Hachi


2009年8月12日(水)「HACHI 約束の犬」

HACHI・2009・米・1時間33分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(HDCAM、Panavision Genesis)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米G指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.hachi-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあリ)

アメリカのある小学校のクラスで「私のヒーロー」という発表会が行われていた。ローニー少年(ケヴィン・)は黒板にHACHIと書き、おじいちゃんの犬ですと発表を始める……。 日本のあるお寺からアメリカへ向けて子犬が送られる。ところが途中でタグが取れ、しかも檻が運搬途中に落ちて子犬は外へ出てしまう。ちょうどそこへ通りかかった大学教授のパーカー(リチャード・ギア)は子犬を見つけ、駅員のカール(ジェイソン・アレクサンダー)に迷い犬だと預けようとするが、駅としては保健所に渡すことになるという。処分されるのを避けるため、パーカーは引き取り手が見つかるまで自分の家で預かることにする。

74点

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 わかっている話だが、感動した。あやうく涙がこぼれそうに。

 とにかくハチがかわいい。ハチが健気で純粋で一途で、言葉が話せないだけに余計に愛おしい。まさにリチャード・ギアを食ってしまった感さえある。子犬から老犬までが、何匹かの犬で演じられているわけだが、まさに意志を持って演技をしているように見える。悲しそうな表情、楽しそうな表情……本当に笑っているように見える、泣いているように見える。昔をお見出しているように見える。演出の妙。

 ただ、やっぱり話のスケールは小さい。町の人を巻き込んではいるが、ほとんど1件の家の犬と家族、もっと細かくいうと犬とご主人と奥さんのお話。リチャード・ギアはTVじゃ無理だろうが、TVドラマでも充分という感じは否めない。そこがちょっと残念。

 しかも、お寺の鐘の音のアフレコが微妙に中華の銅鑼になっているのはいかがなものだろうか。生録の音で、本物の鐘のゴーンという音でも何ら不都合はないはずなのに。音響担当者が絵から想像して勝手に付けたのか、何らかの演出意図があってのことか。日本人は冒頭からすっかり興ざめにさせられる。

 ラスト、本物のハチの写真や飼い主の写真、渋谷のハチ公像などが出て、日本原作ということがわかるようになっている。世界公開版でもつけられているのだろうか。1つ希望を上げるとすると、ハチ公像のあるところが待ち合わせの人気スポットになっていることを言って欲しかった。ハチが待っていた場所が、今も人々が待ち合わせをする場所なのだと。

 主演のリチャード・ギアは脚本を読んで大変気に入り、自らプロデューサーを買って出たのだとか。「Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?」(Shall we Dance?・2004・米)でも日本原作作品に主演していたし、黒澤明監督の「八月の狂詩曲(ラプソディー)」(1991・日)にも出演しており、親日家としても知られる人。人傑擁護活動家としても知られるが、ときどきご乱心のスキャンダルも聞こえてくる。強烈な印象があるのは「アメリカン・ジゴロ」(American Gigolo・1980・米)と「愛と青春の旅立ち」(An Officer and A Gentleman・1982・米)のカッコよさ。「プリティ・ウーマン」(Pretty Woman・1990・米)は大ヒットし、ジュリア・ロバーツを一気に大スターにした。変わったところではホラーの「プロフェシー」(The Mothman Prophecies・2002・米)が面白かった。

 妻を演じたのは、ジョーン・アレン。「ボーン・スプレマシー」(The Bourne Supremarcy・2004・米)とその続編でCIAの局員を演じた人。アメリカ初の女性副大統領を巡る政治サスペンスドラマ「ザ・コンテンダー」(The Contender・2000・米)で副大統領候補の強い女性を好演。感動ドラマ「カラー・オブ・ハート」(Pleasantville・1998・米)ではドラマの中の理想的なママを演じていた。悪役もこなせる貴重な存在だろう。

 娘を演じた美女はサラ・ローマー。「呪怨パンデミック」(The Grudge 2・2006・米)に出ていたらしい。その後ガッカリの裏窓リメイク「ディスタービア」(Disturbia・2007・米)で隣の家の美少女を演じて、本作へ。もうすっかり大人の役だ。結婚して子供が生まれる設定になっている。成長が早い。もっとメジャー作品で活躍して欲しい。

 主人公の日本人の友人としてケイリー=ヒロユキ・タケガワは日系人なのだが、なんだかだんだん日本人から遠くなっている気がする。昔はそうでもなかったのに、やっぱりアメリカ生活が長いとアメリカ人になってしまうと言うことだろう。なんか日本語が怪しい。吹替っぽかったが。

 オリジナル版「ハチ公物語」(1987・日)の原作・脚本は新藤兼人。本作の脚本はスティーヴン・P・リンゼイ。脚本としてはほぼ初めてらしい。なかなうまくまとまっているのではないだろうか。

 監督はラッセ・ハルストレム。スウェーデン生まれの人で、プロデューサーのリチャード・ギアの友人でもあり、彼が監督しないか打診したらしい。「アバ/ザ・ムービー」(ABBA: The Movie・1977・豪/スウェーデン)も手がけており、「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(Mitt liv som hund・1985・スウェーデン)で高く評価された。ほかにレオナルド・ディカプリオがアカデミー助演男優賞にノミネートされた「ギルバート・グレイプ」(What's Eating Gilbert Grape・1993・米)、など、ちょっと辛い感動ドラマが多い名手。

 映画の中で語られ、どうも本当らしいのは「秋田犬は人間を喜ばせようという気がない」「犬が飼い主を選ぶ」ということ。なかなか興味深い。子犬時代を演じたのは柴犬だったようだが。でも柴犬も新潟の忠犬タマ公というのがいたし、CMに登場する白い犬のカイ君は北海道犬らしいし、紀州犬や日本の犬は注目を浴びている模様。

 公開5日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、30分前に着いて座席を確保し、コーヒーを買ってもどると、15分前くらいに開場。この時点では20人くらい。男女比は半々くらいで、夏休みと言うことでか、平日でも下は小学1年生くらいの子供と母もいたが、字幕版で大丈夫か。メインはやはり中高年。女性の方がやや若い感じ。予告が始まっても人が続々入ってきて、中年のオバサンや若いカップルが増えた。最終的には287席に6割くらいだと思うが、上映が始まっても入ってきたのでもう少し増えたかも。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……パステル調というかTVっぽい絵でなかなかタイトルが出ず、お笑いの人たちのドラマかと思ったらなんだか重そうな「引き出しの中のラブレター」……やっばり日本のドラマはウェット、湿度が高いなあ。

 フランス映画版の「ココ・アヴァン・シャネル」は、フランス映画という感じで、予告はウェット。

 漫画原作で舞台にもなっている箱根駅伝のドラマ「風が強く吹いている」は、 予告を見る限り感動スポ根というか友情もので、お涙頂戴という感じ。なんで日本のドラマはみんな同じなんだろ。

 「プール」は画質も悪く、出演者もシチュエーションも似ていて「かもめ食堂」そっくりの印象。なんで映画なんだろう。小山薫堂原作の「スノープリンス」はクリスマス映画らしい。内容はまだよくわからない。ただ、やっぱり泣かす映画らしい。


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