Go Fast


2009年9月1日(火)「ゴー・ファースト 潜入捜査官」

GO FAST・2008・仏・1時間29分

日本語字幕:手書き書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(表記なし)/表記なし、IMDbではドルビーデジタル、dts



公式サイト
http://gofast.asmik-ace.co.jp/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

宝石強盗団の捜査で潜入捜査を行っていたパリ警視庁BRI(探索出動班)のマレク(ロシュディ・ゼム)は、続く麻薬捜査で現場を外され、盗聴器のアラビア語担当となる。そしてその捜査で現場にいた上司で友人の刑事ジャン・ドー(オリヴィエ・グルメ)のほか2名の刑事が殉職し復讐を誓うが、新しい上司から休暇を取るように命令される。そんなとき、モロッコの麻薬をパリ経由で全ヨーロッパに流している麻薬組織に対するスペイン、フランス、アメリカの合同捜査チームは、組織が麻薬輸送のドライバーを捜しているという情報をつかむ。そこで宝石強盗団の逃亡犯として知られているマレクを潜入捜査官として採用し、特殊介入部隊RAIDの特訓を経て、組織に接近させる。

71点

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 うーん、FASTは「ファースト」じゃなくて「ファスト」じゃないかなあ。「ファースト」だったらFIRSTなんじゃないの? だって「ファースト・キッチン」はFirst Kitchenでしょ。「ゴー・ファースト」だったら、「最初に行け」ってことになっちゃうんじゃない。それともフランス語訛りか。

 なんと、お話は実話に基づいているんだとか。だからリュック・ベッソン印でもちょっと印象が違うんだ。実話だけあってかなり怖い話なのだが、いかんせん短い。やっぱりもっとじっくり描き込んで1時間45分とか2時間くらいの長さにすれば良かったのに。これではあまりに安直に解決してしまう。もっと人間が描けたのでは。潜入捜査ならそこが興味深いはずなのに。決して出来が悪くはないが、浅い。掘り下げ不足。そこがリュック・ベッソン印か。

 といっても、よくチラシを見るとリュック・ベッソンのあとに小さく「率いるヨーロッパ・コープが贈る」とある。調べたら、リュック・ベッソンの会社が手がけたということで、プロデュースにも脚本にもリュック・ベッソンはクレジットされていなかった。なるほど。そのためなのか低予算のようで、しかし路線としてはリアル指向。特殊部隊などいかにもそれらしい。そして恐ろしい麻薬ギャングの実態。

 「ゴー・ファスト」はモロッコ産の麻薬をもの凄いスピードで、スペイン南部のマラガからフランスのパリまで運ぶミッションのことらしい。そもそもは麻薬捜査班が麻薬を運ぶギャングたちに対して付けた言葉なんだとか。

 留置場に入れられた男が「弁護士を呼んでくれ」というと警官が一言「ここはアメリカか」。笑った。フランスは犯罪者に厳しいらしい。犯罪者に対する毅然とした態度が頼もしさを与えてくれるし、プロッぽい。

 実は正体はわからないが、アメリカの潜入捜査官も入っていて、合い言葉は「ダーティ・ハリー気取りか」というのが笑わせる。そして潜入捜査官となるため、主人公が特殊介入部隊RAIDの特訓を受けるところも興味深い。車の運転、射撃、水泳、格闘技、早朝・深夜の襲撃……などなど。当然すべてをこなせなければ、現場で生き残れないだろう。どの程度までリアルなのかわからないが、説得力はある。ただ描き方が浅い。ひとつ気になったのは、「オレは銃に装填しない」とか行って、チャンバーに弾を送り込んでいないこと。これで銃を奪われたときに命を救われることになるわけだが、はたして正しい選択なのか。いざというとき装填してから撃っていたのでは間に合わない。プロとしてどうだろう。

 主演はフランス生まれのロシュディ・ゼム。ちょっとアラブ系の血が入っているらしい。独特のストイックな面構え。日本ではあまり馴染みがないと思うが、「あるいは裏切りという名の犬」(36 Quai Des Orfevers・2004・仏)に出ていたらしい。使っていたのはP228らしいオートマチック。

 美人の斥候(ナビ先導車ドライバー)グラディスを演じたのは、カタリーナ・ドニ。リュック・ベッソン製作・脚本のがっかりムービー「TAXi4」(TAXI 4・2007・仏)に出ていたらしい。映画は本作で2本目。使っていたのはミニ・ウージー。胸の大きく開いたドレスを着ている。今後の活躍に期待したい。

 あぶないヤクの売人リュシアンを演じていたのはジル・ミラン。いかにも犯罪者のような顔をしていて怖い。「TAXi4」や同じくリュック・ベッソン監督・製作・脚本の「アンジェラ」(Angel-A・2005・仏)にも出ていたらしい。

 脚本は現役のフランス警察官でもある作家のジャン=マリー・スヴィラ、「TAXi」シリーズのサミー・ナセルの弟ビビ・ナセリ、プロデューサーでもあるエマニュエル・プロヴォの3人。リアルだし緊張感もあるのに、これだけの人が関わっていながらこの浅さが惜しい。ビビ・ナセリはほかに面白かった肉体派アクション「アルティメット」(Banlieue 13・2004・仏)も書いている。エマニュエル・プロヴォは「アーサーとミニモイの不思議な国」(Arthur et Les Minimoys・2006・仏)もプロデュースしているのだとか。

 監督はオリヴィエ・ヴァン・ホーフスタッド。劇場長編映画は本作で2本目らしいが、日本公開されたのは初めて。なかなかいいのではないだろうか。ただ、手持ちカメラが多すぎる気がする。やりたいならビスタでやれ。シネスコでやられると観客は酔う。この辺が慣れていないところだろう。シネスコは早すぎたか。

 ほかに使われている銃はUSP、MP5、ベレッタM92、M4A1カービンなど。RAIDはG36Cを使用。だいたいヨーロッパ映画はそうだが、銃声は大きく、鋭く怖い。逮捕には通常の手錠ではなく、ナイロン手錠のタイラップを使っていた。

 公開4日目、レイトショー1回だけの公開なので平日に行くと、なんと1日は映画サービス・デイで当日料金1,000円で見られると言うことで大混雑。普段から客の流れの悪い新宿の劇場は、9回に受付があるため、小さなエレベーターしかない1階に長蛇の列。ビルを出て道路まで数十人の行列。途中で嫌気が差して帰る人もいたほど。入る方もこうだが、映画を見て帰る方も行列。なにしろ小さなエレベーターしかない。ひどい設計ミス。ビルの下、エレベーター前に係員を配置すべきだろう。それすらしていない。

 どうにかロビーにたどり着き、席を確保してロビーで待つが、ここが狭い。イスもス少ない。待つスペースなどほとんどない。なのに劇場には入れてくれない。だからここは遅れてくる人が非常に多い。これは劇場のせいでもある。

 10分前に開場し、最終的にスクリーンが近い138席に7割くらいの入りは平日としては立派かも。中年層がメインで女性は1/3ほど。若も老も少々。

 明るいまま始まった予告で気になったのは……ジム・ジャームッシュの「リミッツ・オブ・コントロール」はギター・ケースを抱えた殺し屋の話らしい。工藤夕貴も出ている。が、劇場がなあ……。新宿の劇場じゃ前売りやっていないし、劇場限定の前売りらしいし。そんなのなしだよなあ。マチネーか1日を狙うか。


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