Crossing Over


2009年9月19日(土)「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」

CROSSING OVER・2008(IMDbでは2009)・米・1時間53分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.seiginoyukue.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

I.C.E.(移民・税関捜査局)の捜査官、マックス(ハリソン・フォード)は同僚や新人からも密入国者に甘いと言われていた。今回も一斉手入れで逮捕されたメキシコの女性ミレア(アリシー・ブラガ)が不憫になり、息子を捜し出しメキシコへ送り届ける。その頃、南アフリカ出身、ミュージシャン志望のギャビン(ジム・スタージェス)はダリーン・カードを手に入れるためユダヤ教徒になろうとしていた。その恋人でオーストラリア出身、女優のクレア(アリス・イヴ)は役がもらえそうなのにビザの延長手続きがうまくいかず、コピー・ショップの店長に偽造グリーン・カードを依頼するがなかなかできてこない。そんな時、移民判定官のコール(レイ・リオッタ)の車と交通事故を起こし、事後処理のため食事に誘われ、体を許せばグリーン・カードを出そうと提案される。また、高校では敬虔なイスラム教徒の女子高生タズリマ(サマー・ビシル)が授業で「9.11」事件の論文発表で犯人を擁護するような発表をしたことから、FBIの捜査を受け、家族の不法滞在が発覚する。両親が韓国出身でアメリカ生まれの高校生ヨン(ジャスティン・チョン)は、帰化する宣誓式を間近に控えていたが、気が弱く、不良グループの誘いを断れず、強盗の手伝いをさせられようとしていた。そんな時、マックスの相棒ハミード(クリフ・カーティス)の妹が射殺される事件が起きる。

75点

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 ポール・ハギスの群像劇「クラッシュ」(Crash・2004・米/独)とほとんど同じ構成の群像劇。しかも「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)のカウンターパートのような、暗く切ない物語。重い。終わって近くのオヤジが一言。「滅入っちゃうね」。映画というか物語としては良くできていると思う。よく出来ているから感情が良く伝わってきて、気が滅入る。これを見てすぐに家に帰るのは良くない感じ。お祓いじゃないが、ネガティブな気分を追い払う何か、ゲームをするとか、おいしいものを食べるとか、楽しいおしゃべりをするとかした方が良いと思う。

 最初、不法滞在、市民権、グリーン・カードに絡むいくつものケースが提示される。一見何の関係も無かったかのようなできごとが、1つの殺人事件からつながっていき、それぞれ思いもしなかった結末を迎えてしまう。……うむむ。まったく同じではないか。ただ、すべて移民局がらみ。自由の国アメリカを目指す物語。これが辛い。

 良くできているけれど、それぞれのエピソードがどこかで聞いたような感じもする。特に韓国人の少年が不良たちに誘われて犯罪に加わってしまう話は「グラン・トリノ」(Gran Trino・2008・米)そのままではないか。

 製作・脚本・監督の3役を務めたのはウェイン・クラマー。手がけた作品に、なかなか楽しませてくれたミステリー・ホラーの「マインドハンター」(Mindhunters・2004・米ほか)の脚本や、監督・脚本を務めたサスペンス・アクション「ワイルド・バレット」(Running Scared・2006・独/米)などがある。観客を引きつけるのがうまい人なのではないかと思う。ただ本作は暗い方向へ振りすぎたかもしれない。すべての作品が味が濃い感じがする。

 メインの役となるマックスを演じたハリソン・フォードは、さすがに67歳ともなると老人の雰囲気。アクションは「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull・2008・米)が最後だろう。本作では革製ホルスターを使用。銃はわからなかった。なぜなのかタバコを吸っている。

 悪徳移民判定官のコールを演じたのはレイ・リオッタ。本当にこんな脂ぎったイヤらしい悪役がうまい。ちょっとB級が多い気はするが……この前見たのは「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2008・英ほか)だった。意外と良い役もうまくて、感動作「コリーナ、コリーナ」(Corrina, Corrina・1994・米)なんかいい雰囲気だったのに。もう少し良い役も見てみたい。

 その妻で人権弁護士デニスを演じたのはアシュレイ・ジャッド。最近見ていなかった気がするのは日本公開作品が少なかっただけではないようだ。確かに男をあさるような女を演じた「ツイステッド」(Twisted・2004・米/独)はパッとしなかった。美人なんだけどなあ。

 オーストラリア出身の女優の卵クレアを演じたの金髪美人はアリス・イヴ。イギリスのロンドン出身で、日本公開作品は少ないが、TVを中心に活躍、2007年くらいから映画の仕事が増えてきたらしい。ほぼ全裸で体当たりの演技。がんばっている。もっと日本のスクリーンにも登場して欲しい。

 その恋人のミュージシャンの卵ギャビンを演じたのは、イギリス出身のジム・スタージェス。ケヴィン・スペーシーのギャンブル映画「ラスベガスをぶっつぶせ」(21・2008・米)で人生を翻弄される大学生を演じていた人。ちょっと気弱そうな感じが実に良い。使っていたPCはMac。

 マックスの相棒ハミードを演じたのはニュージーランド出身のクリフ・カーティス。「ダイハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)でFBIの幹部を、残念だった冒険映画「紀元前1万年」(10,000 B.C.・2008・米)で主人公と一緒に旅に出る男を演じていた。マオリの血を引くそうで、独特の風貌を持っている。

 冒頭のメキシコ人不法労働者の小柄な美女を演じたのは、ブラジル出身のアリシー・ブラガ。ウィル・スミスの「アイ・アム・レジェンド」(I am legend・2007・米/豪)の女性の生き残りや、人類が総て盲目になってしまう暗い映画「ブラインドネス」(Blindness・2008・加/伯/日)の娼婦を演じていた。

 ハミードの美人の妹は、出番が少なかったが印象に残った。演じていたのはメロディ・カゾエというイラン出身の人。大きな役は本作が初めてらしい。タバコを吸う役。今後の活躍に期待したい。

 韓国人の若いストリート・ギャングが使っていた銃は、.357か.44マグナムのステンレス4インチ・リボルバー、グロック、P229など。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、50分前に着いたらすでに開場済み。当日券と交換し、エレベーターで上に上がると、すでに10〜15人くらいが入っていた。中高年というより、ほとんど高齢者。女性は5人ほど。スクリーンはシネスコで空いていて、10分前くらいからやや暗くなって案内を上映。早く開いたせいかエアコンが利いていなかった。

 最終的にオバサンがちょっと増えて、224席の8〜8.5割くらいが埋まった。これはなかなか優秀。ただこの内容なので、今後急増するとは思えない。関係者は2〜3人のようで、これくらいで良いのではないだろう。

 ほぼ暗くなりビスタにもどって始まった予告編で気になったのは……イギリスのロックの歴史を描いた「パイレーツ・ロック」はなかなか面白そう。昔BBC放送ではロックは1日45分までと決められていたらしい。ただ、タイトルを最後に出すのはやめて欲しい。覚えるのが大変。アートじゃなく予告編なんだから早く出せ。

 上下マスクの「(500)日のサマー」は、ちょっと風変わりなラブ・ストーリーで、アニメになったり、ミュージカルになったり。トムとサマーが出会ってからの500日を描くらしい。ちょっと興味がわくが、劇場がなあ。

 上下マスクの「ヴィクトリア女王 世紀の愛」は理想のカップルといわれたヴィクトリア女王とアルバート王子の愛を描いた物らしい。ヴィクトリア女王を演じるのは「サンシャイン・クリーニング」のエミリー・ブラント。

 アン・ハサウェイとジェームズ・マカヴォイのラブ・ストーリー上下マスクの「ジェイン・オースティン 秘められた恋」は、女性向きという感じ。

 スクリーンが左右に広がると、中央部分がピンあまに。そのまま本編へ。えっ、それでいの? 中央に文字が出ないとわからないレベルではあったが……どうにか途中で合ったようだった。


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