The Good, the Bad, the Weired


2009年8月29日(土)「GOOD BAD WEIRED グッド・バッド・ウィアード」

THE GOOD, THE BAD, THE WEIRED・2008・韓・2時間09分(IMDbではカンヌ版120分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/シネスコ・サイズ(マスク、Arri)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(韓15指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.gbw.jp/
(音に注意、全国の劇場案内もあリ)

1930年代、日本軍統治時代の中国・満州。中国人、韓国人、日本人など様々な国の人々が入り乱れ、日本軍、軍属、馬賊、独立軍、闇市のギャングなどが跋扈する無法地帯。ある男が馬賊のボス、パク・チャンイ(イ・ビョンホン)に、日本軍属の金丸に届けて欲しいとある地図を渡す。その一方で、パク・チャンイに金丸が乗る列車を襲いそれを奪ってくるように依頼する。ところが、その列車を1人の強盗、ユン・テグ(ソン・ガンホ)が一足早く襲い、金品のほかに金丸からその地図まで奪ってしまう。そこへパク・チャンイの馬賊の一団が襲いかかるが、列車には賞金稼ぎのパク・ドウォン(チョン・ウソン)も乗っており、すぐに迎撃態勢を取る。その混乱に乗じてユン・テグは逃げ出すが……。

78点

1つ前へ一覧へ次へ
 冒頭に“Western by Kim Ji-woon”(名前は記憶があやふや)と出る。つまり、舞台、設定を変えた西部劇というわけ。これがラストにも出る。念押しか。使われている曲も、キャストなどの文字の書体までもウエスタン調。もちろんハングルではなく、すべて英語表記。舞台は1930年代の満州だが、間違いなくこれはマカロニ・ウエスタン系の無国籍西部劇だ。しかも血まみれ。カメラにまで血糊が飛ぶ。

 一言で言えば、活劇、それも大冒険活劇というやつ。面白い。そしてスゴイ。こういう映画を作れるところが韓国映画界の懐の深さ。日本の西部劇はどうしても「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007・日)のように義理人情のウェットなというか時代劇的なものになってしまい、冒険活劇にならない。かろうじて「独立愚連隊」(1959・日)や「EAST MEETS WEST」(1995・日)の岡本喜八作品くらいがそう呼べるのではないだろうか。

 ただ、義理人情がないと物足りないという人もいるわけで、そういう人には本作は向かない。面白くないだろう。

 ガン・アクション、そしてアクロバティックな殺陣(スターにこんなことをさせるなんて!)、機関車、馬、ギャングに、賞金稼ぎ、インディアンに相当する馬賊、メキシコ軍のような日本軍……帽子を撃つお約束も。足りないのはシェリフと美女か。

 グッドの賞金稼ぎパク・ドウォンを演じたのはチョン・ウソン。「私の頭の中の消しゴム」(A Moment to Remember・2004・韓)が日本でもヒットし、広く知られるようになった人。オランダが舞台のアクション「デイジー」(Daisy・2006・韓/香)での優しい殺し屋が光っていた。モデル出身というだけあって、とにかく美形。水平二連ショットガンとマーリン・レバー・アクション・ライフル、コルト・オフィシャル・ポリスかM1917リボルバーらしいピストルを使う。マーリンはなんとスピン・コックして見せるからかなり特訓したのだろう。

 バッドの馬賊パク・チャンイを演じたのはイ・ビョンホン。まるで雰囲気は「レッド・サン」(Soleil Rouge・1971・仏/伊/西)のアラン・ドロンそのまま。カッコイイ。ひょっとしたら、この人は韓国のアラン・ドロンなのかもしれない。悪党も正義の味方も演じるクールな二枚目。恋愛ものが多いのも似ている気がする。つい最近「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」(I come with the Rain・2009・仏)でキムタクと共演している。本作の監督キム・ジウンとは強烈なヤクザ映画「甘い人生」(A Bitter Sweet Life・2005・韓)で仕事をしている。日本で有名になったのは大ヒット映画「JSA」(JSA: Joint Security Area・2000・韓)からではなかっただろうか。「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of Cobra ・2009・米)は日本人みたいな白ニンジャ役で中途半端だったけど。使っていたのはイギリスのウェブリー&スコットのMk VI(マーク6)リボルバーだったような気がする。公式サイトではMkIV(マーク4)と書いてあるが……。ほかにモーゼル1898ライフルや、MP18か28xブマシンガンも使う。

 ウィアードの強盗ユン・テグを演じたのはソン・ガンホ。どちらかと言えばコミカルな役が多い人だが、シリアスな役、怖い役も行ける。ボクが最初にソン・ガンホを見たのは、日本でリメイクもされた怖いコメディ「クワイエット・ファミリー」(The Quiet Family・1998・韓)。実はこの監督が本作の監督キム・ジウンだ。話題の映画「シュリ」(Swiri・1999・韓)、「JSA」にも出ている。スリラーの「南極日誌」(Antarctic Journal・2005・韓)、モンスター映画の「グエムル ―漢江の怪物―」(The Host・2006・韓)でも活躍している。使っていたのはショルダー・ホルスターに入れた2挺のワルサーP38。

 日本軍の石原大佐を白竜が演じていたが、ほんのちょっとだけでゲスト出演といった感じ。ほとんどVシネのヤクザ役が定番といったイメージだが、古くさい感じの空手映画「黒帯」(2006・日)では日本軍の憲兵を演じていたから、その流れか。当然使っていたのは十四年式拳銃。

 脚本は監督のキム・ジウンとキム・ミンスク。キム・ミンスクはほかに「私の小さなピアニスト」(For Horowitz・2006・韓)を書いているらしいが見ていないので何とも言えない。

 キム・ジウンは監督と脚本を担当。だいたいすべて脚本も監督も担当している人で、デビュー作はブラック・コメディの「クワイエット・ファミリー」。次にソン・ガンホがプロレスラーを演じた「反則王」(The Foul King・2000・韓)、気持ち悪くなるほど怖いホラー「箪笥」(A Tale of Two Sisters・2003・韓)、そしてイ・ビョンホンのヤクザ・アクション「甘い人生」。どれも、徹底して描く姿勢が伺える。そこまで、ということろをもう一歩踏み込む。

 ほかに出ていた銃器では、モーゼル・ミリタリー、ロシアのモシン・ナガン・ライフル、日本軍のホッパー式の十一年式軽機関銃、九二式重機関銃、など。大砲は実弾を撃ったのかちゃんと後座していた。銃声はサラウンドで、迫力も充分。素晴らしかった。

 エンド・ロールの横にメイキングの写真が出て、なんと危険なロープで移動するスタントもスターが自身でやっていることがわかる。すごいなあ。ハリウッドでは絶対にあり得ないだろう。しかも、みんなジャッキー・チェンじゃないわけだから。

 公開初日の初回、前日に座席を確保しておいて、20分前くらいに着いたらまだ開場していなかった。9Fのせまいロビーで待つことに。イスが少なく、座ることもできない。10分前にようやく開場、指定の劇場へ。

 最終的に253席に8割くらいの入り。やはり韓流ということでか、オバサンが異常に多い。たぶん6割以上。若いカップルも少しいたが、ほぼ中高年。

 5分くらい前から明るいままCMと案内を上映。オバサンはペチャペチャとうるさい。ギリギリまでしゃべっている。「スミ子」というマナーのアニメは意外に面白かった。

 ほぼ暗くなって始まった予告で気になったのは……韓国のロマンチック・コメディ「甘いウソ」は、絵に描いたような美男美女で、なかなか面白そう。

 なぜ映画なのかわからないが、矢沢永吉のドキュメンタリー「ROCK EIKICHI YAZAWA」は、やっぱり曲が良い。オジサン的には昔の曲が。

 実在の結婚詐欺師を描いた「クヒオ大佐」は、面白いんだろうけれど、どうにも居心地の悪い感じがした。なぜだろう。

 モーション・キャプチャーしたらしい3D-CGの人体解剖人形みたいなのが踊る「I LOVE SCIENCE」って何なんだろう。全く不明。奇をてらって、という感じがプンプンだが。


1つ前へ一覧へ次へ