Blood: The Last Vampire


2009年5月31日(日)「ラスト・ブラッド」

BLOOD: THE LAST VAMPIRE・2009・香/日/仏/アルゼンチン・1時間31分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビーデジタル、dts(IMDb ではドルビーデジタルのみ)

(香IIB指定、米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://lastblood.asmik-ace.co.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1970年、東京。吸血鬼のオニゲンを抹殺することを宿命づけられた人間とのハーフ、少女サヤ(チョン・ジヒョン)は、“組織”(カウンシル)のマイケル(リーアム・カニンガム)からオニゲンの情報と現場のクリーンナップと、飢えを満たすドリンクの供給を受けながら戦い続けている。そしてあらたにアメリカ軍基地内に現れたという情報に基づき、基地内の高校に転校生として潜入する。やがてマッキー将軍(ラリー・ラム)の娘アリス(アリソン・ミラー)がオニゲンに襲われ、サヤがかろうじて救い出す。アリスは襲わせたのは剣道の教師パウエル(コリン・サーモン)とにらみ、後を付けるが見つかり拉致されそうになる。そこへ再びサヤが現れ救出され、長生きしたいなら黙っていろと言って消える。ところが、事件を調べていたマッキー将軍が“組織”のルーク(JJフェイルド)に殺され、メモを頼りにサヤを探し助けを求めるが……。

74点

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 すごい。女性が主人公なのに、この激しいチャンバラ・カンフー・アクションの連続。全編ほとんどアクションと言っても良いほど。なぜ日本が舞台で主人公は日本人の設定なのに韓国人女優が主役なのかと思ったが、美しい上にここまでのアクションと、アクションの中での感情表現ということになると、今の日本人女優ではできる人がいない気がする。まさにチョン・ジヒョンはぴったり。

 プロダクションI.G.の原作「BLOOD THE LAST VAMPIRE」(2000・日)の設定では1966年の横田基地内のアメリカン・スクールに小夜がやってくるわけだが、本作では1970年の関東アメリカ軍基地になっている。ちなみに戦闘部隊は現在は横田基地におらず、1971年に沖縄に移転したらしい。ベトナム戦争中というのが、冒頭のアヴァンでも描かれている。

 スーパー・ナチュラルな話に普通の女子高生アリスを入れたところがミソで、信じられない状況に巻き込まれ、事態を徐々に理解していく過程を取り込み、うまく劇中で観客の代理を務めてくれている。

 ただ、空軍基地のショットにF16があったような気がしたのと、M16A1はいいとしてもベレッタM9はないよなあ。時代が合わない。調達が楽だったのだろう。スナイパー・ライフルもM16A1系。撮影のほとんどはアルゼンチンで行われたらしい。

 サヤを演じたチョン・ジヒョンは、まさ獅子奮迅の活躍。なんでも撮影前にチャンバラやワイヤー・アクションの特訓を3〜4ヵ月やったらしい。さすが「猟奇的な彼女」(My Syssy Girl・2001・韓)の主演女優のことはある。キアヌー・リーヴスでハリウッド・リメイクされた「イルマーレ」(Il Mare・2001・韓)、「僕の彼女を紹介します」(Windstruck・2004・韓)、「デイジー」(Daisy・2006・韓/香)と、良い作品に出続けている。まあ、とにかくカワイイ。カワイイのにアクションがしっかりとできる。まあ、アップになると耳にピアスの跡は時代的に合わないが、しようがないか。でも映画俳優は止めといた方がいいのでは。

 巻き込まれるアメリカ人女子高生アリスを演じたのはアリソン・ミラー。主にTVで活躍してきたようだが、現在公開中の「セブンティーン・アゲイン」(17 Again・2009・米)にも出演している。本作で良い感じだったので、今後映画での活躍も増えそう。

 オニゲンの起源、大ボスを演じるのは小雪。確かにオニのイメージがあるかも。「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)が抜群に良かった。「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)も陰のある感じが絶妙で素晴らしかった。ラスト、着物が九尾の狐のようになるのは狙いだろうか。

 サヤを育て、剣術を教えたカトウを演じたのは、日本人というより中国人のようだった倉田保昭。1970年代から香港で活躍を初め、ブルース・リーとも友人で、和製ドラゴンとも呼ばれた人。TVの「Gメン'75」にも出演、人気を得た。1990年代からVシネへの出演が増え、スクリーンで見かけなくなったが、スー・チー主演の傑作アクション「クローサー」(So Close・2002・香)で見た時は嬉しかった。つい最近、シャッキー・チェンの「新宿インシデント」(新宿事件・2009・香)にも出ていた。

 剣道を教えるパウエル先生はコリン・サーモン。「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(Tomorrow Never Dies・1997・英/米)シリーズでMI6職員を演じており、ゲームの映画化「バイオハザード」(Resident Evil・2002・英/独/仏)で印象的な特殊部隊の隊長を演じていた。

 ちょっとジャン・レノ似の組織の男マイケルを演じたのはリーアム・カニンガム。壮絶な人狼映画「ドッグ・ソルジャー」(Dog Soldiers・2002・英/ルクセンブルク/米)の部隊の指揮官、「麦の穂をゆらす風」(The Wind That Shakes the Barley・2006・独/伊/西/仏/アイルランド/英)で機関車運転手ダン役を演じていた。使っていたのはガバメントもあったような気がしたがベレッタのM9というかM92。

 同じ組織の男で、若くて暴走するルークを演じたのは、JJフェイルド。ほとんどTVで活躍してきたようだ。使っていた銃はM92のようでもあったが小さかったからM84かも。

 マッキー将軍を演じたラリー・ラムもTVがメインの人。MI-5の活躍を描いたイギリスのTVドラマ「MI-5」(MI-5・2002〜・英)にも出ていたらしい。使っていた銃は、パットン将軍をイメージしたのか、今どきコルト・シングル・アクション・アーミー。

 プロダクションI.G.の原作を脚本にしたのはクリス・チョウ。中国生まれで、ジェット・リーが実在の人物を演じた「SPRITスピリット」(Fearless・2006・中/香/米)の脚本を書いた人。

 監督はクリス・ナオン。フランス生まれで、25歳で製作会社を立ち上げCM製作をしていたというからスゴイ。初劇場監督作品はジェット・リーのアクション「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(Kiss of the Doragon・2001・仏/米)。そしてテロ組織との戦いを描いたミステリー・アクション「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」(L'empire des loups・2005・仏)を撮って本作が3作目。見せ所たっぷりの面白い作品を作る人のようだ。

 アクション監督はコーリー・ユン。香港で多くの作品の監督をやっているが、ほとんどのジェット・リー作品を手がけ、「リーサル・ウエポン4」(Lethal Weapon 4・1998・米)や「ロミオ・マスト・ダイ」(Romeo Must Die・2000・米)などのほか、ジェイソン・ステーサムのヒット作「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)、「レッドクリフ Part I」(Red Cliff: Part I・2008・中)も手がけているベテラン。うまいはずだ。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定なので、あらかじめ座席を確保しておいて、20分前くらいに到着。10分前ちょっと前くらいに開場。ほぼ中年のオジサンで、女性は2割くらいいたか。最終的には127席に3.5割くらいの入り。これはちょっと少ない感じ。もっと入っても良い作品だと思うが。

 ほぼ暗くなって始まった予告は……ニコセス・ケイジの「ノウイング」は新しいバージョンに。なんだか数字の羅列のようなものの中に大惨事の予言がなされていて、それをニコラス・ケイジが発見するらしい。その大惨事の絵がスゴイ。期待感大。


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