Terminator Salvation


2009年6月13日(土)「ターミネーター4」

TERMINATOR SALVATION・2009・米/独/英・1時間54分(IMDbでは115分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(DLP上映もあり、日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/terminatorsalvation/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2003年、ロングヴュー刑務所で死刑囚のマーカス・ライト(サム・ワーシントン)は、サイバーダイン社のセレーナ・コーガン博士(ヘレナ・ボナム=カーター)の要請を受け入れ、自分の体を実験に献体することに同意する。2018年、救世主と呼ばれるジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)はスカイネットの拠点を襲撃。コンピューターから新型ターミネーターT-800の情報を得るが、部隊のほとんどの部下を失ってしまう。司令部へ戻ったジョン・コナーは、あらたに入手された機械を停止させるシグナルを発生するチップをテストするように命令される。これが本当に使えれば、4日以内に総攻撃を仕掛けるというのだ。スカイネットが4日後までにリストに載っている人物を全員抹殺するだめだ。その頃、ジョン・コナーの襲撃で施設外に出たマーカス・ライトは、ターミネーターと戦っている自称、抵抗軍LA支部のカイル・リース少年(アントン・イェルチン)と幼い少女のスター(ジェイダ・グレイス)と出会い、一緒にジョン・コナーの元に向かうことになる。

76点

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 予想通り、コレは戦争映画だった。スゴイ。このスピード感、ハラハラ感は素晴らしい。しかも、ちゃんとドラマを織り込み、機械と人間の違いを際だたせることで感動までも生み出す。ラストにはうるっと……。

 ただ、ターミネーター映画という感じはしなかった。ターミネーターの世界を描いているのは間違いないが、「1」〜「3」、そしてTVドラマ版も暗殺者、抹殺者としてのターミネーターであり、本作はターミネーターは単なる兵士であり、これは戦争映画だ。あえて言えばマーカス・ライトがターミネーターで、その男の戦いの記録という感じにはなるのかもしれない。

 びっくりしたのは、ちゃんとアーノルド・シュワルツェネッガー型のターミネーターが登場すること。デビューしたての頃の若々しい感じで、グレネード弾を食らい外観を作っている肉は吹き飛んでしまうが、たぶんあれは昔にかたどった特殊メイク用の型などを利用してCG化しているのではないだろうか。カリフォルニアの州知事となった今、出演はなかなかしてくれないだろうから。

 すごいのは、イロコイとおぼしきヘリにクリスチャン・ベイルが乗り込み、自分で操縦して浮き上がり、攻撃を受けて墜落し、でんぐり返って機体から脱出するまでをワン・カットで見せること。まさに自在なカメラワーク。どうもパイロットの顔をデジタルで置き換えたのではないようだし、風景も合成でないとすると、ヘリの実物大模型をワイヤーなどで浮かせているのだろうか。凄すぎ。

 メカとしても、飛行機型のHK(ハンター・キラー)、戦車型のT-1に加えて、ヘビ型のハイドロボット、人間を捕獲する大型ロボットのハーヴェスター、そのハーヴェスターから放出されるバイク型のモトターミネーター(ミニガンやM1919マシンガンらしきものも装備)、ハーヴェスターとHKまでも搭載する大型輸送機型のトランスポートまで、実に多彩。それぞれ良いデザインをしている。ハーヴェスターが動く時に黒い排気ガスのようなものがドバッと出るのはちょっと表現が古い気もするが、機械らしさ、まがまがしさは出ている。演出としてはアリか。

 ターミネーターは3種類登場する。シリーズ第1作でアーノルド・シュワルツェネッガーが演じたのはT-800。本作ではスカイネット中枢の工場で生産中のようだが、本作でLAのカイルとスターを追っているのはT-600という初期型。工場の警備などにも当たっている。武装はミニガン(トレーサーを使っている)やグレネード・ランチャー、そしてFN F2000のようだ。冒頭のジョン・コナーが襲撃するスカイネットの拠点で製作されているのはT-700らしい。それぞれ微妙に進化させてあって、設定が良く作り込まれていることを伺わせる。

 プロダクション・ノートによれば、ある種「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)シリーズのような廃墟と化した荒涼たる未来風景を撮影したのは、ニュー・メキシコ州のアルバカーキーというところだという。近くにアメリカ空軍の基地があることから、空軍の撮影協力も可能だったらしい。劇中登場する対地攻撃機A-10サンダーボルトII、UH-1イロコイ(機載型M60付き)やOH-6カイユース、HH-60ペイブ・ホーク(ブラックホークの救難機版)などのヘリコプター、大型輸送機C-130ハーキュリーズ、垂直離着陸機のCV-22オスプレイ……といった軍用機が登場している。

 また、最後に「スタン・ウィンストンに捧ぐ」と出るが、これは本作製作中に第1作から関わっているクリーチャー・クリエイターのスタン・ウィンストンが亡くなったため。

 主演のジョン・コナーを演じたクリスチャン・ベイルは、マーカス・ライト役をオファーされていたところ、ジョン・コナーをやりたいということで、脚本は大直しになったらしい。スピルバーグの「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)の子役で注目された人で、大きくなって出演した「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000・米/加)の殺人鬼役は衝撃的だった。さらに衝撃だったのは「マシニスト」(El Maquinista・2004・西)で、不眠症に悩まされる男を演じるため、実際に体重を30kgも落とし骸骨のようになった。最近ではクリストファー・ノーランの傑作アクション「ダーク・ナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)でも素晴らしい演技を見せていたが、共演のヒース・レジャーが凄すぎてかすんでしまった。

 ジョンが使っていたカービンはM4A1かと思ったら、なんとH&KのHK416なんだとか。白い文字が入っていたので、ただものではない思ったが……。サイトは純正でなく、サード・パーティのバックアップ・サイトで、ドット・サイトはCモア。シュアファイアーのフラッシュライト。マガジンにはODのテープを巻いているが、何のためだろう。マグプルではなかったようだし。ハンドガンはUSPかと思ったら、.45口径のMk.23 Mod 0だとか。M4のマガジン・ポーチを太ももや腕のあたりにも付けていた。工場ではショットガンの付いたM4も使っていた。ガバメントのスライドの上にリブの乗ったようなものも使っていたようだが……。今回「I'll be Back」はこの人が言う。おそらく特訓を受けたのだろう、HK416の弾がなくなると、鮮やかにM92にトランジッションして見せている。

 人間と機械のハイブリッド、マーカス・ライトを演じたオーストラリア出身のサム・ワーシントンは、日本ではDVD公開となった「マクベス ザ・ギャングスター」(Macbeth・2006・豪/独)に主演した人。シェイスクスピアをひのまま現代のギャングに当てはめたちょっとイタイ作品だったので、DVD公開もしようがないと思わせるものだった。注目されたのは感動的なタップ・ダンス・ドラマ「タップ・ドッグス」(Bootsmen・2000・豪)あたりからで、主人公の二枚目の弟のダメな兄を演じていた。その時はサム・ワーティングトンと言っていた。ブルース・ウィリスが最後に持って行ってしまう「ジャスティス」(Hart's War・2001・米)にも出ていたらしい。本作で初めてスポットライトが当たったような感じも。いい役なので印象も良い。途中ベレッタM92を使う。

 ジョン・コナーの妻を演じたのはブライス・ダラス・コナー。残念な作品が続いているM・ナイト・シャマランの「ヴィレッジ」(The Village・2004・米)で注目され、さらにガッカリの「レディ・イン・ザ・ウォーター」(Lady in the Water・2006・米)でも重要な役を演じた。確かに不思議な感じの眼をしている。「天使と悪魔」(Angels & Demonns・・)のロン・ハワード監督の娘さん。本作はシャマラン映画と違ったイメージでとても良かったのではないだろうか。これで普通の役も演じられることが判明した。

 若きカイル・リースを演じたのはアントン・イェルチン。ロシア生まれで、スピルバーグ製作のTVドラマ「TAKEN テイクン」(Taken・2002・米)に出ていて、以後TVを中心に活躍。つい最近「スター・トレック」(Star Trek・2009・米)で航行士チェコフを演じていた。今後映画でも活躍しそうだ。使っていたのはレミントンM870らしいストックなしのショットガン。銃口にはトロイ風の大型マズル・ブレーキ付き。工場侵入ではグレネード・ランチャーも使う。

 その相棒の口がきけない幼い女の子スターを演じたのは、ジェイダグレイス。どうやら本作がスクリーン・デビュー作らしい。とてもかわいい子で、今後の活躍が楽しみ。

 マーカス・ライトを助ける抵抗軍の女性パイロット、ブレア・ウイリアムズを演じたのは、ムーン・ブラッドグッド。ダンサーからモデルを経て役者になったらしい。「南極物語」(Eight Below・2006・米)にも出ていて、つい最近「ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」(Street Fighter: The Legend of Chun-Li・2009・加ほか)にも出ている。襲ってきたヤツらからデザートイーグルを奪って使う。

 抵抗軍の将軍を演じていたのはマイケル・アイアンサイド。悪役の多い人で、古くは頭が破裂する「スキャナーズ」(Scanners・1981・加)が有名。「トップガン」(Top Gun・1986・米)の教官も良かった。「マシニスト」でクリスチャン・ベイルと共演している。最近はTVの仕事の方が多いよう。

 わからなかったが、imfdbによるとジョン・コナーの片腕バーンズを演じたコモンが、ミニFALのSA58 OSWやマグプルのMasadaを持っているらしい。この人、元はヒップホップ・アーティストで、最近よく映画に出ていて、スクリーン・デビューが「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・英/仏/米)で、以後、リドリー・スコットの「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)、キアヌー・リーヴスの「フェイクシティ ある男のルール」(Street Kings・2008・米)、アンジェリーナ・ジョリーの「ウォンテッド」(Wanted・2008・米/独)とほぼアクション作品に立て続けに出演。これは注目かも。

 脚本はジョン・D・ブランカトーとマイケル・フェリスのコンビ。前作の「ターミネーター3」(Terminator 3:Rise of the Machines・2003・米/独/英)を手がけている。ほかになかなか面白かったサンドラ・ブロックのスリラー「インターネット」(The Net ・1995・米)やデヴッド・フィンチャーのショッキングなサプライズ・パーティ「ゲーム」(The Game・1997・米)、ハル・ベリー以外見所なくちょっと残念だった「キャットウーマン」(Catwoman・2004・米/豪)も手がけている。

 監督はマックG。TV版のリメイク「チャーリーズ・エンジェル」(Charlie's Angels・2000・米/独)シリーズの監督。その後TVのプロデューサーとしての活躍が多く、「The OC」(2003〜2006)や「Supernatural スーパーナチュラル」(2005〜2009)などの人気作品を手がけている。日本の地上波では「スーパーナチュラル」のシーズン1しか放送されていないが、なぜ? 面白いのに……。本作は「チャーリー……」と違ってシリアスなのに、「チャーリ……」同様アクション満載で、ドラマを盛り込んで見せた。さすが。

 色は「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のようにわざとウォッシュ・アウトした感じでモノトーン風になっている。プログラムのプロダクション・ノートによると、Ozプロセスというのだそうで、コダックの古いフィルムを太陽に長時間さらして、通常より多量のシルバーを加えているらしい。それをさらにデジタル処理しているのだとか。

 UNIXのプロンプトのようなタイトル・クレジットの文字は、カリン・フォン(Karin Fong)という人。かつてイマジナリー・フォースにいたようで、ミラ・ソルビーノのホラー「ミミック」(Mimic・1997・米)のタイトルを手がけている。最近は「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」(The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor・2008・独/米)のタイトルを手がけている。

 コピー防止のドットらしいものが何カ所かで気になった。

 先行ロードショーがあったが、通常のロードショー初日の初回、新宿の劇場は55分前くらいに着いたら、10人ほどの人。中高年のみで、オバサンが1人。40分前くらいに案内があって、列が逆に曲がっていたのを修正、2列に。この時点で50人くらい。若い人は10人くらいになったろうか。女性も5〜6人に。

 35分前くらいに開場になって、ペア・シート以外全席自由の場内へ。最終的に1,064席に7割くらいの入りは上々か。若い人がちょっと増えて、下は中学生くらいからとなった。ペア・シートにも1組が座っていた。

 チャイムの後アナウンスがあって、カーテンが上に上がりCM・予告。前方のみ暗くしての上映で、やっぱり画面は見にくい。気になった予告編は……アラスカが舞台のホラー「30デイズ・ナイト」f、ゾンビっぽいが、おもしろそう。ジョシュ・ハートネットが主演。「ドゥームズデイ」は「ニューヨーク1997」(Escape from New York・1981・英/米)と「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)を合わせたような感じ。ただ主人公が女性で、「アンダーワールド:ビギンズ」(Underworld: Rise of the Lycans・2009・米/ニュージーランド)で主演を張ったローナ・ミトラ。

 スクリーンが左右に広がり、やっと暗くなって、「カムイ外伝」の新しい予告。やっと少し内容のわかるものに。絵がキレイ。「サブウェイ・パニック」(The Taking of Pelham One Two Three・1974・米)のリメイク、邦題も決まったらしく、「サブウェイ123 激突」で新予告に。


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