Astro Boy


2009年10月10日(土)「ATOM アトム」

ASTRO BOY・2009・香/米/日・1時間35分

日本語字幕:手書き風細丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(IMDbではD-Cinema 3Dも)/ドルビーデジタル、dts(IMDbではSDDSも)

(米PG指定、日G指定)(日本語吹替版、一部のみ字幕版も上映)

公式サイト
http://atom.kadokawa-ent.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ロボットが人間に仕えるようになった未来社会、古くなったロボットやゴミがたまってきたため、セレブはソフィア山を中心とした一帯を空中に浮かせ移り住んだ。そしてゴミは地上に捨てるようになった。地上はゴミで溢れた。そんな頃、科学省のテンマ博士(天馬博士/声:ニコラス・ケイジ)は、エレファン博士(お茶の水博士/声:ビル・ナイ)が分離に成功したエネルギー体であるブルー・コアとレッド・コアを、軍からの援助金を得るためロボット兵器のピースキーパーに利用する実験をしようとしていた。しかし実験に立ち会った大統領再選をめざすストーン将軍(声:ドナルド・サザーランド)が強引にレッド・コアを挿入したためピースキーパーが暴走、たまたま忍び込んでいたテンマの息子トビー(飛雄/声:フレディ・ハイモア)が巻き込まれ死亡してしまう。悲しんだテンマ博士はトビーのDNAからそっくりのロボットを作り、記憶も植え込み、密かにブルー・コアを挿入し起動させる。しかしロボットが息子に似ているほど徐々に違和感を感じるようになり、ついには追い出してしまう。さらにブルー・コアを手に入れようとするストーン大統領の追っ手がかかり、トビーは地上へと逃れる。

73点

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 良くあるストーリーながら、手堅く感動的にまとめている。キャラクターもオリジナルの味を失わない程度にハリウッド化されているので、可愛さも残っていて、そんなに違和感もない。また、脇キャラが、これまたありがちだが、魅力的で主人公を際立たせるのに役立っている。デザインはアメリカでやっているようだ。ギャグも程よく盛り込まれ、ちゃんと笑える。

 ただ、子供向けということもあってが、ストーリー展開にはかなり強引なところもあり、見ている時に「なぜ」と思ってしまったのは残念。

 CGの完成度は非常に高く、キャラクター以外は写実的でとてもリアル。動きも自然で滑らかだし、布の感じ、髪の生え際、泡なども実に本物っぽい。この辺は香港パワーのレベルの高さを見せつけたという所だろうか。背景の町並みなどに中国語や香港を思わせるものが多く配置されている。山は富士山ぽかったけど。

 全体としては、正義の味方であり、人類とロボットの架け橋である「アトム」の話だが、アトム少年の成長の物語にもなっている。ただ、ストーリーは多くの名作映画のいいとこ取り。人間に消費されるロボット、ロボット同士の決闘ショーという話は「A.I.」(Artificial Intelligence: AI・2001・米)だし、孤児たちを集めてこき使う話は、「オリバー・ツイスト」(Oliver Twist・2005・英ほか)のようでもあるし、「奇跡のシンフォニー」(August Rush・2007・米)のようでもある。ゴミの山の中のロボットは「ウォーリー」(WALL E・2008・米)だし、ロボットのコアに光るエネルギー体があるのは「アイアンマン」(Iron Man・2008・米)で、ロボットの暴走は「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米/独)だ。もちろん3Dアニメ「ロボッツ」(Robots・2005・米)の要素も入っている。大型ロボットはちょっと「天空の城ラピュタ」(1986・日)のロボットに似ている気もするし。多数のロボットとの戦いはまるで「マトリックス2」(The Matrix Reloaded・2003・米/豪)のネオとエイジェント・スミスの戦いのよう。晴れた日にはメトロシティと無線がつながると、自分を捨てた両親に無線で話しかける少女って話も、どこかで聞かなかったかなあ。「オーロラの彼方へ」(Frequency・2000・)もそんな話だったし、ほかでも見た記憶が……もはやデジャヴ。

 オリジナルの声の出演は、アトムに「スパイダー・ウィックの謎」(The Spiderwick Chronicles・2008・米)のフレディ・ハイモア。テンマ博士に「ノウイング」(Knowing・2009・米/英)のニコラス・ケイジ。エレファン博士(お茶の水博士)な「アンダー・ワールド:ビギンズ」(Underworld: Rise of the Lycans・2009・米/ニュージーランド)のビル・ナイ。孤児のリーダーの少女コーラにTV「ヴェロニカ・マーズ」(Veronica Mars・2004〜2007・米)のクリスティン・ベル。ストーン将軍にTV「24」シリーズのキーファー・サザーランドの父、ドナルド・サザーランド。一言か二言だが、古い大型ロボットのゾグに「ザ・スピリット」(The Spirit・2008・米)のサミュエル・L・ジャクソン。孤児とロボットを利用している小悪党のハム・エッグは「プロデューサーズ」(The Producers・2005・米)のネイサン・レイン。キャラクターの顔はどちらかというと悪役専門の役者さんに似ていたと思うが名前を忘れてしまった。ロボット革命戦線のTVのナレーターは「ハンコック」(Hancock・・)のシャーリーズ・セロン……と、まあこの豪華さ。

 原作はもちろん日本が世界に誇る天才、手塚治虫。脚本は監督も兼ねたデビッド・バワーズとティモシー・ハリスの2人。ティモシー・ハリスは最近あまり仕事をしていなかったようだが、かつてエディ・マーフィの傑作コメディ「大逆転」(Trading Places・1983・米)や、シュワルツェ・ネッガーのあまの笑えないコメディなどを書いていた人。

 監督・脚本はデビッド・バワーズ。ずっとアニメ畑を中心に歩んできた人で、古くは「ロジャー・ラビット」(Who Framed Roger Rabbit・1988・米)に関わっている。ストーリーに関わったのは「チキンラン」(Chicken Run・2000・英)や「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」(Wallace & Gromit in The Curse of the Were-Rabbit・2005・英)、「プリンス・オブ・エジプト」(The Prince of Egypt・1998・米)、「シャーク・テイル」(Shark Tale・2004・米)など。本作はギャグも盛り込まれているが、どちらかといえばシリアス。監督としては日本未公開作品に続いて2作目。次回作も成功すればメジャー監督の仲間入りだろう。

 なんだか、コピー防止のドットがあったようだったが、気のせいか。いずれにしても、3D-CGアニメだと立体の3Dかと思ってしまいがちだが、これは普通の2Dだった。

 公開初日の、最終回、字幕版初回、新宿の劇場は朝に座席を確保していて、15分前くらいに着いたらちょうど開場したところ。なんだかついにこの劇場も飲食物の持ち込み禁止をアピールし始めた。劇場で買ったもののみ場内に持ち込んでも良いと。セコイなあ。まったくガッカリ。

 最終的には287席の4割くらいの入り。20代くらいから高齢者まで、割りとまんべんなくいた感じ。女性は若い人が多く1割くらい。時間帯のせいかカップルが多い。外人さんも日本人とのカップルで4組くらい。

 ほぼ暗くなって、予告編の前にダンテ・カーヴァーが出てきて「24」の吹替でマナーの注意。しかし携帯を平気で点灯させてるヤツはいっぱいいたけど。「風が強く吹いている」の予告がらみということらしいが、それでもマナー注意はつまらないものも多いので、悪くはない。

 上下マスクで子供とモンスターが出てきて楽しそうだったのは「かいじゅうたちのいるところ」。ただ、タイトルは早く出して欲しい。何回も書いているが、ラストに一瞬だけじゃ覚えられない。

 ジェームズ・キャメロンの上下マスク「アバター」はちょっと長いバージョンでの予告。音も凄い迫力だし、絵もキレイだが、どうにもCGショーっぽいのが気になる。という、実写じゃなくてすべてCGで作ったゲームのデモのような感じが……。まさかジェームズ・キャメロンもロバート・ゼメキスになってしまったのか。人間ができることもすべてCGでやるなんてどうかしている。違和感ありすぎ。実写じゃできないとか、違和感がないのなら、別にCGでも実写でも何でも良いけど……。正直、心配。

 3D-CGの立体アニメ「カールじいさんの空飛ぶ家」は、期待がますます高まる新バージョン。予告だけで泣かせるなあ。

 左右マスクでアナモフィック・レンズを通さない縦長の絵で盗撮防止CM。あれっ、と思っていたら中断されて左右に広がり、冒頭の製作会社のマークが0.5秒か1秒ほど欠けてスタート。そうしたら帰るとき「すみませんでした」と不手際をわびる声と共に年内使える劇場招待券を1枚もらった。これくらいの不手際なんてたいしたことないのに。これより酷くても一言の説明もお詫びもないことろなんて、いくらもあるのに。銀座の一流劇場でさえ。驚いた。最高の上映をやるというプライドか。それなのに持ち込み禁止とは、なんと不釣り合いな。


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