30 Days of Night


2009年8月22日(土)「30デイズ・ナイト」

30 DAYS OF NIGHT・2007・米・1時間53分

日本語字幕:丸ゴシック体下、桑原あつし/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.30days-night.jp/
(音に注意、ポップアップを許可にすれば全国の劇場案内もあり)

アラスカ州バロウはアメリカ最北端の地。隣町まで128kmというへんぴな地だ。人口は563人だが冬の30日間だけ太陽が昇らない日が続くため、多くの人々がほかの地域に移動し152人に減少する。町を守るのはシェリフのエヴァン(ジョシュ・ハートネット)とデュピティのビリー(マヌー・ベネット)2人。エヴァンの妻ステラ(メリッサ・ジョージ)は離婚の決心を固め、極夜が始まる前に飛行機でアンカレッジへと向かう予定だったが、車をぶつけて飛行機に乗り遅れてしまう。そんなとき、生肉を食わせろと騒いだ男が逮捕され、数十頭の犬が惨殺されるという事件が起こる。男はヤツらがやってくるという。そして町全体が停電し、電話も使えなくなる。

71点

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 アラスカのバロウは実際には人口は2004年で4,680人ほどで、太陽が昇らなくなる極夜は11月18日〜1月24日までの68日間なんだとか。この間の平均気温は-25℃、1年のうち0℃を上回るのたつた3ヵ月。人口の57%はエスキモーで、白人は22%にすぎない。道路も鉄道もなく、交通手段は飛行機のみという完全な陸の孤島。(ウィキペディア)。

 ハリウッドにとってアラスカは外国のような所なのかもしれない。あるいは映画的な故意の演出なのか。68日の極夜は逃げ隠れするには長すぎるし、人口が4,680人もいたのでは10〜20人ほどのヴァンパイアで全滅させるのは困難だ。しかも出演者のほとんどは白人だし。

 原作はスティーヴ・ナイネズのグラフィツク・ノベル「30デイズ・ナイツ」。原作者がリサーチしていないのか。映画の印象としては吸血鬼映画というより、ゾンビ映画に近い。そして、冒頭から離婚だとか、本当かどうか人々が逃げ出す極夜とか、気が重くなるようなことばかりで、物語の進行と共に犠牲者が増えていき、想像したようにエンディングとなる。暗いし、気が滅入る。道徳的な後ろめたさを感じずにゾンビをバンバンやっつける爽快さは全くない。キスで終わるけど……。

 吸血鬼映画の基本である弱点の光は1回しか使われていないし、「ドラキュラ」の定番、吸血鬼になれない奴隷のような人間も出てくるが、十字架やニンニク、心臓に杭、燃やすなどがない。銃が効かず頭をはねるしかないというのはゾンビと一緒ではないか。表情も呆けたようなゾンビ顔。ドラキュラはもともと貴族だし、普通の人間と見分けがつかないはず。物腰の優雅なエレガントさなんてまったくなし。動きも死人みたいだし。これってヴァンパイアじゃない。演出がヘン。

 だいたい2007年にアメリカで公開されて今頃日本で公開というのは解せない。何か理由があるはず。なぜ、ジョシュ・ハートネットほどのスターが出演したのか。考えられる理由はラスト・シーンだけだなあ……。でもジョシュ・ハートネットが出たおかげでB級プラスくらいにはなった感じ。

 主演のジョシュ・ハートネットは、つい最近キムタクが出た「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」(I come with the Rain・2009・仏)に主演していた。その前に出たのがこの作品。さらに1コ前には面白かった大作「ラッキーナンバー7」(Lucky Number Slevin・2006・独/米)に出ていた。確かにデビューの頃は「パラサイト」(The Faculty・1998・米)などのホラーに出ていたが、もうスターなんだからという気もする。偉ぶっていないという点では好感を持てるが……ホラーだからというようなことではなく、良いものに出て欲しいなと。使っていたのはベレッタM92。

 ヒロインはメリッサ・ジョージ。リメイク版の残念な「悪魔の棲む家」(The Amityvill Horror・2005・米)で、奥さんを演じていた人。基本TVが多いようだ。もう少しだけかわいらしさみたいなものがあったらきっとブレイクするのにという感じ。使っていたのはグロック。

 生肉を食わせろと騒ぐ男はちょい役だが印象に残る。うまいなあと思ったら「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・)で冷酷なアウトロー、チャーリー・プリンスを演じていたベン・フォスター。

 ヴァンパイアのリーダーを演じていたのはダニー・ヒューストン。あのアンジェリカ・ヒューストンの弟だ。「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・日/英/米)や、「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・英/独)などに出ていた人。最新作は「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」。ちょっと悪役が多い気がする。

 銃はほかにポンプ・アクション・ショットガンや、3インチくらいのリボルバーも登場。

 脚本の1人は「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of Cobra・2009・米)のスチュアート・ビーティ。ま、それはガッカリだったが、過去にトム・クルーズの「コラテラル」(Collateral・2004・米)や「オーストラリア」(Australia・2008・豪)などを手がけている。本作では「G.I.ジョー」サイドが出てしまったか。

 もう1人の脚本家はブライアン・ネルソン。逆赤ずきんちゃん物語「ハード・キャンディ」(Hard Candy・2005・米)を書いた人で、それまではTVの仕事が多かったらしい。

 スティーヴ・ナイルズは原作コミックと脚本を担当。「28日後...」のビデオ版の脚本などを手がけている。

 監督はデヴッド・スレイド。あの傑作サスペンス「ハード・キャンディ」の監督だ。なぜあれが撮れる監督が本作なのか。ちょっと音で脅かす感じもあり、普通のハリウッド的ホラー作品になってしまっている。もっとできるはずの人だと思うが、システムに入ってしまうとこうなるのかも。

 プロデューサーはサム・ライミ。最近は監督よりもプロデューサーの方が多いようだ。邦題が理解できないが「死霊のはらわた」(The Evil Dead・1983・米)で商業映画の監督デビューした人で、基本はホラーだが西部劇の「クイック&デッド」(The Quick and the Dead・1995・米/日)やコミック・ヒーローものの「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)でメジャーになった感がある。ボク的には「キャプテン・スーパーマーケット」(Army of Darkness・1993・米)が好きだなあ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は予想に反して、まさかの系列館最小の劇場での公開。初回限定プレゼントがあるというので用心して45分前に着いたらオヤジが5人。狭い階段室に並んでいる。窓がなく、照明が裸電球で、熱がこもっていてもの凄く暑い。それも暑い日。ほとんどの人が我慢できずに団扇やセンスを使っている。せめて入り口を開けて劇場の冷気を階段室に流してくれれば……。

 40分前に7〜8人、30分前に12〜13人となったが、まだ開かない。女性は2人ほどで、ほとんど中高年。暑さで倒れる人が出るのではないかと心配したが、どうにか無事だった。初日なんだから、もっと大きい劇場でやればいいのに。初回プレゼントもあるというのに。

 最終的に全席自由の209席に9.5割くらいの入り。後半に若い人が増えて1/3くらいになった。初回プレゼントはTシャツ。JLとあって、これってブランド? サイズ? サイズってことはないよなあ。まさかジュニアのLってことは……。R15+指定の映画なんだから。関係者らしい10人くらいの一団もいた。多すぎだって。

 スクリーンはシネスコで開いていて、チャイムが鳴ってアナウンスの後、ビスタになってCM予告。携帯を懐中電灯代わりにして入ってくるバカがいる。気になったのは……人気小説の映画化「悪夢のエレベーター」。1シチュエーション・ドラマで、低予算という感じ。狭い密室で、いかに面白いドラマを構築できるのか興味はあるが、外しそうな気もしてちょっと怖い。

 上下マスクの「2012」は、ローランド・エメリッヒのパニックもの。マヤのカレンダーで世界の終末を表す2012年。どんな終末が訪れるのか、驚異の映像で描いていくものらしい。その絵がスゴイ。

 スクリーンが左右に広がって、「シャーロック・ホームズ」の予告。ホームズはロバート・ダウニー・Jrで、ワトソンはジュード・ロウ。予告は良い感じだが、監督が最近パッとしないガイ・リッチーだからなあ……。最近って言うか、デビュー作以外は?だから心配。アクション満載で、銃撃戦もたくさんある模様。笑いもあって、わりとオーソドックスな作りになっているらしい。期待しても良いのか。


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