3:10 to Yuma


2009年8月16日(日)「3時10分、決断のとき」

3:10 TO YUMA・2007・米・2時間02分

日本語字幕:丸ゴシック体下、田中和香子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://310-k.jp/
(全国の劇場案内もあリ)

南北戦争が終わって間もないころ、ビズビーの町付近を荒らし回っていたギャング団のボスベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が逮捕され、裁判所のあるユマへ行く列車に乗せるため、列車の来る駅があるコンテンションの町まで護送することになる。メンバーはピンカートン探偵社のバイロン・マッケルロイ(ピーター・フォンダ)、町唯一の医者、獣医のドク・ポッター(アラン・デュディック)、ビズビーの小悪党タッカー(ゲヴィン・デュランド)、鉄道会社のグレイソン・バターフィールド(ダラス・ロバーツ)、そして危険を承知でバターフィールドに雇われた借金の返却を迫られている牧場主のダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)。道中、ウェイドの右腕で凶悪で残忍なチャーリー・プリンス(ベン・フォスター)率いるギャングたちは、ボスを取り返そうと襲いかかってくる。そして片足が不自由な父を気遣うウェイドの長男ウィリアム(ローカン・ラーマン)も密かに一行の後を追う。

80点

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 エルモア・レナードの短編小説「3:10 to Yuma」(1953)を映画化した、グレン・フォード主演の「決断の3時10分」(3:10 to Yuma・1957・米)を、同作の大ファンというジェームズ・マンゴールド監督が自身のプロダクションでリメイクしたもの。第80回のアカデミー賞では作曲賞と音響賞にノミネートされ、IMDbでは7.9という高得点。アメリカでは大ヒットしたが、日本では2年遅れてようやく公開。

 感動した。あやうく涙がこぼれるところだった。勧善懲悪とはひと味違う人間ドラマ。ハッピー・エンドではないが、決して後味は悪くなく、深い感動がじわーっと押し寄せる。完全に悪い人間、完全に良い人間はおらず、だれでも良い面も悪い面も持っていると。

 不運ばかりで惨めな人生を送っているが、それでも実直に生きようとするダン・エヴァンスと、家族も持たず、勝手気ままに欲望のおもむくままにリスキーな人生を送るベン・ウェイドの鮮やかな対比。それでいて芯の所では自分の信条にしたがって生きているという点で共通点を持つ2人。駅までの旅で奇妙な友情のようなものまで生まれる。つまりロード・ムービーになっている。夫婦の微妙な関係や、現代にも通じる父と息子の確執、父として夫としての愛なども実にうまく織り込まれている。

 ギャング団のボスベン・ウェイドを演じたのはラッセル・クロウ。早撃ちの名人という設定で、実際に抜き撃ちやスピンも見せている。日米合作で豊川悦司と共演した「No Way Back/逃走遊戯」(No Way Back・1995・米)はなかなか楽しませてくれた。サム・ライミ監督の西部劇「クイック&デッド」(The Quick and the Dead・1995・米/日)でもできるところを見せていた。やぱり歳を重ねて貫禄というか説得力が出てきた感じ。「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2001・米)でもプロのできる男を演じて見事だった。「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米)では珍しく自分は動かず指示を出す役だったが、やっぱりこの人は動いてくれた方が面白い。まだ45歳、できるだけがんばって欲しい。ちょっとスキャンダルが多い気もする。使っていたのは金の十字架がインレイされたSAA。

 ダン・エヴァンスを演じたクリスチャン・ベイルは相変わらずうまい。またちょっと屈折した役所がピッタリ。びっこを引きながら歩く感じも本当らしく見える。子役時代の「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)も良かったし、大人になってからの「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000・米/加)も怖くてとても良かった。骸骨のように痩せて見せた「マシニスト」(El maquinista・2004・西)は本当にショッキングだったし、「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米ほか)も兵士らしく決まっていた。前半はスペンサー・カービンを、後半は水平二連ショットガンのソウドオフしたものを使う。

 年老いたピンカートン探偵社の探偵バイロン・マッケルロイを演じたのはピーター・フォンダ。製作・脚本・出演を務めた「イージー・ライダー」(Easy Rider・1969・米)が有名だが、なぜか「だいじょうぶマイ・フレンド」(1983・日)なんていう日本映画にも出ている。「イギリスから来た男」(The Limey・1999・米)で久しぶりに見たら渋くて良かった。ただ、ニコラス・ケイジと共演した「ゴースト・ライダー」(Ghost Rider・2007・米/豪)は酷すぎ。本作では撃たれてすぐ手術で弾を取り出し追跡に加わるが、昔の銃はそれだけ威力がなかったということだろう。

 ウェイドの右腕チャーリー・プリンスを演じたのはベン・フォスター。ヒゲがないと優しそうな感じなので、思いっきりヒゲを伸ばしている。「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・加/米/英)で背中に羽が生えてきて悩むエンジェルを演じていた人。ジョン・トラボルタの「パニッシャー」(The Punisher・2004・米/独)やブルース・ウィリスの「ホステージ」(Hostage・2005・米/独)などにも出ていた。なかなか怖くて良かった。使っていたのはS&Wのスコーフィールド2挺拳銃。しかもリバース(ツイスト)・ドローで抜く。

 ほかにも銃は、町のシェリフがポンプ・アクション・ショットガン(スペンサーらしい)を使っていたり、ギャングのスナイパーが長いスコープのついたコルト1855リボルビング・ライフルを使っていたりする。また装甲馬車にはガトリング・ガンが搭載されている。ライフルはウインチェスターのM73、M66、ヘンリー・ライフルなど。拳銃ではダン・エヴァンスの息子が父のコルト・ネービー・カートリッジ・コンバージョンを使うほか、コルト・アーミーも出ていた。

 武器係は「プルーフ・オブ・ライフ」や「Mr. & Mrs.スミス」(Mr. & Mrs. Smith ・2005・米)、「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米)など多くの有名作品を手がけるデイヴィッド・フェンクルとセル・リード。セル・リードはかつての早撃ち世界チャンピオンで、本作ではガン・コーチも務め、ラッセル・クロウやベン・フォスターをトレーニングしているという。ラッセル・クロウとは「クイック&デッド」や「プルーフ・オブ・ライフ」で一緒に仕事をしている。

 監督はジェームズ・マンゴールド。警察内の暗部を描いたシルヴェスター・スタローンの「コップランド」(Copland・1997・米)、メグ・ライアンとヒュー・ジャックマンのロマンティック・ファンタジー「ニューヨークの恋人」(Kate & Leopold・2001・米)、傑作ホラー・サスペンスの「“アイデンティティ”」(Identity・2003・米)など、ジャンルを問わずいろんな面白い作品を作る人。次作も期待できそう。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、30分前くらいに着いて席を確保し、それからコーヒーを買ってもどると、15分前くらいに開場。20代後半くらいからいたが、だいたい中高年がメイン。西部劇だからしようがないのかもしれない、女性は1/3くらい。遅れて入ってくる人が多く、どのくらい埋まったか把握できなかったが、たぶん232席に6.5割くらいの入り。なかなか良い方ではないかと思う。

 ほぼ暗くなって始まった予告で気になったのは……マーチン・スコセッシの上下マスク「シャッター・アイランド」は、精神障害者だけを収容する孤島で発生した女性の失踪事件に連邦保安官のレオナルド・ディカプリオが挑むというものらしい。なかなか興味がそられる。

 上下マスクの「私の中のあなた」は白血病の姉を巡る続の物語らしく、予告だけで泣けてくる。これはちょっとヤバイ。キャメロン・ディアスが頭を自分で坊主刈りにするシーンはショッキング。それに子供たちがカワイイ。とても見られない

 「ウルヴァリンX-MEN ZERO」は、いわゆる前日譚というヤツで、ウルヴァリンの過去が描かれるらしい。とにかく絵がスゴイ。あり得ない映像だが、もの凄い迫力と緊迫感。これだけでも見る価値がある感じ。

 「サブウェイ・パニック」(The Taking of Pelham One Two Three・1974・米)のリメイク、上下マスクの「サブウェイ123激突」はデンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタの激突。銃はP229か。


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