Kamui Gaiden


2009年9月21日(月)「カムイ外伝」

2009・松竹/小学館/トータル/木下工務店/ホリプロ/小学館集英社プロダクション/Yahoo!JAPAN/衛星劇場・2時間00分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(日本語字幕付き上映もあり)

公式サイト
http://www.kamuigaiden.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

17世紀の日本、まずしい村に生まれたカムイ(松山ケンイチ)は自由を得るため強くなる決心をする。やがて村を出たカムイは忍びとなるが、掟に縛られ理不尽な殺人を強いられる暮らしに嫌気が差し、自ら抜け忍となる。抜け忍は追忍によって命を奪われるのが掟。人を信じられなくなったカムイは、生きるために逃げ続けることになる。そして、ある日、カムイは松山藩にやってくる。そこで藩主、水谷軍兵衛(佐藤浩市)の愛馬の足を切り取って逃げる漁師、半兵衛(小林薫)と出会い、助ける。港町にもどると、半兵衛の家族に向かい入れられる。半兵衛は馬の蹄を削って特殊な疑似餌を作っていたのだ。漁を手伝う内、長女サヤカ(大後寿々花)はカムイに好意を寄せるようになが、母のお鹿(小雪)は抜け忍で、かつてカムイも追忍として戦った相手だったことが判明する。そんな時、サヤカに好意を寄せる若者が手配されている半兵衛を売り、藩の侍たちがやってくる。

70点

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 うーむ、なんという映画。構成も、演出も、SFXも、ワイヤーワークもまったく適切とは思えない。それぞれがかみ合っていないというか、空回りしているというか。悲惨な話なのに感情が伝わってこず、それによってせっかくの体を張った格闘シーンがアクロバットにしか見えない。それに長い。

 デジタルをフル活用したらしい忍者の超人的ジャンプも、重力を無視したまったく不自然でぎこちない動き。しかも不必要な回転まで入って、むしろ台無し、稚拙に見えてしまっている。予告は良かったのに……。

 それら忍者対忍者のも多少大げさな闘いも、リアルで本格時代劇的なものから徐々に大げさになっていって、クライマックスで少々不自然なものになるなら、感情が高まっていれば許せる。しかし、冒頭、まだ映画にも乗り込んでいない内からトンデモなものを見せられては引くしかない。

 いいのは、コントラストが強めで色が濃く美しい絵。ところが、これも後半になると南の島に移るのだが、南過ぎて日本に見えない。フィリピンかどこかのような風景。

 アクションも、よくできているのに3D-CGやワイヤー・ワークがかみ合っていないため、不自然で、刀を逆手に持つ忍者式のチャンバラが、どうにもぎこちない。

 追忍を演じたのはイーキン・チェン。日本の忍者を演じても全く違和感がなかった。言われてもわからないくらい溶け込んでいた。アフレコで日本語は流ちょうだったが、口が合わず興ざめ。これがあったせいか、ほかの人たちもアフレコで、どうにも感情移入しにくかった。イーキン・チェンと言えば「ヒロイック・デュオ 英雄捜査線」(双雄・2003・香)以後ほとんど見かけなかったので、どうしたのかと思っていたら……。

 驚いたのはミクモというくのいちの抜け忍で、演じていたのは芦名星。眉を剃り落とし、汚いカッコで、とても「シルク」(Silk・2007・加ほか)の美女には見えなかった。柔らかい感じはなく、ギスギスと尖った感じ。さすが女優。でも、あまりこの役は得ではなかったかも。

 まあ、あとはどのキャラクターもエキセントリックでわざとらしく、リアルさも存在感もなかった。

 原作は白土三平の同名漫画。映画では「ビッグコミック」に1982年に連載された「スガルの島」をベースにしているらしい。

 脚本は宮藤官九郎と崔洋一。クドカンはどちらかというとコメディ向きなのではないだろうか。本作で力が発揮できたとは思いにくい。

 監督は脚本も手がけた崔洋一。日本アカデミー賞やブルーリボン賞を獲得した「月はどっちに出ている」(1993・日)や、ボク的にはバイオレンスたっぷりのサスペンス「マークスの山」(1995・日)が強く印象に残っているが、盲導犬を描いた「クール」(2003・日)なども撮っている。どうして、その人がこんな作品を撮ってしまったのか、理解に苦しむ。

 アクション監督は「新宿インシデント」(新宿事件・2009・香)の谷垣健治。殺陣指導は「ミッドナイトイーグル」(2007・日)の高瀬将嗣。

 VFXスーパーバイザーは浅野秀二。面白かった「どろろ」(2007・日)や「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)を手がけた人だが、なぜ本作はこうなってしまうのか。こんなレベルの人ではないはずだ。よほど予算がなかったのか、監督がVFXの使い方を知らなかったのか。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は前日に予約しておいて、20分前に着いたらまだ開場しておらず、15分前頃に開場。腕が飛んだり、血が吹き出たりと、崔洋一監督らしいバイオレンス表現だが、子連れも多かった。年齢制限がないとは驚き。若い人から高齢者まで年齢層は幅広く、男女比は半々くらい。最終的に607席の4.5〜5割くらいの入りは、さすが話題作。でも伸びないのでは。

 予告で気になったのは……マイケル・ジャクソンのロンドン公演のリハーサルの模様をまとめた「THIS IS IT」は、ビデオ映像のようだったが、さすがにリハーサルでもマイケル・ジャクソンはすごい。カッコ良さと迫力は半端じゃない。10/28、世界同時公開で、2週間限定上映らしい。できるだけ最新のデジタル館で見た方が良いと思う。

 タイトルがなかなか出ないのでよくわからなかったのだが、「スノープリンス」は小山薫堂脚本のラブ・ストーリーらしい。それ以外全くわからなかった。

 「釣りバカ」は、いよいよというか、やっとというか、ついにというか、終わるらしい。


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