(孔雀王・1988・香/日)にも出ていた。最近ではタランティーノの「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)のカンフー・マスターを演じていた。中国語の「打倒!北条」は「ダト・ホウジョウ」と聞こえた。やっぱり日本人という設定なのだろうか。投げた帽子で首が飛ぶのは「007/ゴールドフィンガー」(Goldfinger・1964・英)のハロルド坂田が演じたオドジョブか。

 サキとミャウミャウの父親、チャン刑事を演じたのはロジャー・ユアン。俳優のほか、スタントマンやファィト・コーディネーターをやっているらしい。なかなか面白かったドタバタSFコメディ「スペース・トラッカー」(Space Trackers・1996・英/米/アイルランド)や、ジョン・カーペンターの続編「エスケープ・フロム・L.A.」(Escape from L.A.・1996・米)、人気コミックの映画化「スポーン」(Spawn・1997・米)、ウェズリー・スナイプスのヒット作「ブレード」(Blade・1998・米)などでスタントを担当。最近の出演作は「バットマン・ビギンズ」(Batman Begins・2005・米)や「シリアナ」(Syriana・2005・米)。

 脚本はシュリーダル・ラーガヴァン。2004年からヒンディー語映画を書いてきて、だいたいどの作品も高い評価を得ているらしい。ただアメリカと組みアクシャイ・クマールが出た作品のみ低評価。本作もアメリカとの合作。IMDbではわずか4.3点。

 監督はニキル・アドヴァーニー。劇場監督デビュー作の「たとえ明日が来なくても」(Kal Ho Naa Ho・2003・印)で高く評価され、本作は3作目らしい。全2作はヒンディー語のラブ・ストーリー。それがどうしていきなりコメディに?

 撮影はヒンマーン・ダミージャー。オーストラリアの名門映画学校を卒業しているそうで、国際的な賞も多数受賞しているという。なるほどうまいわけだ。

 アクション指導はディーディー・クー。ユエン・ウーピンのスタント・チームのメンバーになんだとか。「リーサル・ウエポン4」(Lethal Weapon 4・1998・米)や「ロミオ・マスト・ダイ」(Romeo Must Die・2000・米)、「ミラクル7号」(Cheung Gong7 hou・2008・香)を手がけている。

 香港映画のように基本的は吹替のようで、だいぶ口が合っていないところが多く気になった。兵士たちが使っている銃は、どうも形だけのプロップだった模様。中国の研究所で防弾の傘を撃つのはFAL風プロップ(電着銃?)。つかての宗主国イギリスが1985年まで使用していたこともあって、インドでも制式軍用銃としていた関係だろう。

 コメディながら「自分を信じないと神は助けてくれない」とか「1万回練習された技は、1回使われても危険だ」など、オッと心に残るセリフがあった。ただ長い。途中「インターミッション」と出るが、インドでは休憩をはさんだのだろう。日本ではそのまま上映続行。トイレ事前に行っておいた方が良い。それと、コピー防止のドットらしいものが出るのもちょっと気になった。

 ラスト、今度はアフリカから伝説の人物を捜す2人組がやってくる。これは続編があることを示唆しているのか。

 公開初日の2回目、35分前くらいに着いたらロビーには1〜2人の人。間もなく掃除のオジサンオバサンがやってきて、上映中だというのにいきなりドアを開け中をのぞいた。劇場の人に注意されていが……。うむむ。30分前くらいに入れ替えとなって、全席自由の場内へ。

 最終的には224席に50〜60人くらいの入り。これはちょっと少ない。老若比は半々くらいで、男女比も半々くらい。ただ女性の方が若かった。

 カーテンが上がって暗くなって始まった予告は……系列館ということでか、「スター・トレック」と同じ。


1つ前へ一覧へ次へ