Tajomru


2009年9月13日(日)「TAJOMARU」

2009・トライストーン・エンタテイメント/フジテレビジョン/ワーナー・ブラザース映画/講談社/博報堂DYメディアパートナーズ/シネマ・インヴェストメント・2時間11分

ビスタ・サイズ(1.85、with Panavision)/ドルビーデジタル


公式サイト
http://www.tajomaru.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

室町末期、代々、都の治安を守る管領(かんれい)職の名門、畠山家の長男・信綱(池内博之)と次男の直光(小栗旬)、そして大納言の娘・阿子(あこ)姫(柴本幸)は幼なじみとしていつも一緒だった。ある日、畠山家の家から芋を盗んだ名無しの少年(田中圭)と出くわし、気の毒に思った直光は名を桜丸と付けて自分の家臣として召し抱える。しばらくすると大納言が疫病でなくなったことから、将軍・足利義政(萩原健一)の突然の命により、阿子姫をめとり、金塊を受け継いだ方を管領とすることを言い渡される。しかし阿子姫が弟の直光のいいなずけになっていたことから、畠山家の家督と役職を失うことを恐れた兄の信綱は、桜丸にそそのかされ、力ずくで阿子姫を自分のものにしてしまう。それを桜丸から知らされた弟の直光は阿子姫を連れて逃げるが、途中で多襄丸と名乗る盗賊(松方弘樹)に襲われる。

73点

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 思っていた以上に面白かった。予告編で時代劇のイメージに合わない曲が使われていて心配があったが、ちゃんと全うに作られた時代劇だった。意外なことに本編ではB'zの曲も盗賊のバカ騒ぎシーンに使われ、不自然ではなかった

 しかも、ストーリーは二転三転し、思いがけない方向に展開していく。ラストは予想どおりの対決となるが、後味も悪くないしスッキリする。とんでもなくドロドロした話で、悲惨の極みのようなのに、それほどジメッともしすぎず、笑いも盛り込んでおり、しかもミステリーで冒険談仕立て。主演の小栗旬は一体どれほどの涙を流しているのだろう。普通の人の一生分くらいをこの映画で流したのではないだろうか。それほど泣いている。

 とにかく出演者が総て光っていた。そこが見事。キャラが立っている。みな実に見事。皆が良いというのは、やはり脚本であり、演出なのだろう。もちろん演技力もあるけれど、それを越えている感じがした。

 主演はもちろん小栗旬。TVから「ロボコン」(2003・日)の真面目クンや「あずみ」(2003・日)に出るようになり、TVの「花より男子」(2005)で人気を得て、「クローズZERO」(2007・日)で新境地(?)を開拓。

 阿子(あこ)姫役の柴本幸もなかなか良い。冷たい女なのか熱い女なのか、微妙な線が実に良い。NHKの大河ドラマ「風林火山」(2007)でメジャー・デビュー、注目されたらしい。新人とは思えない演技力。

 悪役の桜丸を演じた田中圭が実に憎たらしくて良かった。こういうキャラなのか、ピッタリはまっていた。桜丸が憎たらしくないと、この話は生きてこない。主にTVで活躍しているようだが、今後映画も増えてくるのではないだろうか。

 特に素晴らしかったのが、男色の将軍、足利義政を演じたショーケンこと萩原健一。もはや人間を越えたような怪しさで、実に不気味な感じが絶妙。うまい。この人の存在感で事件の動機に現実味が出てくる。

 物語のスパイス的な存在の都の盗賊、道兼を演じたのはやべきょうすけ。Vシネの名脇役という感じだったのが、小栗旬と共演した「クローズZERO」で新境地開拓か。本作もその路線でコミカルな悪人を気持ちよさそうに演じている。チンピラ役もはまっていたが、本作もはまっている。

 見事な脚本は市川森一と水島力也。市川森一は昔、子供たちが夢中になった「怪獣ブースカ」(1966)、「コメットさん」(1967)、「ウルトラセブン」(1967〜1968)、「怪奇大作戦」(1968)、「傷だらけの天使」(1974〜1975)、「前略おふくろさま」(1975〜1976)などを手がけた人で、映画では大林宣彦の感動の幽霊譚「異人たちとの夏」(1988・日)を手がけているベテラン。水島力也は脚本も手がけるがプロデューサーで、TVの「子連れ狼」第2期(1974)以降や、一世を風靡したアニメの「ベルサイユのばら」(1979)などを手がけている。最近では「あずみ」シリーズ、「クローズ」シリーズを手がけている。中でもボクは「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)が良かったと思う。

 出演者の個性を引き出した監督は、中野裕之。話題になった「SFサムライフィクション」(1998・日)や期待が大きかっただけにちょっと残念だった「RED SHADOW赤影」(2001・日)を手がけた人。本作とイメージがつながりにくいが、時代劇という部分でつながっているか。本作は素晴らしい。

 絵はちょっとデジタルっぽい感じがしたものの、シズル感があったと思うと古くさくなったりで画質がバラバラ。残念だった。音質はクリアーで、鳥の鳴き声など、サラウンドも効果的に使われていた。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は全席指定で、金曜に席を確保。20分前くらいに到着し、15分前くらいに入場。若い人から中高年までまんべんなくいて、男女比もほぼ半々。やや若い女性が多い感じがしたのは、小栗旬が出ているからか。最終的に全席指定の470席に4割くらいの入りはちょっと少なすぎるのでは。もっと入って良い映画だと思う。

 チャイムの後アナウンスがあって、暗くなって始まった予告編は……「さまよう刃」は新バージョンでの予告。見たいような見るのが辛いような。M・ナイト・シャマランの上下マスク「ザ・ラスト・エアベンダー」は内容はさっぱりわからないが、絵は凄い。でもシャマランだからなあ……。

 上下マスクのタイム・トラベル・ラブ・ストーリーらしい「きみがほくを見つけた日」は、なんだかとても気になる作品。これは見たいかも。

 さらに、少年の冒険ファンタジー「かいじゅうたちのいるとこころ」はねなんだか予告編を見るだけで心がほっこりしてくる感じの作品。とても気になる。キャラがかわいい。監督は「マルコヴィッチの穴」(Being John Malkovich・1999・米)のスパイク・ジョーンズ。はたして?

 タイトルがローマ字なのは、どうも製作にワーナーが名を連ね、海外での公開を意識してということのようだ。でも国内タイトルまでそうしなくても……。


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