The Taking of Pelham 123


2009年9月5日(土)「ザブウェイ123 激突」

THE TAKING OF PELHAM 123・2009・米/英・1時間45分(IMDbでは121分)

日本語字幕:手書き書体下、寺尾次郎/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision、IMDbではSuper 35、マスク)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)(一部デジタル上映)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/thetakingofpelham123/
(音に注意、全国の劇場案内もあり。入ると画面極大化)

武装した4人の男たちがNY地下鉄のペルファム123号を乗っ取り電車を停車させる。NY地下鉄のディスパッチャー(指令係)を務めるウォルター・バーガー(デンゼル・ワシントン)が止まったペルファム123号に無線で連絡を入れると、主犯の男らしいライダーと名乗る男(ジョン・トラボルタ)は、1両目だけを切り離し、NY市に1,000万ドルの身代金を用意するように要求してくる。NYPD(NY市警)は交渉人のカモネッティ警部補(ジョン・タトゥーロ)を派遣するが、ライダーはバーガー以外とは交渉しないと運転士を射殺してしまう。バーガーは仕方なく交渉の窓口になることになるが……。

72点

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 オリジナル版の「サブウェイ・パニック」(The Taking of Pelham One Two Three・1974・米)はこんな映画だったろうか。一言で言うと浅い。有名俳優が出ていなければ、なんだかTVの2時間ドラマのよう。

 オリジナル版のテーマ曲はすごく印象に残っているのだが、あまり内容を覚えていない。地下鉄公安部の警部補ウォルター・マッソーと犯人役のロバート・ショー、マーティン・バルサムのキャラが良く立っており、激突が面白かった。ハラハラドキドキした記憶がある。

 CMでやっていた「なぜ1車両だけなのか」「なぜ59分なのか」「なぜ市長なのか」「なぜ自分なのか」については、映画を見ても分からなかった。「なぜ1,000万ドルなのか」だけはわかった。連邦準備銀行がこういうケースで一度に用意できる金額が1,000万ドルなのだそうだ。ひょっとしたら、アメリカ版の121分ならこれらの疑問にも答えていたのかもしれない。しかし日本上映版は16分もカットされており、メイン・ストーリーだけで、小さなエピソードが消えてしまったのではないだろうか。

 印象もまさにその通りで、あまりにも安直で単純すぎ。今のスレた観客は、裏があるはずとかどんでん返しがあるはずと思ってしまう。撃たれたヤツが再び立ち上がってくるような。こんなに見たとおりの展開になってしまうなんて。それだったら人間ドラマなりをもっとちゃんと描いてくれないと。

 監督がトニー・スコットだからか。つい出来の悪かった「ビバリーヒルズ・コップ2」(Beverky Hills Cop II・1987・米)を思い出した。「デジャヴ」(Deja Vu・2006・米/英)くらい気合いを入れて緻密に作ってくれれば良かったのに。現金を届けるバッグの二重底に隠した銃が、PPKからカーK9に変わっちゃうんだもんなあ。完全に興ざめ。兄のリドリー・スコットはそういうことはなく、こだわりは徹底している。あるいは、ノレなかったテーマだったのかもしれない。でも、自分でプロデュースもやっているしなあ……。

 トニー・スコットはリドリー・スコットの弟で、リドリー・スコット同様CMの世界から入って、カトリープ・ドヌーヴとデヴィッド・ボウイが出た吸血鬼映画「ハンガー」(The Hunger・1983・英)で長編劇場映画デビュー。当たり外れがあって、良かった作品には「トップガン」(Top Gun・1986・米)、デンゼル・ワシントンが出た潜水艦映画「クリムゾン・タイド」(Crimson Tide・1995・米)、巻き込まれミステリー「エネミー・オブ・アメリカ」(Enemy of the State・1998・米)、ロバート・レッドフォードとビラッド・ピットの「スパイ・ゲーム」(Spy Game・2001・独/米/日/仏)、デンゼル・ワシントンがプロの技を見せる復讐アクション「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)、デンゼル・ワシントンがATF捜査官を演じたアクションSF「デジャヴ」と、3年おきくらいに面白い作品があるという感じか。それでいくと、デンゼル・ワシントンが出てれば2009年は面白い作品になるはずなのだが……。

 デンゼル・ワシントンは悪役も進んで演じる人だが、やっぱり誠実な人物を演じた方がピッタリはまる感じがするし、見ていても心地よい。この人しかこの爽やかな役柄は演じられないだろう。役者としてはいろんな役を演じたいだろうが、この人にしか演じられない役もあるのだ。悪役を演じた「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)はパッとしなかったが、良いサイドを演じた「デジャヴ」や「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)、「マイ・ボディガード」などはまさにはまっていた。彼が最後に使う銃は、現金を入れていたバッグの中に入れたPPKがカーK9に化けたもの。

 悪役のジョン・トラヴォルタは、ディスコ・キングから天使やギャング、はては女性まで演じるが、最近では悪役が多いのではないだろうか。キザなイヤらしい悪役が実にうまい。本作でも見た目だけで悪そうなキャラクターは実に怖そうではまっていた。不気味な悪役の「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米/豪)、邪か正かわからない「閉ざされた森」(Basic・2003・米/独)、特殊メイクで女性になった「ヘアースプレイ」(Hairspray・2007・米/英)など良い味を出している。使っていた銃はスライド・シルバーのP229。ノートPCはソニーのバイオ。元株屋で、セリフではハイローラーズと言っていた。

 交渉人のカモネッティ警部補はジョン・タトゥーロ。あまり出番もなく、この人でなくても良かった気はする。あまり頼りにならない感じは出ていたが、それが必要だったのかどうか。「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)シリーズのシモンズ捜査官が大きい役で、最近はあまり目立っていない感じ。ギャング映画「ミラーズ・クロッシング」(Miller's Crossing・1990・米)なんか抜群に良かったけど。

 クビになった元運転手、モーターマンことレイモスを演じたのはプエルトリコ出身のルイス・ガスマン。ごっつい顔の俳優だが、どこか憎めない感じが持ち味。刑事役が多く、「ニューオーリンズ・トライアル」(Runaway Jury・2003・米)では陪審員の1人を演じていた。

 市長を演じていたのはジェームズ・ガンドルフィーニ。どちらかというと悪役の多い人で、ショーン・ペンの政治映画「オール・ザ・キングスメン」(All the King's Men・2006・独/米)、ブラッド・ピットの「ザ・メキシカン」(The Mexican・2001・米)、ロバート・レッドフォードの「ラスト・キャッスル」(The Last Castle・2001・米)などに出ている。「クリムゾン・タイド」でデンゼル・ワシントンと、「ゲット・ショーティ」(Get Shoty・1995・米)でジョン・トラヴォルタと共演している。

 ジョン・ゴーディの原作小説を脚本化したのは、「サブウェイ・パニック」ではピーター・ストーンだったが、本作ではブライアン・ヘルゲランド。オスカー脚本賞を受賞した「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)や監督も兼ねた傑作中世物語「Rock You ![ロック・ユー]」(A Knight Tale・2001・米)、「マイ・ボディガード」などを手がけている。それで、なぜこうなってしまったのか。

 銃器はほかに、犯人たちがKG-9(TEC-9)サブマシンガン、SIG SG552、P226などを使っている。そしてアーマー・ベスト(防弾チョッキ)を着用。NYPDはグロック、ESU(緊急活動部隊)はM4A1カービン。スナイパー・ライフルはどんなライフルかよくわからなかった。ヘリはユーロコプターのものか。

 地下鉄にはデッドマンズ・スイッチというのが付いていて、運転手がいなくなっても自動で止まるようになっているらしい。そのNYの地下鉄を運営しているのがMTA(Metropolitan Transportation Authority、ニューヨーク州都市交通局)。バスも運営しているらしい。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に電車賃を掛けて確保しておき、20分前くらいに到着。15分前くらいに開場。最終的にはスクリーン大きめの157席に8割くらいの入り。中高のやや高多め。女性は1/4〜1/3くらい。「サブウェイ・パニック」を劇場で見た年代だろうか。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの超能力者の映画「PUSH 光と闇の能力者」は、なんだか「X-メン」(X-Men・2000・米)のような感じ。SFXとダコタ・ファニング、クリス・エヴァンス、カミーラ・ベルなんて人たちが出ているのが魅力か。

 3D-CGアニメでそらからハンバーガーが降ってくるのは上下マスクの「くもりときどきミートボール」。またまた話題先行で流行の3D上映で、100%子供向けって感じだったなあ。

 世界の終末を描く「2012」は監督がローランド・エメリッヒ。予告はとても面白そう。「紀元前1万年」(10,000 B.C.・2008・米/ニュージーランド)みたいにならなければ良いんだけど。あれも予告は良かったからなあ。


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