Crank: High Voltage


2009年9月27日(日)「アドレナリン ハイ・ボルテージ」

CRANK: HIGH VOLTAGE・2009・英/米/南ア/独・1時間36分

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/ビスタ・サイズ(1.85、デジタル、Canon & Sony)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R18+指定)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/crankhighvoltage/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

ヘリコプターから落下した殺し屋のシェブ・チェリオス(ジェイソン・ステイサム)は、車の屋根に落下し死亡したかに見えた。そこへ中国系マフィアの一団が現れ、その体を運び去る。彼らは心臓を取り出すと、かわりに人工心臓を入れた。3ヵ月後、ロサンゼルスのダウンタウンの売春宿で意識を取り戻したシェブは、次にまた別な臓器を抜かれようとしていることを知り、そこから逃走する。友人の医師ドク(ドワイト・ヨーカム)に事情を説明すると、人工心臓は臓器移植などの際に使用される一時的なもので、バッテリーで動いており2日程度しか使えない。外部バッテリーが切れると自動的に内部バッテリーに切り替わり、1時間は動くという。しかしそれも切れると心臓は止まってしまう。そうならないためには、外部バッテリーが切れたら、皮膚表面から電気を流すなどして定期的に内部バッテリーに充電しなければならないという。そして、自分の心臓をもってくれば、人工心臓と取り替えてくれると。かくして、シェブは電気で心臓を動かし続けながら、自分の心臓を奪回しなければならなくなる。

80点

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 前作どおり、なんとメチャクチャな映画。ツッコミどころ満載とか、どこかおかしいなんてそういうレベルではなく、とにかく最後まで疾走し続ける。この面白さ。ボクはツボにハマった。エロ、グロ、なんでもあり。久々に理屈抜きの爽快な映画。笑って、そしてドキドキした。なんだ、この男は! ただ、クセが強いのでイヤだという人もいるかもしれない。

 前作の面白さ、そのまんま。手抜きなく、面白かった要素を再び総て盛り込んで、もう1つの疾走する物語を巧妙に作り上げた。しかも前作のキャラクターが何人も登場し、ちゃんとつながっているのだから凄い。しかも、「1」のシーンを取り入れて、あの時の男がこいつだと見せる。見ていなければ、そんなことがあったんだろうと思うし、見ていれば、ああそういえばそんなシーンがあったと思い出す。そして観客に考えるヒマを与えずに走り出す。

 出てくるヤツはほとんどイカれたヤツばっか。まともな人間なんてほとんどいない。チャイニーズ・マフィアに、メキシカン・マフィアに、売春婦に、暴力的なゲイ、暴力的なバイカー……。原題のCRANKのとは「変人・奇人」のこと。

 殺し屋のシェブ・チェリオスを演じたのはジェイソン・ステサム。この人が出ている作品はだいたい面白い。「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)でブレイクして以後、たくさんの作品に出まくり。最近は「トランスポーター3」(Le Transporteur 3・2008・仏)や「バンク・ジョブ」(The Bank Job・2008・英)、「デス・レース」(Death Race・2008・米ほか)、に出ていたばかり。1年に3本だ。待機作品が5〜6本ある。使っていた銃は、ギャングから奪うベレッタM92FS、ジェリコ941ステンレス、スプリングフィールドXDなど。そしてマイクロUZIやMP9までぶっ放す。

 主人公の彼女、イヴは前作から引き続きエイミー・スマート。全裸になってがんばっている。最近はTVが多いようだが、つい最近キーファー・サザーランドのホラー「ミラーズ」(Mirrors・2008・米ほか)に妹役で出ていた。ほかにも出ているようだが、日本公開されていない。

 ヒステリックなきついメイクの中国系娼婦リアを演じたのは、中国出身のバイ・リン。CG漫画のような「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」(Sky Captain and the World of Tommorow・2004・米ほか)や残念な「TAXi(3)」(Taxi 3・2003・仏)などに出ている。日本公開作品は少ない。エキセントリックな演技が凄いが、普段もこんな感じなのではないかという感じがするところが凄い。KG-9(TEC-9)を2挺拳銃スタイルでぶっ放す。

 中国マフィアでチェリオスの心臓を奪うジョニーを演じたのは、アメリカ生まれのアート・シュー。普段は真面目な感じの人だが、本作では髪を染め、ピアスに無精ヒゲ、眉毛にソリを入れて、いかにもの風貌を作り出している。手術中の心臓の上にタバコの灰を落としたり、痰を吐いたりと、とんでもない悪ぶりを披露。本作が初めての大きな役のようだ。強烈で記憶に残る。

 心臓を手に入れようとした大ボス、プーン・ドンはデヴィッド・キャラダイン。「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)シリーズで健在ぶりを見せつけていたが、すでに73歳。タランティーノ製作の「ヘルライド」(Hell Ride・2008・米)にも出ていたらしいが、劇場が小さく見ていない。

 メキシカン・マフィアのボス、エル・ウロンを演じたのはクリフトン・コリンズJr.。「サンシャイン・クリーニング」(Sunshine Cleaning・2008・米)で、事件現場清掃のノウハウを教えてくれる親切な片腕の男ウィンストンを演じていた人。まったく雰囲気が違う。さすが役者。痛快作「スター・トレック」(Star Trek・2009・米)にも出ていたらしい。使っていた銃は黄金のデザート・イーグル。

 顔中イレズミの凶暴なチコを演じたのは、ジョセフ・ジュリアン・ソリア。TVの仕事が多いようで、映画の近作は「ワイルド・スピードMAX」(Fast & Furious・2009・米)にも出ているらしい。使っていた銃は.410番のショット・シェルを使う5連発のリボルバー。タウルスかと思ったら、サンダー・ファイヴらしい。たぶんスクリーン初登場では?

 前作で死んだゲイのギャングの弟という設定の、ヴィーナスを演じたのは、前作で兄を演じたエフレン・ラミレッツ。素顔は普通の二枚目だが、本作では相当のクランク。左胸に漢字の「寂」とイレズミしている。やっぱりTVの仕事が多いようで、日本公開されたものはほとんどない模様。使っていた銃はシルバーのデザート・イーグル。

 チェリオスが相談する裏社会のドクター、マイルズを演じたのはドワイト・ヨーカム。トミー・リー・ジョーンズが監督・主演した「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」(The Three Burials of Melquiades Estrada・2005・米/仏)や「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)なんかに出ている。不気味な感じがとてもグッド。

 監督・脚本は2人。マーク・ネヴェルダインとブライアン・テイラー。マークはアメリカ生まれの36歳。俳優としてキャリアをスタートさせ、前作の「アドレナリン」(Crank・2006・米)から脚本・監督へ進出したらしい。新作では「Gamer」が控えている。ブライアンはマークと一緒に「アドレナリン」の脚本・監督をしているが、その前には撮影監督を2本やっている。

 速いシャッターやワイド・レンズをうまく使い、さらにはスチル写真も取り入れるなど、MTV的な演出を取り入れている。使用しているカメラはビデオで、1部ハイビジョンも使われている。ハイビジョン・パートはさすがにフィルムと区別が付かない。ビデオを使うとカメラを動かしがちになりやすいものだが、監督2人は肝をしっかりと抑えていて、不要な手持ち撮影は一切していない。

 競馬場で、皮膚の摩擦によって静電気を起こすため、公衆の面前で彼女と交わってしまうシーンではわざとらしいボカシというかグジャクジャのラインが入り、庭の白い石膏像の股間には黒い毛糸のようなものが付けられているのがおかしかった。

 エンディングではNGカット集が流れるので、最後まで席を立たずに見た方が良い。感電シーンではスタッフが大丈夫かと聞くとジェイソン・ステサムが痛かったなんて言っている。ハリウッドでもあぶない撮影をやっているんだなあ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は前日に座席を確保しておいたものの、1階のエレベーターから混むので、25分前くらいに到着。設計が悪すぎ。エレベーターが小さすぎる上に、エレベーター・ホールも狭いから、いつも混み合って混乱している。9階の受付カウンターのあるロビーがまた狭い。ここの劇場は混んでいなくても、ほとんどの人がここで待っているので、ここもいつも混み合って混乱している。毎月1日の映画の日なんか道路まで人があふれている。新宿ピカデリーを見習え!って、こっちが先にできてたか。

 20分前くらいに開場し、場内へ。しかし、なぜ初回が午後なんだろう。この映画では人が入らないという判断か。20代くらいから中高年まで幅広いが、一番多かったのは白髪頭の人たち。女性は5人に1人くらい。大声で話すバカ女がいて、チャイルド・シートを持ってきて靴を脱ぐと足置きマットとして使っていた。最終的には148席ほぼすべて埋まった。

 予告の前に「スミ子」のアニメ。マナーを皮肉った歌を歌うのだが、これがおもしろい。笑い声も起きていた。くだらないリスのヤンキーのヤツとか鷹の爪みたいなのを流すんだったら、こっちにもっとお金を掛けた方が良いと思う。

 気になった予告編は……上下マスクの「笑う警官」は単なるミステリーというだけでなく、射殺許可が出たとか、SIT出動とか、結構アクションもあるらしい。

 同じく上下マスクの「私の中のあなた」は姉のドナーとなるために作られた妹という話らしく、辛くてみられそうにない。大声のバカ女は「これ見たい」とか言っていたが、迷惑だからオマエは来るなという感じ。

 体の左半分が人体模型のようになっている3Dのキャラクターが出てきてダンスするのは何なんだろう。一切説明もなくI LOVE SCIENCEと出るだけ。「飛び出せ!科学くん」か?! 意味不明。



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