Race to Witch Mountain


2009年7月5日(日)「ウィッチマウンテン ―地図から消された山―」

RACE TO WITCH MOUNTAIN・2009・米・1時間38分

日本語字幕:手書き書体下、林完治/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG指定)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/w-mt/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

アメリカ、ラスベガス近郊にUFOが墜落する。ヘンリー・バーク(キアラン・ハインズ)国防省の専門チームが派遣され、飛行物体が回収されたが、搭乗員は見つからなかった。その頃、ラスベガスでタクシー・ドラバーをやっているジャック・ブルーノ(ドウェイン・ジョンソン)は、10代の兄妹、セス(アレクサンダー・ルドウィグ)とサラ(アナソフィア・ロブ)を客として乗せる。彼らは子供なのに大金を持っていて、郊外の山の小屋に行けという。さらに、彼らを追ってくる車があった。ジャックはてっきり家出だと思うが、セスとサラの超能力で追っ手を振り切ってしまう。そして自分たちは宇宙人だという。ジャックは半信半疑のまま、山の廃屋まで送り届け、一旦帰ろうとするが異常な物音に建物の中へ入る。実は、サイフォン(トム・ウッドラフ・Jr)という宇宙人の暗殺者が2人を追っていたのだった。

74点

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 荒唐無稽だが、いかにもディズニーらしい楽しい作品。宇宙人、政府の謎の組織、殺し屋、カー・チェイス、友情、信頼、絆……そして感動。ちょっと涙が……。笑って、ハラハラして、ビックリして、犬と子供が大活躍するいわばロード・ムービー。何も考えずに、ただ楽しめる、そういう映画。むやみに人は死なない。疲れている時なんかはこういう映画がピッタリじゃないだろうか。ガッツリ楽しみたいという人や、シリアスな重いものが良いという人には向かない。コテコテと言えばコテコテ。

 とにかく子供たち(実は成人の宇宙人だが)が素直でカワイイ。しかもタクシー・ドライバーのジャックは、かつて悪事に関わったことはあるが、いまは刑期を終えて出直し、まっとうに暮らし、いつかあこがれの車「ブリット」(Bullitt・1968・米)でスティーブ・マックィーンが乗っていたマスタングを買うのが夢というナイス・ガイのタフ・ガイ。宇宙科学者のフリードマン博士は美人だし、UFOオタクもたくさん出てきて、とにかく楽しい。

 暗殺者はかなり醜く、恐ろしく、ちょっと「プレデター」(Predator・1987・米)みたいだし、宇宙船も、ありそうな形でしかもちゃんとそこにあるかように存在感もバッチリ。お約束の秘密基地も出てくるし、そこからの脱出もある。意外なことに、銃撃戦もたっぷりある。

 実は、もとネタがあって、「星の国から来た仲間」(Escape to Witch Mountain・1975・米)のリメイクだという。日本では1977年に公開されたらしい。続編「トニーvsティア/マジカルパワー大激突」(未)(Return from Witch Mountain・1978・米)もあったんだとか。

 主演のタクシー・ドライバーは、ザ・ロック改めドウェイン・ジョンソン。カレッジ・フットボールの選手からプロレスのスターとなり、「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」(The Mummy Returns・2001・米)で大ブレーク。「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)や「ワイルド・タウン/英雄伝説」(Waking Tall・2004・米)、「Doom ドゥーム」(Doom・2005・英ほか)などの単純に面白いアクション作品に次々と主演し、映画スターとしての地位を確立した。気の良いタフ・ガイというイメージがピッタリ。本作でもそんな役所。「助けに来たぞ」のセリフがクサクなくありがたく聞こえるのはこの人だからだろう。

 宇宙人の妹サラを演じたのは16歳のアナソフィア・ロブ。「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory・2005・米)でチューインガムを噛むコンテストのチャンピオンを憎たらしく演じていた子。その後ヒラリー・スワンクが出たミステリーの「リーピング」(The Reaping・2007・米)でイナゴ少女を印象的に演じ、「テラビシアにかける橋」(Bridge to Terabithia・2007・米)で魅力的な転校生を演じ観客を虜にした。美人だし、スゴイ女優になりそうな予感。マコーレー・カルキンとかエドワード・ファーロングみたいにならなければ。

 宇宙人の兄セスを演じたのは17歳のアレクサンダー・ルドウィグ。IMDbの評価は低いがなかなか面白かったファンタジー・アドベンチャー「光の六つのしるし」(The Seeker: The Dark is Rising・2007・米)で主役を演じた少年。公式サイトによると、本作の撮影中に16歳の誕生日を迎え、ドウェイン・ジョンソンからギターをもらい、大事にしているという。

 3人を受け入れて助ける女性宇宙学者フリードマン博士を演じたのは、カーラ・グギーノ。ちょっと本作のイメージは「スパイ・キッズ」(Spy Kids・2001・米)のお母さん役に近い。「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・英/米)のヒロイン、博物館の案内役、コミック原作の「ウォッチメン」(Watchmen・2009・米)では女性ヒーローを演じていた。コミック系とかファンタジー系が多いようだが、リドリー・スコットの「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・)では、ラッセル・クロウの離婚調停中の妻ローリーというシリアスな役を演じていた。本作でまたもどってしまったような。

 国防省のUFO専門チームの指揮官ヘンリー・バークを演じたのはキアラン・ハインズ。「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・独/米)でFBI捜査官、スピルバーグの「ミュンヘン」(Munich・2005・米)では始末屋カールを演じていた。どこか不気味な感じがある人で、本作でもそれが生きていた。使っていた銃はグロック。特殊部隊はMP5やM4A1カービンを使っていた。

 最後にみんなを助けるUFOオタクのハーラン博士は、なんと映画監督として知られるゲイリー・マーシャル。ゴールディ・ホーンの人生転換コメディ「潮風のいたずら」(Overboard・1987・米)や、大ヒット作「プリティ・ウーマン」(Pretty Woman・1990・米)、ちょっと残念だったアン・ハサウェイの「プリティ・プリンセス」(The Princess Diaries・2001・米)などを手がけている。最近はパッとしない感じだったが、出演かい。

 酒場で3人を助けるウエイトレスのティナを演じていたのはキム・リチャーズ。オリジナル版の「星の国から来た仲間」で宇宙人の妹を演じていた人。最近クリスティナ・リッチがSEX中毒患者を演じた「ブラック・スネーク・モーン」(Black Snake Moan・2006・米)に出ていた。

 そしてラスヴェガス郊外の警察の保安官を演じていたのが、「星の国から来た仲間」で宇宙人の兄を演じていたアイク・アイゼンマン。「スター・トレック2/カーンの逆襲」(Star Trek: The Wrath of Khan・1982・米)に出ていたらしい。

 脚本はマット・ロペスとマーク・ボンバックの2人。マット・ロペスはアダム・サンドラーのヒット・コメディ「ベッドタイム・ストーリー」(Bedtime Stories・2008・米)を書いた人で、マーク・ボンバックはなかなか怖かった「アダム―神の使い悪魔の子―」(Godsend・2004・米/加)や「ダイ・ハード4.0」(Live Free od Die Hard・2007・米/英)、「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)など、絶妙な本を書く人。この2人が書いたのだから、面白くて当然だろう。

 監督はアンディ・フィックマン。青春コメディの「アメリカン・ピーチパイ」(She's the Man・2006・米/加)やドウェイン・ジョンソン主演のスポーツ・コメディ「ゲーム・プラン」(The Game Plan・2007・)を監督しているが、どれも日本劇場未公開。たぶん本作がちょいちょい笑えるのもコメディを作り慣れているからだろう。ドラマのジャマにならず、おふざけにならない力加減がうまい。今後の作品にも注目したい。

 銃器はほかに、特殊部隊がM700系のスナイパー・ライフル、地元警察が4インチ・サイズのリボルバーを使っていた。そしてUFOオタクたちが使っていたのが、黒いMacBookを使っており、地図にない山の中の秘密基地でもMacを使っていた。ことあるごとに、国防省のUFO専門チームの新人がボクも銃が欲しいというのが笑わせてくれた。新人はすぐには銃を持たせてもらえないらしい。

 プレデターのような暗殺者の宇宙人をデザインしたのは、アマルガメイテッド・ダイナミックス社のトム・ウッドラフ・Jr。古くは「ターミネーター」(The Terminator・1984・米)の特殊効果や、「エイリアン2」(Aliens・1986・米)のクリーチャー・エフェクト、巨大地中生物の「トレマーズ」(Tremors・1990・米)クリーチャー・デザインなどを手がけた人。最近では「AVP2エイリアンズVSプレデター」(AVPR: Aliens vs Predator - Requiem・2007・米)を手がけている、いわばベテラン。本作ではサイフォンの中に入って演技もしている。

 過去のUFO映像などをコラージュしたタイトルはyU+Coのシンデレラ・ペン。エリック・バナの「ハルク」(Hulk・2003・米)や、最近ではディズニーのヒット作「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)を手がけている。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、45分前くらいに着いたら、2館共通の窓口には3人。40分前くらいで7〜8人になって、20分前に窓口が開いた時点で30人ほど。すでに劇場も開場済み。スクリーンはシネスコ・サイズで開いていた。

 10分前でこちらの劇場は20人くらいの入り。ほぼ中高年の男性で、女性は4〜5人。最終的には183席に4割くらいの入り。これはちと寂しい。もっと入っても良い映画なのに。

 予鈴、本鈴の後、半暗になって始まった予告編で気になったのは……よくわからないが、ヒット・コミックの映画化という「僕の初恋をキミに捧ぐ」、不倫映画らしい「ヴィヨンの妻」なんかは正直どうでも良い感じ。岸谷五朗監督・脚本の「キラー・ヴァージンロード」も良くわからなかった。

 渡辺謙主演の「沈まぬ太陽」は山崎豊子の原作。ただどうにも重苦しい雰囲気が……。クレヨンしんちゃんの実写版「BARAD名もなき恋のうた」は草なぎ剛と新垣結衣の共演で、監督が「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)の山崎貴。期待して良いのか。でもこの監督の作品のタイトルはどうして英語と日本語の組み合わせなんだろう。海外セールスを睨んでのことか。

 雨上がり決死隊の宮迫博之がナレーターを務めるBBCの宇宙開発ドキュメンタリー「宇宙へ。」は、NASA創設50周年、月着陸50周年ということらしい。1コイン、500円で見られるとか言っていたが……。

 上下マスクの「アマルフィ 女神の報酬」は新バージョンに。なんとPPKを使っていたようだが……。内容はよくわからなかったが、イタリアで邦人誘拐事件が発生し、日本人外交官が活躍するというお話しらしい。

 場内が暗くなってスクリーンが左右に広がり、ドルビー・デジタルの水のデモがあって、左右マスクでディズニー・ピクサーの「カールじいさんの空飛ぶ家」の日本語吹替予告。これもやっぱりデジタル3D上映らしい。絵がキレイ。タイトルはなんだか宮崎アニメの「ハウルの動く城」みたいだが。


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