Connected


2009年8月9日(日)「コネクテッド」

CONNECTED 保持通話・2008・香/中・1時間50分

日本語字幕:手書き風下、税田春介/シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex/Moviecam、Super 35)/ドルビーデジタル

(香IIB指定)

公式サイト
http://www.connected-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあリ)

ロボット設計技師のグレイス(バービー・スー)は突然、正体不明の男たちに誘拐、小屋に監禁され、弟と連絡を取るように強要される。電話は一味によって壊されるが、知識のある彼女はどうにか修理し、ダイヤルはできないが誰かに電話できるようにする。つながった先は、気弱な経理マンのアボン(ルイス・クー)で、子供を空港へ見送りに行く約束をしていたが、彼女のいうことが本当だと信じ、手伝わざるを得なくなる。

72点

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 良くできたサスペンス・アクション。かなりハラハラドキドキ、そしてちょっと笑わせて、カー・チェイスも銃撃戦も格闘もたっぷりあり、全く飽きさせない。素晴らしい。ただ、オリジナル版「セルラー」(Cellular・2004・米/独)とまったく同じ構成なので、最後のどんでん返し、オチまでがわかり、オリジナル版を見た人にとっては新鮮さも驚きもない。つまり、オリジナル版を見ていない人のための作品という感じ。見た人には……敢えて言えば、見なくても良い。どちらかと言われたら、ボクはオリジナル版を推す。

 本作で良いのは、キャラクター。オリジナル版が悪いということではなく、香港版では変えていながらちゃんと成立しているなあということ。オリジナル版ではクリス・エヴァンス演じるチャラチャラした遊び人の若い男だったのが、本作では取り立て屋の気弱な経理マンで、シングル・ファーザーでやや年上になっている。断り切れないため仕事が中心で、子供との約束をいつも果たせない。これが追い込まれたときどう変わるか、そのギャップはチャラ男がまともな青年になるギャップと遜色ない。

 演じたのは香港生まれ、モデル出身のルイス・クー。かなりダークなヤクザの跡目争いを描いた「エレクション」(黒社会・2005・香)や、ジャッキー・チェンのアクション・コメディ「プロジェクトBB」(Rob-B-Hood・2006・香)などに出ていたイケメン。本作では眼鏡をかけて気の弱そうなサラリーマンを好演し全く印象が違う。偶然にも使うことになる銃はトカレフ。

 オリジナル版でキム・ベイシンガーが演じた人妻は、若いシングル・マザーで、ロボット設計技師の自立した女になっている。そのため電話の相手と対等な感じで、恋の芽生えのような者まで感じさせる。もちろん行きすぎないようにさらりとしか描かれていないが。

 演じたのは台湾生まれ、歌手出身の美人バービー・スー。日本の「花より男子」をリメイクした台湾のTVドラマ「流星花園」で牧野つくしを演じて評価されたらしい。映画では江口洋介が出たSFホラーの「シルク」(Silk・2006・台)に出ていたらしいが見ていないのでわからないが、今後活躍してくれそう。MacBookProを使用。

 オリジナル版でウィリアム・メーシーが演じた定年間近の制服警官は、元特殊部隊の隊員で何かのミスによって格下げされ白バイ隊員になった若い男になっている。これもこれでアリ。元部下の立場が上になっていて、この辺も面白い。

 演じたのは香港生まれのニック・チョン。面白かったジョニー・トー監督の「ブレイキング・ニュース」(Breaking News・2004・香/中)で犯人たちを追う刑事を、「エレクション」でやくざを、「エグザイル/絆」(放逐・2006・香)で問題の元となった男を演じていた。本作では、普段はリボルバーを装備しているが、途中からグロックを使う。腕時計はチソット。

 ジャイソン・ステイサムが演じた悪役は髪を染めた冷血漢のインターポールになり、それほどイメージの差はないが、かなりウエットで怖い。演じたのは中国生まれのリウ・イエ。「山の郵便配達」(那山 那人 那狗・1999・中)でデビューしたらしい。最近では真田広之が出たチェン・カイコー監督の「PROMISE プロミス」(The Promise・2005・中ほか)や、チヤン・イーモー監督の血まみれ愛憎劇「王妃の紋章」(満城尽帯黄金甲・2007・香/中)で第一王子を演じていた。やはり金髪(?)に染めたことで冷酷な感じが出たのだろう。オール・シルバーのS&Wの角トリガー・ガード・オートを使っている。

 ほかに出てき、た銃は、悪人たちがP226か228らしいオート、シルバーのデザート・イーグル、警察はグロック、MP5など。携帯はモトローラで、ビデオカメラはJVC、メインの車はジープやボルボなど変わるが、回りには三菱が大かった。そして車が突っ込むトラックの荷台にはペプシ・コーラのペブシMAX。

 脚本はアラン・ユエンと監督のベニー・チャン。アラン・ユエンはベニー・チャンとの事後とが多く、催眠術を使ったアクション「ヒロイック・デュオ 英雄捜査線」(双雄・2003・香)、ジャッキー・チェンの「香港国際警察」(New Police Story・2004・香)、「プロジェクトBB」などベニー・チャン監督との仕事が多く、しかもユニークで面白い作品が多い。

 監督のベニー・チャンは仲村トオルが悪役で出たジャッキー・チェン製作の「ジェネックス・コップ」(特警新人類・1999・香)、山本未来が出たジャッキー・チェン主演の「Who am I?」(我是誰・1999・香)で協同監督、最近ではニコラス・ツェー主演の「インビジブル・ターゲット」(Invisible Target・2007・香)を撮っている。ニコラス・ツェーとも仕事が多いようだ。とにかく面白い作品が多い名監督だ。かつてジョニー・トー監督のアシスタントを務めていたらしい。なるほど。

 アクション指導はリー・チュンチーというスタントマン出身の人。本作ではカー・スタントも手がけている。ジャッキー・チェンとの仕事が多いようで、「レッド・ブロンクス」(Rumblein the Bronx・1995・香)、「ナイスガイ」(Mr. Nice Guy・1997・香)、「ゴージャス」(Gorgeous・1999・香)、「ラッシュアワー」(Rush Hour・1998・米)、「シャンハイ・ヌーン」(Shanghai Noon・2000・米)、最近では「インビジブル・ターゲット」なども手がけている。危険な仕事が多い。

 銀座の劇場は1週遅れで初日の初回、50分前くらいに着いたら誰もいなかった。それでも40分くらい前に開場になった(暑い日だったので大助かり)ら、ぱたぱたと増えていって間もなく20人ほどに。最初は中高年が多かったが、だんだん若い人たちも増えてきて、最終的には20代くらいから高齢者までまんべんなくいた感じ。女性は3割ほど。270席の6割ほどが埋まった。

 カーテンが左右に開いて暗くなって始まった予告編は……なんだかなあの雰囲気プンプンは上下マスクの「サイドウェイズ」。うーむ予告だけで辛い。「のんちゃんのり弁」は……TVでいいのでは?という感じ。バンパイア映画「30デイズ・ナイト」は新予告に。アラスカのバロウで、冬の30日間だけ太陽が昇らない期間があり、そこで事件が起きるということらしい。普通ならB級映画だが、サム・ライミがプロデュースして、ジョシュ・ハートネットが出ているので大作映画の雰囲気。

 そういえば、本作は吹替らしく、口と声が合っていないところが多々あり、気になった。それから、ハリウッド・ヒット作のリメイクという特殊な形で、ほとんど原作どおりに作ったとは言え、日本じゃ作れないだろうなという気がした。特にアクション部分は。アクションを少なくして、きっとお涙頂戴にしてしまうんだろうなあ。


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