MW


2009年7月4日(土)「MW ムウ」

2009・アミューズソフトエンタテインメント/ギャガ・コミュニケーションズ/小学館/D.N.ドリームパートナーズ/日本テレビ放送網/東亜輸出公司/スタジオスワン/手塚プロダクション/インターチャンネル/衛生劇場/白組/東急レクリエーション・2時間10分(IMDbでは129分)

日本語字幕:角ゴシック体、下/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビーデジタル

(日PG-12指定)(日本語字幕版もあり)

公式サイト
http://mw.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

タイで日本のタケビシ建設の役員、岡崎(中村育二)の娘が誘拐される事件が発生。1億円の身代金が要求され、岡崎が届けることになる。金は日本のLA新世紀銀行の結城(玉木宏)が用意する。日本からも捜査協力で警視庁捜査一係のベテラン沢木刑事(石橋凌)と若手の橘刑事(林泰文)と派遣されている。しかしまんまんと犯人に出し抜かれ、1億を奪われた上、岡崎親娘ともども射殺されてしまう。続いて日本で、LA新世紀銀行の結城の上司、山下(半海一晃)の誘拐事件が発生する。タイの事件も日本の誘拐も実行したのは結城で、兄弟のような仲の神父、賀来(山田孝之)に協力させていたのだった。最初の被害者岡崎と次の被害者山崎には共通しているものがあった。同じ沖之真船島の出身者だったのだ。それに気付いた東京中央新聞の女性記者、牧野京子(石田ゆり子)は沖之真船島で起きた事件を追っていた新聞記者の川島の記事にたどり着き、独自の捜査を始める。沢木刑事と橘刑事も結城がホンボシとにらみ捜査を進める。

70点

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 うーん、これが手塚治虫の「MW」なのか。実は読んでいないから知らないのだけれど、ちょっと構成(脚本・演出)がずさんな気がする。原作がこんなにラフな構成だったんだろうか。突っ込みどころ満載なのに見所がない。あえて言えば主演の玉木宏か。シリアスものなのに……。決してつまらないわけではないのに、全く心が動かされない。TV版の第0章の方が面白いってどういうこと。絵もキレイだし。

 まず、冒頭のタイ・ロケの画質が酷い。コントラストが強すぎて、白トビ黒ツブレが出ている。色が汚く、肌色なんて黄色っぽくなってしまっている。前半、劇場の映写機のピントが甘かったこともあって、ガッカリの画質。まるで昔の映画を見ているかのよう。

 日本で撮影した場面になると色は落ち着き、解像度も上がり、現代の映画という感じにはもどったものの、青っぽかったり、赤っぽかったり、まったく意図が感じられない。そうなっちゃったという感じ。カメラも、わざとなのだろうが、手持ちがカットが多く、どうにもTVっぽいし。シネイコの大スクリーンでは動きが強調されて非常に不快。

 見ている内から気になることは多かった。最大のものは、主人公の結城が子供の時に、賀来を救うために神経毒ガスを吸い、中毒で「オレには時間がない」と最初に言わせておきながら、ラストで事件が解決し風化したあと(少なくとも数年は経っているはず)で、ピンピンで現れちゃいけないでしょ。「オレには時間がない」を何度も使いながら、根底を覆してしまうわけだから。時間がないから過激な手段に訴えたはずなのに。

 ほかにも、誘拐事件だって身代金を苦労して大仕掛けを使って犯人に渡しておきながら、その直後に直接犯人に会いに行くんだったら、大仕掛けを使わないで合う時に渡せばそれで良いだろうに。そして日本の刑事が自分の銃としてベレッタM92を持っていて、人混みの中で発砲するし。犯人やバイクに当たれば弾は止まるとでも言うのだろうか。人通りの多いところで倒れて誰も助けないし、ビルの上から車も近くにいない歩道に落とされるのにトラックの上に落ちるし、いくら夜とは言え、公園のような人通りのある場所で刑事が縛られていて、そこへ犯人も現れるし、島の現場に着いてから水の中にMWがあると明かすのに、ちゃんとウェット・スーツとかゴーグルを持って行っているし、関係ないのに基地内で子供に風船持たせてるし、島にヘリで現れる米軍も変だし、基地には緊張感ないし、……もういちいち上げたらきりがない。雑すぎ。

 主演は玉木宏。1980年の愛知県生まれというから今年29歳。矢口史靖監督の「ウォーターボーイズ」(2001・日)で注目され、以来TVを中心に活躍している。最近では「ミドナイトイーグル」(2007・日)の新聞記者役や「真夏のオリオン」(2009・日)の潜水艦の艦長役で出ている。映画の冒頭にビデオ・メッセージが流れ、そこで「イメージを変えたいと思っていた」というようなことを言っていたが、ファンの人にはともかく、ボクらには7〜8年でイメージが固定してしまった感じはしないなあ、と。使っていた銃はグロック。耳のピアスの穴はあってもおかしくない役なので、まあいいか。

 あまり活躍しない相棒役は山田孝之。1983年の鹿児島県生まれ。TVドラマ版の「ウォーターボーイズ」(2003)で注目され、「電車男」(2005・日)で一躍有名に。妻夫木聡主演のSF大作「ドラゴンヘッド」(2003・日)では正気を失う同級生を演じていた。しかし「クローズZERO」(2007・日)のイメージが強烈で、もちろん演技は抜群にうまいが、ボクには悪役の印象が強い。つい最近出たパニック映画「252 生存者あり」(2008・日)でもそうだったし、コメディの「鴨川ホルモー」(2009・日)でもちょっとスゴむとかなり怖い感じ。この方向でずっと行くんだろうか。ビデオ・メッセージでも胸毛がスゴイ。

 2人を追う刑事には石橋凌。もとARBのヴォーカルで、1982年に映画デビュー。奥さんは女優の原田美枝子。映画でヤクザ役などを多く演じてきているが、ボクが特に印象に残っているのは三池崇史監督のホラー「オーディション」(2000・日)のビデオ会社に勤める普通のサラリーマン役。実に説得力があった。英語がペラペラのようで、ジュック・ニコルソンが主演したショーン・ペン監督の「クロッシング・ガード」(The Crossing Guard・1995・米)あたりから海外作品にも出演するようになり、「The Juon/呪怨」(The Grudge・2004・米)、ジェット・リー主演のアクション「ローグアサシン」(War・2007・米)などにも出演。もっと海外で活躍して欲しい。使っていた銃はベレッタM92。ニーリングで撃ったり、ウィーバー・スタンスで構えてみせる。

 途中でちょっと関わってくる新聞記者に石田ゆり子。1969年生まれというからかなりのベテラン。玉木や山田と並んでもそんなに年上という感じがしないところがスゴイ。1988年にNHKドラマでデビュー。「101回目のプロポーズ」(1991)や「Dr.コトー診療所」(20003)など主にTVで活躍。映画では最近「誰も守ってくれない」(2008・日)や、日本映画としてはスケールの大きなSFアクション「神様のパズル」(2008・日)に出ていた。本作では正義感の強そうな感じがピッタリとはまっていた。使っていたパソコンはMac。

 悪役と言えば、最近悪役が多い鶴見辰吾も怖かったが、そのボスで事件のもみ消しを図る大臣を演じた品川徹と、玉木の上司を演じた半海一晃が、いかにもいそうな感じで説得力があり、実に良かった。

 問題がありそうな脚本を手がけたのは、大石哲也と木村晴夫。大石は主にTVで活躍している人で、映画はケイン・コスギの「マッスルヒート」(2002・日)、「DEATH NOTEデスノート」シリーズ(2006・日)、鈴木亜美が凄かったホラー「エクスクロス 魔境伝説」(2007日)を手がけている。そういえば原作は面白い「潜入刑事らんぼう2」(2007)のTVドラマも書いていたか。木村晴夫は本作と、TV版の「MW第0章〜悪魔のゲーム〜」(2009)を手がけているだけのようだが、実際には本作プロデューサーの松橋真三のペンネームなんだとか。「エクスクロス 魔境伝説」で大石と仕事をしている。でもTV版の方が良かったから、映画版も木村に任せた方が良かったかも。

 監督は岩本仁志。東大を卒業しフジテレビのディレクターになった人で、「ナースのお仕事」(1996)シリーズや「白線流し」(1996)シリーズなどを手がけ、その後日本テレビへ移籍。「女王の教室」(2005)や「ギャルサー」(2006)などを手がけている。映画はTV版も手がけたダウンタウンの浜チャン主演「明日があるさTHE MOVIE」(2002・日)。コメディ系が向いているのではないだろうか。

 冒頭の村を焼き払うシーンで米兵が使っていたのはM16A1。ラストの東京基地ではM16A2のようだった。結城の隠れ家には、なぜかMGCのショットシェルまでが……。沖之真船島にあらわれるヘリにはM60(M60Dらしい)が搭載されていた。軍用車両はM151マットやハンヴィ。東京上空を飛ぶヘリや輸送機はCGっぽかった。撮影協力に東京マルイ

 海外へ売るためなのだろうが、クレジットが全て英語なのが引っかかった。というか読みにくい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は30分前くらいに着いたらすでに開場済み。入場プレゼントがあり、折りたたんだ玉木のポスターをもらった。25人くらいが入っていて、男女比は半々くらい。女性は若い人が多い。若い男性は少なく、ほぼ中高年。最終的に全席自由の588席に4割ほどの入り。初日でこれはどうなのだろう。どこかの劇場で舞台挨拶をやっていたのかもしれないが。

 チャイムが鳴って、アナウンスの後カーテンが左右に開いて、暗くなって始まった予告編は……いつものわけのわからないキューピーのCMのあと、上下マスクで「湾岸ミッドナイト」は、よくわからなかったが、コミック原作だとかで、「頭文字D」みたいな感じだろうか。それともゲームの「首都高バトル」の延長線的なものか。お笑いバッドボーイズの佐田が出ている。

 上下マスクの「30デイズ・ナイツ」は有名俳優を使ったゾンビ映画のよう。なぜジョシュ・ハートネットが出たのか。ということは面白いのかも。サム・ライミ・プロデュースだし。

 ワーナー・ブラザーズ配給の「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」は、予告は大人向けっぽい雰囲気。暗黒のウルトラマンも登場するらしい。ラスト、カラー・タイマーが凍り付くのが思わせぶりだ。気になる。たぶん違うだろうけど……。

 「ニューヨーク1997」と「マッドマックス」を合わせたような雰囲気の、ローナ・ミトラ主演の「ドゥームズ・デイ」はなかなか面白そう。たぶん女版「ニューヨーク1997」だと思うけど。

 上下マスクの「G.I.ジョー」は新しいバージョンでの予告に。なんと、韓国の人気スター、イ・ビョンホンがニンジャ役で出演しているらしい。ちょっとCGショーの匂いがプンプンしてきたが……。


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