X-men Origins: Wolverine


2009年9月12日(土)「ウルヴァリン X-MEN ZERO」

X-MEN ORIGINS: WOLVERINE・2009・米・1時間48分(IMDbでは107分)

日本語字幕:手書き書体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(in Panavision、IMDbではマスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/wolverine/
(全国の劇場案内もあり)

1845年、ローガン(ヒュー・ジャックマン)は母に暴力を振るう男に対する怒りから特殊能力が覚醒し、拳から飛び出す鋭い爪でその男を殺してしまう。ところが、その男が父であり、幼なじみのビクター(リーヴ・シュレイバー)が兄であることを知る。以来、兄弟は南北戦争、第一次・第二次世界大戦、ベトナム戦争と、銃弾に貫かれても死ぬことなく、ずっと共に戦い続けてきた。次第に凶暴さを増す兄に戸惑いを覚え始めたとき、ストライカー少佐(ダニー・ヒューストン)が現れ、釈放と引き替えに特殊能力者を集めた特殊部隊を作るから参加しろという。やがてアフリカに派遣されたローガンは、特殊な隕石を手に入れるために殺人も平気で行う特殊部隊に疑問を感じ、離脱を決心する。6年後、カナダの山奥で女教師ケイラ(リン・コリンズ)と暮らしていたローガンの前にビクターが現れ、ケイラを惨殺してしまう。そこへビクターを追うストライカーも現れ、ビクターを倒すために武器を与えようと提案する。それは、ローガンの骨格にアダマンチウムを移植するというものだった。

74点

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 驚異的なCG、目を見張る超能力、ほとばしる感情……凄い映画だと思うが、裏切り、憎しみ、暴力、嘘、悪意……などネガティブなものの方が勝っていて、見終わった後、どうにも気分が落ちる。スカッとするカタルシスがない。

 話の展開はうまくできていて、みごとに「X-MEN」(X-Men・2000・加/米)へとつながっていく。なるほどと納得できるが、あまりに悲惨すぎる。罪のない人も悪人も、一体どれくらいの人が死んだのだろう。特に善意の人たちの死が辛い。そして一般人は良い人が多いのに、ミュータントは人相が悪い人が多く、どうにも敵に見えてしまう。これでヒュー・ジャックマンに爽やかさがなかったら酷く暗い映画になっていただろう。

 出てきた銃器は、アヴァンで描かれる戦争シーンで、南北戦争とWWIはわからなかったが、WWIIはトンプソンを使用、それがベトナムでM14に混じってM16ショーティになる。

 アジア系のエージェント・ゼロが使っていたのはシルバーのベレッタM92(とか思ったらタウルスPT92らしい)の2挺で、ナイジェリアでは現地軍がAKMSを使用。そしてエージェント・ゼロが乗るヘリにはミニ・ガン。ローガンを倒せるアダマンチウムを発射できるリボルバーは.44マグナムのルガー・レッドホーク。

 脚本を手がけたのは、史劇「トロイ」(Troy・2004・米/マルタ/英)やつらいファンタジー「ステイ」(Stay・2005・米)のデヴィッド・ベニオフと、大どんでん返しアクション「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米/豪)や痛快アクションの「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)のスキップ・ヴッズ。あるいはスキップ・ヴッズ1人の方が良かったのでは?

 監督は南ア出身のギャヴィン・フッド。俳優としての活躍の方が長いようだが、2006年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した「ツォツィ」(TsoTsi・2005・)を監督した人。見ていないのでなんとも言えないが、それが高く評価されて本作の抜擢となったらしい。ただ「ツォツィ」は南アフリカの過酷な現状を描いたものらしく、本作の雰囲気もそこから来ているのかもしれない。

 主演のローガン役のヒュー・ジャックマンは、アクションものが多いけれど、タフなヒーローも、甘い二枚目もいける人。IMDbの評価は低いが面白かったミステリー「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)では悪役も演じていた。今後がますます楽しみ。

 兄のビクターを演じたリーヴ・シュレイバーは、話題になったホラー「スクリーム」(Scream・1996・米)あたりから注目され、あぶない人の役の多かった気がするが、最近はもっと演技は的な扱いが多くなってきたような感じ。怖い戦争映画「ディファィアンス」(Defiance・2008・米)では頑固な次男をなかなかの名演。ラブ・ファンタジーの「ニューヨークの恋人」(Kate & Leopold・2001・米)で、ヒュー・ジャックマンと共演している。

 憎たらしいストライカー少佐を演じたのはイタリア生まれのダニー・ヒューストン。つい最近「30デイズ・ナイト」(30 Days of Night・2007・米)で、ゾンビのような吸血鬼のボスを演じていた人。結構話題作に出ている。ジョン・ヒュースト監督の息子で、姉はアンジェリカ・ヒューストン。

 恋人のケイラを演じたのはリン・コリンズ。アル・パチーノの「ヴェニスの商人」(Merchant of Venice・2004・米/伊ほか)で、美女ポーシャを演じていた人。韓国映画のハリウッド・リメイク、キアヌー・リーヴスの「イルマーレ」(The Lake House・2006・米)で、キアヌに惚れているらしい建設会社の女性を演じていた。ほかの作品ではもっと美人だと思ったが、本作では少々魅力を引き出し切れていない感じ。残念。

 日本刀を背中に背負って銃弾を一刀両断にしてしまうミュータント、ウェイドを演じたのは、実に整った二枚目のライアン・レイノルズ。「ブレイド3」(Blade: Trinity・2004・米)でジェシカ・ビールと共にブレードを助ける役で注目を集め、とんでもない群像活劇「スモーキン・エース暗殺者がいっぱい」(Smo'kin Aces・2006・米)ではFBI捜査官を演じていた。近日公開の「あなたは私の婿になる」でサンドラ・ブロックの相手役を演じている。エンド・クレジットが終わった後に、実は……。ちなみに、美人女優のスカーレット・ヨハンソンの旦那。

 電流をコントロールできるミュータント、ブラッドリーを演じていたのは、人気TVシリーズ「LOST」のジャンキーのミュージシャン、チャーリーを演じているドミニク・モナハン。今後、もっと映画にも出ていくのだろうか。「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)シリーズで、ホビット族のメリーを演じていた人。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は前日に座席を確保しておいて、20分前くらいに到着。15分前くらいに開場。本編が始まってからも人が入ってきたので、最終的な入場者数はわからないが、暗くなる前では232席の4.5割くらいが埋まっていた。なので5〜5.5割くらいはいったかもしれない。20代くらいまでの若い人は1/3くらい、あとは中高年。女性は1/5ほど。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「PUSH 光と闇の能力者」は長いバージョンの上映。スクリーンが左右に広がってシネスコになり、エンパイア・ステート・ビルのエレベーターの最上階の先に空中の城が現れる「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」はまだ日本語サイトがない模様。内容もさっぱりわからない。

 さらに、シネスコで車いすの男が現れる予告編は、なんだかすべて3D-CGで描かれたような印象のSFアクションらしい映画は「アバター」。絵はとにかく凄いが、どうにもすべてCGっぽい。キャメロンもロバート・ゼメキスになってしまうのか。3D上映もあるらしい。うむむ……。

 アクション・シーンなどで、コピー防止ドットがちょっと目立っていたのは残念。それと、若い頃のチャールズ・エグゼビアがヘンだったなあ。CGのような感じで、存在感がなかった。


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