Taken


2009年8月23日(日)「96時間」

TAKEN・2008・仏・1時間33分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35、一部デジタル、Genesis)/ドルビーデジタル、dts

(仏-12指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/96hours/
(音に注意、全国の劇場案内もあリ)

ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)は引退したものの、元CIAの優秀なエイジェントで、今は昔の仲間と芸能人のセキュリティ・ガードなどをやって暮らしていた。そして1人娘のキム(マギー・グレイス)は、離婚した元妻のレノーア(ファムケ・ヤンセン)に引き取られ、再婚相手の富豪スチュアート(ザンダー・バークレイ)の元で何不自由なく育てらた。そんなある日、17歳の誕生日に女友達のアマンダ(ケイティ・キャシディ)とパリに美術館巡りに行きたいと言い出す。ブライアンは危険だからと反対だったが、娘に甘いレノーアに説得され、しぶしぶ書類にサインする。ところが、娘たち2人はパリに着いたその日に何者かに拉致され、行方不明となる。たまたま誘拐のときに娘と携帯電話で話していたブライアンは、何でも良いから眼にしたものを言えと伝え、それを手がかりに捜査を始める。

75点

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 リュック・ベッソンの製作・脚本作品はここのところあまり面白くないものが多かったが、本作は良かった。とにかく父親の娘を思う気持ちが強く伝わってきた。アクション満載でありながら、セリフとして言うだけではなくアクションの中でドラマが描かれている。

 犯人に対して、今止めれば許してやるが、やめないなら必ず追いつめて殺すと、宣言する。CIAで得たコネ、知識、技術を総動員して、ギャング組織にたった1人で挑んでいく。まさにワン・マン・アーミー。決して容赦はしない。この痛快さ。かなり残酷であり、非常すぎる感じもあるが、許せる範囲。この微妙なラインもうまい。

 ギャングがアルバニア系で、若い女性を拉致して娼婦にしたり売り飛ばしたりしているとか、闇の世界では処女が世界の大富豪たちのオークションにかけられていたり、恐ろしい世界が描かれている。それだけでもショッキング。

 そして工作員のプロのテクニック。格闘技、侵入、追跡、分析、射撃、ドライビング・テクニックなど、説得の力がある。まあ射撃はセンター・マスにダブル・タップ、そしてヘッド・ショットと決めてくれたらなお良かったのに。映画上の演出ということもあるからなあ。とにかく本物のプロらしく見えることが肝心。成功している。ナイフを首に当てて娘を人質にしていても、相手がしゃべったときに躊躇なくトリガーを引く。これは「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・独/米)と一緒。参考にしたのではないだろうか。

 主演のリーアム・ニーソンは「シンドラーのリスト」(Schindlr's List・1993・米)が有名だが、ほかにスコットランドの英雄を描いた「ロブ・ロイ/ロマンに生きた男」(Rob Roy・1995・米)やアイルランドの英雄を描いた「マイケル・コリンズ」(Michael Collins・1996・英ほか)、名作の映画化「レ・ミゼラブル」(Les miserables・1998・)といった割と暗い作品が多い印象。日本劇場未公開だが、やはりとことん追跡して復讐を果たすという西部劇「セラフィム・フォールズ」(Seraphim Falls・2006・米)でもいい味を出していた。その重さというか暗さが本作で生きている。自分の銃は持っていないが、奪いとってベレッタM92、P226、ハンドガードを外したMP5Kなどを使う。

 離婚した元妻のレノーアを演じたのはファムケ・ヤンセン。仕事人間の前夫をまったく信じていない感じがいい。そのため命をかけてブライアンが娘を助け出したときのカタルシスが大きい。「007/ゴールデンアイ」(GoldenEye・1995・英/米)の女殺し屋、「パラサイト」(The Faculty・1998・米)の魅力的な教師、「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)のヒロイン、「X-メン」(X-Men・2000・加/米)シリーズのヒロイン、と正・悪どちらも演じられる美女。ただ本作では彼女の良さは出ていないのではないだろうか。

 新しい夫スチュアートを演じたのはザンダー・バークレイ。TVの「24」にも出ていたが、結構悪役が多い人。映画では「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgement Day・1991・)でジョン・コナーの育ての親を演じていた。

 娘のキムを演じたのはマギー・グレイス。本作では世間知らずのお嬢様だが、TVドラマの「LOST」で異常な兄弟愛の姉シャノンを好演していた人。もとは金髪で蠱惑的な感じだが、本作では黒髪に染め、まったく印象が違う。でも26歳だし17歳の役はどうなんだろう。

 フランスの諜報員らしいジャン=クロードを演じたのはオリヴィエ・ラブルタン。フランスの人なので日本公開された作品は少ないようだが、メジャーなところではリュック・ベッソン監督の「ジャンヌ・ダルク」(The Messenger: The Story of Joan of Arc・1999・仏)に出ていたらしい。本作ではハウス・プロテクション用に引き出しにP239を持っている。

 銃はほかに、アラブの富豪のボディ・ガードがSIGザウエルのGSRを使っていた。

 脚本はリュック・ベッソンとロバート・マーク・ケイメンの2人。ロバート・マーク・ケイメンは1997年あたりからリュック・ベッソンとの仕事が多いようだが、古くはトム・クルーズの出た「タップス」(Taps・1981・米)、伝説の空手映画「ベストキッド」(The Karate Kid・1984・米)シリーズ、「リーサル・ウェポン3」(Leathal Weapon 3・1992・米)なども手がけている。その辺のうまさが本作で生きてきたか。

 監督はピエール・モレル。もとは撮影監督で、リュック・ベッソン作品に関わってきた。監督デビューは面白かった隔離地区へ潜入する捜査官を描いた「アルティメット」(Banlieue 13・2004・仏)。本作が2本目になる。次作も期待だ。

 良くわからないのはタイトル。現代はTakenだから連れて行かれた、拉致・誘拐ということだろう。人身売買事件の場合、誘拐から96時間以上立つと迷宮入りになるケースが多いということから来ているようだが、これはアメリカのTVドラマ「WITHOUT TRACE/FBI失踪者を追え!」から来ている感じがしないでもない。それを大ヒットしたエディ・マーフィの「48時間」(48 HRS.・1982・米)に引っかけたのだろう。映画配給会社のネーミングはこういうものが多い。残念。

 コピー防止のドットが目立っていたのが残念。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、55分前くらいに着いたら中高年が6人。女性は2人。50分前に10人くらいになったところで係の人が来て整列。日差しの強い日だったのに、日の当たっている大通りに面した方へ列を曲げた。中高年が多いのに、熱中症になったらどうするんだろう。路地側の日陰の方に曲げればいいのに。

 開場したのは25分前くらいになってから。この時点で50人以上か。前売り券も当日券との引き替えが必要な上、座席予約もできるので、窓口の処理はとても時間がかかる。

 場内に入ると、なぜか真ん中当たりに照明が追加されていて、これがまぶしい。じゃま。なぜ今までのままではダメだったんだろう。つまずく人がいたのだろうか。

 最終的に400席に7割くらいの入り。なかなかいい線ではないだろうか。

 気になった予告編は……TOHOシネマズでは上映前に「紙兎ロペ」というらしいアニメのようなものが上映される。好きな人もいるらしいが。ボクはどうにもピンとこなかった。子犬の映像でも流してくれた方が良かったなあ。

 松本清張原作の「ゼロの焦点」は、まだティーザーということでさっぱり内容はわからない。ただ古い話で暗いということだけはわかった。山崎豊子原作の「沈まぬ太陽」も予告からは何もわからないが、画質が良いことだけはわかった。

 シリーズ第4弾「ワイルド・スピードMAX」はヴィン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースターの主要キャストが復活。まるで正式な「2」のような作り。アクションも満載でカッコイイ。期待してしまう。

 X-メンシリーズ最新作「ウルヴァリン」も、画質はいいし、驚異の映像満載、アクションたっぷりで期待大。上下マスクの「サブウェイ123」もリメイクとは言え、デンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタの激突が面白そうで、オリジナル版とは違う展開になりそうで、興味がわく。

 久々のサンドラ・ブロック作品という感じのロマンチック・コメディ、上下マスクの「あなたは私の婿になる」は、国外退去を逃れるため部下と偽装結婚するやり手女の話らしい。しかもアラスカに飛ばされる。おもしろいか、はずすか。同様にハイ・ミスTVプロデューサーと恋愛カウンセラーのロマンチック・コメディというどこかで聞いたような「男と女の不都合な真実」は、ヘンなタイトルだが「やりたい」という話らしい。R-15+の指定。

 予告が終わっても、まだまだ人が入ってきていた。


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