Amalfi: Megami no hoshu


2009年7月19日(日)「アマルフィ 女神の報酬」

2009・フジテレビ/東宝/電通/ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ビー/FNS27社・2時間05分

日本語字幕:手書き書体下、岡本太郎/シネスコ・サイズ(レンズ、Arriflex)/ドルビーデジタル

(字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.amalfi50.jp/
(全国の劇場案内もあリ)

まもなくクリスマスを迎える年末のイタリアでG8が開催されることになり、日本から川越外務大臣(平田満)がやってくるため、日本大使館はその準備で大わらわだった。そして新任の一等書記官、黒田(織田裕二)がそれに合わせるように赴任してくる。そんな時、イタリア語が話せない日本人観光客の矢上紗江子(天海祐希)から、8歳の娘のまどか(大森綾音)が迷子になったと連絡が入る。一番下っ端の研修生、安達香苗(戸田恵梨香)に対処するように指示が出るが、不安があるというので赴任したばかりの黒田にも同行することに。いなくいなった美術館で監視カメラ映像をチェックしていると、紗江子の携帯にまどかの携帯から、男の声で「誘拐したから、10万ユーロの身代金を用意しろ」と電話が入る。イタリア語ペラペラの黒田が電話に出て対処するが、犯人に問い詰められ思わず父と名乗ってしまう。通報によってやってきたローマ市警のバルトリーニ(ロッコ・パパレオ)から、身代金の受け渡しで犯人から怪しまれないよう、最後まで父の役を演じるように要請されるが……。

74点

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 よくできたミステリー。物語は現実に即し、感動的。さすがにフジテレビ開局50周年記念作品というだけのことはある。すべてイタリアで展開するのも面白い。名所観光地が美しく捉えられている。リアルな銃も登場し、なかなかの緊張感。「むだ遣いは外交官の特権」とか「ボクらの仕事は予算を使い切ってなんぼでしょ」というセリフが笑わせてくれる。

 ただ、惜しいのは、画質が所々粒状性が目立ち、古い映画のようになっていたり、一部はいかにもビデオのような画質になっていたり、突然ハイビジョンのようなシズル感あふれる高画質になったりと、画調が一定しないこと。全部ハイビジョンのようだったら印象はもっと良かったのに。そして、意外と主人公の黒田が活躍しないこと。重要な事件現場には立ち会っているのだが、あまり事件の解決に重要な役割を果たしていない。せいぜい監視カメラのトリックに疑いを持ったのと、ラストの犯人説得に一役買ったくらい。

 それと、ミステリー好き以外の人や、TVに慣れた人にはクライマックスまでのテンポが遅すぎるように感じるかもしれない。ボクは楽しめたが、隣に座っていた若い女の子の2人連れは、長くてちょっと退屈したらしい。

 主演はすでに40歳を超えた織田裕二。まったくそんな感じには見えない。あまり感心しなかったリメイクの「椿三十郎」(2007・日)は見ていないが、「踊る大捜査線 The Movie」(1998・日)や「県庁の星」(2006・日)は良かった。さすがにうまい。本作では英語・イタリア語も駆使して(どの程度うまいのかわからないが)、がんばっている。また説得力もある。ただ、銃を水平にして構えてしまうのは、良くない映画の見過ぎというか悪影響ありあり。チープなチンピラに見えてしまうので、やめた方が良いと思う。正式な訓練を受けたとしたら、絶対にやらない。本作では、自分の銃ではないが、PPKとM92を手にする。

 高びーで憎たらしい女を演じさせたらこの人ほどうまい人はいないだろう天海祐希。地なのか、とにかくうまい。最初は警察に連絡してと訴えていながら、織田が警察に連絡するとひっぱたいて「警察に知らせたのはあなたじゃない」となじる。時々たばこを吸いにベランダに出るが、何か演出上の意図があったんだろうか。あまり伝わってこなかった。ただ、娘のことが心配で泣き崩れるシーンは、感動的だった。TVの「BOSS」もいやな女の役だったが、このイメージで本当に良いのか。宝塚の男役から女優の道へ。転身初期の『藪の中』の現代版「MISTY」(1997・日)や「狗神」(2001・日)は話題になった。本作ではM92を構えてみせる。

 矢上の友人藤井を演じたのは佐藤浩市。まあ良く映画に出ている。本作の前に「ザ・マジックアワー」(2008・日)、「誰も守ってくれない」(2008・日)、「少年メリケンサック」(2008・日)、「感染列島」(2008・日)、「秋深き」(2008・日)と、ざっと上げてもこれだけある。2008年はこのほかにも、何本もある。映画デビューは「青春の門」(1981・日)だから、すでにキャリアは30年近い。主役でなくても、この人が出ると重みが出る。本作ではベレッタM1934を使っていた。

 矢上の娘まどか役は大森綾音。なかなかかわいい子で、つい最近「252 生存者あり」(2008・日)で、主人公の耳の不自由な娘を演じていた子だ。本作では出番は少ないが、キッチリと印象に残る。

 イタリアの日本大使館の研修生、安達香苗を演じた戸田恵梨香もいい。出番は多くないが、重要な役回りで、振り回されても懸命にがんばる姿が良かった。

 影から携帯電話で主人公に指示を出す男の声をやっていたのは、なんと中井貴一。見ている時はまったくわからなかった。あとでクレジットで知り、ビックリ。外交官、黒田を主人公にした物語は、いくらでも作れそう。このクォリティなら悪くないと思う。

 原作・脚本は真保裕一。映画のために書いたオリジナルだそうで、公開に合わせて小説版が扶桑社から4月に出版されたらしい。同じ織田裕二主演で「ホワイトアウト」(2000・日)も映画化されている。

 監督は西谷弘。CMディレクターからTVドラマのディレクターへ。映画では「県庁の星」、「容疑者Xの献身」(2008・日)があり、すべてキッチリとヒットさせている。本作もヒットで、自作はますますプレッシャーがかかるに違いない。ぜひいい作品を撮って欲しい。

 エグゼクティブ・プロデューサーが亀山千広、企画・プロデュースが大多亮という、どちらもフジテレビのドラマで歴史を作ってきた人物。2人が組むとこういうヒットすべくしてヒットする作品ができると言うことか。

 銃は実銃ベースのイタリアのプロップ・ガンだろう。犯人たちが使うのはタンフォリオらしいオートマチック、グロック、マイクロ・ウージーかウージー・ピストル。警察は刑事が当然ベレッタM92、特殊部隊はM4A1カービン(イタリアはベレッタAR70/90あたりではないかという気もするが)。銃声が甲高くて大きく、しかも室内では反響してキーンとなったりして非常にリアル。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定なので前々日に確保しておいて、15分前くらいに到着。10分前くらいに開場して、7Fへ。離れているのだからもっと早めに開ければいいのに。そのせいか予告が始まっても続々と人が入ってきた。

 TVでの広告が多かったせいか、若い人がメインで中高年まで。男女比は4対6で女性が多め。最終的に301席に8割くらい入っただろうか。暗くなってからも入ってきたので、確認ができなかった。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは、「カムイ外伝」は、やっと新予告に。とにかく絵がキレイ。それだけでも印象が良い。「HACHI 約束の犬」新予告に。リチャード・ギアが脚本を読んで号泣し、自らプロデュヘースも買って出たとかいうだけあって、期待できそう。

 すっかり忘れていたが、上下マスクの「20世紀少年」って、まだあったんだ。うーん。もうどうでもいいよなあ。

 3D-CGの「ホッタラケの島」は新予告に。とにかくキャラクターが素晴らしい。日本もがんばればここまでできるという感じはあるが、もともとアニメは日本の牙城のはず。アメリカのアニメーションに負けるな。これもフジテレビ開局50周年記念作品。一体何本作る気だろう。


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