Le Transporteur 3


2009年8月22日(土)「トランスポーター3 アンリミテッド」

LE TRANSPORTEUR 3・2008・仏・1時間43分(IMDbでは104分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(仏U指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://tp3.asmik-ace.co.jp/
(音に注意、全国の劇場案内もあリ)

運び屋のフランク(ジェイソン・ステーサム)が眼をさますと腕に特殊なブレスレットをはめられていた。車から離れると爆発するという。依頼人はジョンソンと名乗る男(ロバート・ネッパー)、非常に残忍な男で、部下でも平気で射殺してしまう。依頼品は赤い代物だが、同様に特殊ブレスレットをはめられた赤毛の女ヴァレンティーナ(ナタリア・ルダコーワ)と一緒に行かなければならない。断ることができずとりあえず出発するのだが……。

75点

1つ前へ一覧へ次へ
 奇しくも同時期公開となったリュック・ベッソン製作・脚本作品。アクション満載で、笑いも、ハラハラドキドキも、ロマンスもあって、楽しめる。後味も良いし、デート・ムービーとしても良いかも。

 ただ、ストーリーにヒネリはない。だいたいストーリーを楽しむものではないだろう。気になったのは、ヒロインはなぜ状況を最初に説明しなかったのかということ。どうにも、単純なストーリーを最後まで持たせるための仕掛けとしか思えない。そこが残念。最初からフランクにちゃんと状況を説明しても何の不都合もなかったはず。この辺がリュック・ベッソン脚本というところか。

 とにかくスゴイのはジェイソン・ステーサムの鍛え上げられたムキムキ・ボディと超絶アクション。1対多数の格闘戦は見応えたっぷり。鮮やかでスピーディで見事。そして悪役が徹底的に憎たらしいこと。容赦なく地獄へ突き落としてやりたくなる。これで充分。ストーリーを楽しむのではなく、高速鉄道に乗ってその乗り心地や景色を楽しむタイプの映画。

 ジェイソン・ステーサムは最近映画に出まくり。超売れっ子。つい最近リメイクSFアクション「デス・レース」(Death Race・2008・米/独/英)や実話をベースにした「バンク・ジョブ」(The Bank Job・2008・英)に出ていたばかり。傑作「アドレナリン」(Crank・2006・英/米)の続編「アドレナリン:ハイ・ボルテージ」の公開も控えているし、撮影中やプリ・プロ、ポス・プロに入った作品が5〜6本もある。けっして甘い二枚目ではないし、頭も薄くなりつつあるが、独特の魅力に溢れている。にじみでる人柄のようなものが受けているのだろう。その意味で本作の役はピッタリ。チャリで車を追いかけるところがまたスゴイ。

 ヒロインはソ連生まれのナターリア・ルダコワ。最初は顔ばかりか体までソバカスだらけでヒロインにはどうかと思ったが、見ていく内にかわいくキレイに見えてくる。なかなか魅力的な女優さんだ。リュック・ベッソンがNYのヘア・サロンで見つけて6ヵ月の演技レッスンの後、本作でデビューすることになったらしい。まあ、言ってみればミラ・ジョボヴィッチ系ということか。ミラはウクライナだそうだが。リュック・ベッソン好みの女性。今後の活躍に期待したい。なぜか首に「安」のイレズミ。

 憎たらしいギャングのボスは、こういう役をやらせたら天下一品のロバート・ネッパー。日本ではTVドラマ「プリズン・ブレーク」(ファースト・シーズンはそこそこ面白かった)のティーバッグを演じていた人。吹替の岩本規夫の絶妙な嫌らしい感じがまたピッタリで、より憎たらしさが倍増していた。TVが中心であまり映画は出ていないようだが、今後もガンガン出て欲しい。最近では「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)や残念なリメイクSF「地球が静止する日」(The Day the Earth Stood Still・2008・米/加)に出ていた。使っていたのはキンバー系のガバメントのカスタムかと思ったら、パラ・オードナンスらしい。

 フランスの刑事タルコニは引き続きフランソワ・ベルレアン。フランスのTVや映画で活躍しているため、あまりなじみがない。ボクが見た中ではホラーの「赤ずきんの森」(Promenons-Nous Dans Les Bois・2000・仏)や「シックス・パック」(Six-Pack・2000・仏)。「ドストエフスキーを読んだときに思った。ロシア人はいつ笑うんだ」というセリフが笑わせてくれる。グルーミー、ドゥーミイ(字幕は陰々滅々)だと。

 ゲスト出演っぽいのはK-1ファイターのセーム・シュルト。3タイムズ・チャンビオン。身長が212cももあるので、ジェイソン・ステーサムと並ぶと違う種族のようだ。この闘いは見物。

 脚本は「96時間」(Taken・2008・仏)と同じリュック・ベッソンとロバート・マーク・ケイメンの2人。

 監督はオリヴィエ・メガトン。メガトンとはスゴイ名前だがTVなどで活躍、「ヒットマン」の第2版監督を経て本作を任せられたらしい。手堅くうまい演出だと思う。ちょっと格闘シーンのカットが細かすぎて、すごさが伝わらない感はあるが。

 そのアクション・シーンの武道指導を務めたのが、世界的な殺陣師コーリー・ユン。本作のクレジットでも始まってすぐに大きく出る。それほど重要なパートを締めている。「マトリックス」(The Matrix・1999・米)シリーズのユエン・ウーピンと並ぶ殺陣師だ。最近ではチェ・ジヒョンのファンタジー・アクション「ラスト・ブラッド」(Blood: The Last Vampire・2008・香港ほか)や、ジョン・ウーの「レッドクリフ」(Chi bi・2008・中)を手がけている。ジャケットやシャツを使った殺陣はみごとというほかない。

 ほかにギャングたちが使うのは、SIG SG551、M4A1カービン、MP5、USPなど。S&WのM500もあったような気がしたが、見間違いか。

 公開9日目の2回目、銀座の劇場は全席指定で、朝に座席を確保しておいて15分前くらいに到着。すでに入れ替えになっていた。下は小学生くらいから、上は高齢者までかなり幅広いが、メインは中高年。男女比は半々くらいだった。最終的に360席に8割くらいの入りはさすが人気シリーズ。

 チャイムが鳴ってアナウンスが流れ、カーテンが左右に開いて始まった予告で気になったのは、「笑う警官」はマルティン・ベックの原作かと思ったら、佐々木譲の原作らしい。角川春樹映画で、警察組織対警察の話らしいが、ティーザーなのでほとんど不明。SITも出るらしい。

 東野圭吾原作の「さまよう刃」は少年犯罪を描いたものらしい。寺尾聰なので「半落ち」と同じようなイメージ。泣かすようだ。

 ゲキ×シネ「五右衛門ロック」は映画館で見るお芝居(演劇)ということらしい。生でない分格安と。

 スクリーンが左右に広がって、本編の上映前に日本語による「トランスポーター」のマニュアル上映。前2作のおさらいと、運び屋のフランクのルール説明があって、盗撮禁止CMのあと場内が暗くなり本編へ。


1つ前へ一覧へ次へ