ビスタ・サイズ(1.66)/ドルビーデジタル
(字幕上映もあり)
天正4年(1576年)、織田信長(椎名桔平)は安土の山を丸ごと城にするため、名だたる宮番匠(大工)たちに指図(図面)による争い(コンペ)を実施すると通達する。やがて実施された指図争いで、岡部又右衛門(西田敏行)がみごと総頭領に選ばれる。3年で完成するように命令され又右衛門は、五層の城を実現するため、又右衛門は日本一の木曽檜を手に入れるには敵の地である木曽に行かなければならないと申し出る。
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うーん、悪くないんだけれど、ドラマツルギーが古いというか、よくできた時代劇のパターンにあてはめて自動的に作ったような感じ。CGやミニチュアなどで作られた建築風景も素晴らしいのに、ちっとも新しいというか新鮮な感じがしなかった。また、城が出来ていくワクワクした感じもなく、楽しさもない。話も中途半端な感じが……。 大きな仕事で団結したり、ちょっとしたことで仲間割れが起きたり、禁忌を犯し罰が当たったり、事故で死人が出たり……感動して涙が出そうになったけれど、すべてこの手の映画に良くあるパターン。じっとりとウエット。 だいたいこれだけ苦労して造った城なら、ラストにもっとじっくり見せてくれればいいのに。NHKの特番でもCGデ再現した場内などもじっくり見せていたのに、お金を取る商業映画でそれをやらないなんて。話の軸がぶれるからか。でもお金を取って領民にも公開したとか言われているのに……。 祟りがあるとあれだけ反対した大石も、1回失敗したらその後、だれも触れないという扱い。どうしたんだろう。再チャレンジしたのか、元の場所にもどしたのか。作者は動かそうとしたことだけに興味があったらしい。すべてが、そんな風。織田信長が敵の間者に暗殺されそうになるが、襲われたことだけが触れられて、その後、背後関係の捜査が行われたのかどうかは描かれていない。そっちも重要なのではないだろうか。「次長課長」の河本準一演じる羽柴秀吉が自ら指揮をして木曽檜を運んでくるが、それだけ。前後関係はないに等しい。 出演者の中で最もはまっていてうまかったのは、織田信長を演じた椎名桔平。実に説得力があって、本当に織田信長はこんなだったのではないかと思わせてくれた。最近「レイン・フォール/雨の牙」(2008・日)や「アンフェアthe movie」(2007・日)にも出ていたが、一番良かったような気がする。「GONIN」(1995・日)というバイオレンス映画では髪を染め、とても同一人物には見えず、驚かされたことがある。悪役が多いかも。 それに引き替え酷かったのは、シーンが丸ごとなくても何の影響もない「ココリコ」遠藤章造の南蛮の男のシーン。台無し。 そして大工の市造を演じた石田卓也は悪くないのだが、あの幸薄そうなチンピラ眉毛はどうなのだろう。時代劇に全く合っていない感じ。抜群にうまかった「Sweet Rain死神の精度」(2007・日)のチンピラの役そのまんま。こういう役しかできない人か。 原作は直木賞受賞作家山本兼一の2004年の同名小説。これで松本清張賞を受賞し、直木賞候補にもなったのだとか。それがこういう内容だったのだろうか。読んでみないと何とも言えないなあ。 脚本は人気TVシリーズ「HOTEL」を手がけた横田与志。映画では「化粧師KEWAISHI」(2001・日)や「精霊流し」(2003・日)など原作ものが多いらしい。 監督はCMマンから「化粧師KEWAISHI」で監督デビューした田中光敏。次作が「精霊流し」で、3作目が本作らしい。前2作を見ていないのでなんとも。 絵は日本映画にしては色が濃いめで力があった。 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で金曜に確保。15分前くらいに着いたらすでに開場済み。中高年と言うより、ほとんど高齢者。男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。誰狙いだろう。最終的には511席の2F席なしに5割くらいの入り。2日目でこんな入りで良いのだろうか。これから増えるようにも思えないし……。それにしてもオバサンはギリギリまで話していてうるさい。せめて予告編になったら黙って欲しい。 高齢者が多いせいか、加齢臭がくさい。かなり気になった。まさか自分の匂いってことはないよなあ。 暗くなって始まった予告編は……アニメ「ワンピースフィルム・ストロングワールド」はかなり3D-CGを取り込んだ感じ。 東野圭吾のヒット作の映画化「さまよう刃」は新しいバージョンでの予告。かなりキツイ話の予感。大川隆法のアニメ「仏陀最誕」はなぜという疑問がどうしてもついてしまう。だって、なぜ? SITが登場する「笑う警官」はどうなんだろう。タイトルがなかなか出なくてイライラしたが、内容も今ひとつわからない。 |