The Proposal


2009年10月18日(日)「あなたは私の婿になる」

THE PROPOSAL・2009・米・1時間48分

日本語字幕:手書き書体下、いずみつかさ/シネスコ・サイズ(レンズ、Hawk Scope、Moviecam)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日G指定)

公式サイト
http://www.movies.co.jp/ana-muko/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ニューヨークにある大手出版社の編集長マーガレット・テイト(サンドラ・ブロック)は、敏腕だが部下の事情などかまわず日曜でも予定を入れ、少しのミスも見逃さず厳しく追及、平気でクビにしてしまう40歳独身のキャリア・ウーマン。すべての社員から恐れられている。しかしカナダ国籍で、忙しさのためビザ更新を怠たり、しかも更新期間中に海外旅行までしたためビザの更新が認められないことになり、国外退去を命じられることに。窮余の策として、アシスタントの若手社員アンドリュー・パクストン(ライアン・レイノルズ)と結婚することになっていると移民局に申し出る。寝耳に水のアンドリューは驚くが、自分をアシスタントから編集者にしてくれるなら結婚すると約束。ところが移民局にタレコミがあり、結婚は偽装だと疑われ、調査が行われることになった。週明けに面接が行われることになり、週末、両親のいないマーガレットは結婚の報告のためアンジリューの実家、アラスカのシトカへ行くことになる。

72点

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 軽く、明るいタッチのコメディ。いつものサンドラ映画のように会話が面白く、かなり笑わせてくれる。ただ、邦題ほど軽くはなく、ちゃんと感動的なお話としてまとめられているし、プロデューサーでもあるサンドラ・ブロックは全裸になって熱演(デジタルのスタッフが多いからデジタルも使っているのかもしれないが)、熱意が伝わってくる。

 ニューヨークと人口が1万にも満たないアラスカの田舎町シトカの対比も面白い。シトカは広大な大自然に囲まれ、人々は明るくのんびりしていて、みな人が良い。しかもこの映画の設定では、シトカの町のほとんどの商店はパクストンという名前で、父親が経営している。実はアンドリューは大富豪の一人息子で、後を継がず編集者になるため単身ニューヨークに出てきたという設定。一方、マーガレットは早くに両親を亡くし、仕事一筋でひたすら突っ走ってきた。アラスカへ行ってもタイトなスーツにピンヒール。この対比も面白い。たぶんやり手の女性上司というのは「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)のイメージだろう。

 なんで普通のドラマがシネスコなのかと思ったら、舞台がシトカになると広大な大自然が展開するわけで、これを映し出すためだったのかもしれない。マスクではなく、レンズの本物のシネスコ・サイズ。白夜で水平に走る太陽は驚異的だ。

 会話が面白いので、字幕版はちょっとつらい。かといって吹替だと英語のシャレのような面白さが伝わってこない。ここが残念。そのため、実家にいる子犬がいちばん笑わせてくれた。マーガレットに名を聞いたり、姿を見ると吼えて興奮するのだ。そして、サンドラ・ブロックは、そろそろ小じわが目立ちだしたが、全裸のほかにも、自分のぺちゃぱいをギャグに使うなど、自虐ネタさえ厭わない。下ネタもかなり入っているが、それほどえげつなくはない。

 ただ、味としてはサンドラ映画の「ガンシャイ」(Gun Shy・2000・米)とか「デンジャラス・ビューティー」(Miss Congeniality・2000・米/豪)シリーズと同じ。これらが面白かったという人は本作も楽しめるはず。

 主演はもちろんプロデューサーも兼ねるサンドラ・ブロック。映画のためなら体を張って何でもやるイメージ。さすがに「スピード」(Speed・1994・米)のころの若さはなく、小じわが目立つようになってきた。ベテラン女優の貫禄さえある。すでに45歳。若い監督の作品にも進んで出演する姿勢が素晴らしい。

 共演のライアン・レイノルズは、小劇場で限定公開されたマイケル・ダグラスのスパイ・アクション・コメディ「セイブ・ザ・ワールド」(The In-Laws・2003・米/独)でマイケル・ダグラスの息子の役を演じ、ウェズリー・スナイプスのヒット・シリーズ第3作「ブレイド3」(Mlade Trinity・2004・米)でも良い印象を残した。ただ、初主演ががっかりリメイクを連発するマイケル・ベイ製作の「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・2005・米)だったため印象を悪くしたが、傑作アクション・コメディ「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・英/仏/米)のFBI捜査官役ははまっており、「ウルヴァリン X-Men Zero」(X-Men Origins: Wolverine・2009・米)では日本刀を背負ったミュータント、ウェイドを好演。スピン・アウトが作られるらしい。本作でも育ちの良い青年を好演。サンドラ・ブロックのがんばりもそうだが、この人の存在がなければこの作品は成立していなかったかもしれない。

 その母を演じたのは、メアリー・スティーンバージェン。タイム・トリップ・サスペンス「タイム・アフター・タイム」(Time After Time・1979・米)や、「バック・トゥ・ザ・フューチャーPart 3」(Back to the Future Patr III・1990・米)に西部の女教師役ででていたが、最近はジョディ・フォスターの女性版「狼よさらば」(Death Wish・1974・米)、「ブレイブワン」(The Brave One・2007・米/豪)のラジオ局の上司役。だいたい上品で楚々とした役が多い。

 明るく元気になおばあちゃんを演じたのは、ベティ・ホワイト。なんと御年87歳。主にTVで活躍してきた人で、映画ではクリスチャン・スレーターの洪水アクション「フラッド」(Hard Rain・1998・米/英ほか)で逃げないおばあちゃんを、巨大生物パニック「U.M.Aレイク・プラシッド」(Lake Placid・1999・加/米)ではモンスターに餌をやっていたおばあさん(記憶が確かにならば)を演じていた。

 子供と仲違いしている父親を演じたのは、クレイグ・T・ネルソン。「ポルターガイスト」(Poltergeist・1982・米)でお父さんを演じていた人。やはりTVが多いようだが、悪役が増えてきた気がする。傑作「キリング・フィールド」(The Killing Fields・1984・英)やポール・ウォーカーが光っていた「スカルズ」(The Skulls・2000・米/加)にも出ている。

 町唯一の男性ストリッパーでパーティの手伝いや店の店員、しかもマーガレットのファンというラモーンはオスカー・ヌニェス。TVを中心に活躍するコメディアンで、「24」にも出ていたらしい。映画ではマーク・ウォールバーグのリメイク版「ミニミニ大作戦」(The Italian Job・2003・米/仏/英)に警備員役で出ていたらしい。

 脚本はピーター・チアレッリ。脚本としては本作しか手がけていないようだが、映画人が良く出ている南カリフォルニア大学を卒業してドリームワークスに入社、プロデューサーとして活躍していたようだ。その1つに「イーグルル・アイ」(Eagle Eye・2008・米/独)がある。

 監督はアン・フレッチャー。ダンサーから振り付け師になり、女優としても活躍しつつ、ダンス映画「ステップ・アップ」(Step Up・2006・米)で監督デビュー。続く「幸せになるための27のドレス」(27 Dresses・2008・米)が高く評価され、本作の起用となったらしい。ジョン・トラボルタが女性に扮した楽しいミュージカル「ヘアスプレー」(Hairspray・2007・米/英)では看護婦役で出演、本作でも出版社の同僚ジル役で出ている。

 登場するパソコンは出版社らしくすべてMac。シトカの町の時間貸しパソコンは、なんと透明カラーを流行らせたiMac。もちろんiPodというかiPhoneも登場。

 海へ鞄を落とすシーンがあるのだが、ライアン・レイノルズは「5秒ルール」と言っていた。5秒以内に拾えば大丈夫という意味だと思うが、アメリカでもそんなことを言うんだ。日本は「3秒ルール」って言うけど。食べ物だって、3秒以内に拾えば食べてOK。アメリカも食べるんだろうか。

 タトゥーを入れているという話で、ジャバニーズ・カリグラフィーかというシーンがある。漢字を彫る人が多いらしい。そうなんだ。

 ニューヨークの街をバックに文字が動きに合わせて横から入ってきたり、動きに合わせて消えていったりするシャレたタイトルはyU+CO(IMDbではガーソン・ユー)。さりげないがいい感じ。

 公開3日目の初回、前日に座席を確保しておいて、飲食物持ち込み禁止になったのでしかたなく手ぶらで20分前くらいに新宿の劇場に到着。ラテを買ったら、これが小さい上に入っている量も少ない。まずくはないが特においしいわけでもなく、これで300円も取るのはどうなんだろう。だから持ち込みが増えて、持ち込み禁止なんてことになったのでは。うまくて量が多ければ、誰も持ち込みなんてやらないだろう。

 15分前くらいに開場。HDシネマの予告をやっていたが、これがHD上映ではなく通常のビデオ映像のようで、画質がちっともなくなかった。ロビーの予告は高画質だったような気がするが。これではHDのイメージダウンではないだろうか。

 上映が始まってからも人が入ってきていたが、最終的にはたぶん301席に40人くらいの入り。すぐ小さな劇場に移動だろう。若い女性が多いのは当然としても、意外と男性も多く、男女比は4対6くらい。中高年の男性も意外と居て、「女子力」とか「婚活」などというキー・ワードとは関係なく、単に映画好きの人たちなのだろう。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは、バンパイア・ラブ・ストーリーの第2弾、上下マスクの「ニュームーン」は、なんだか「ロミオとジュリエット」の様相を呈してきた感じ。禁じられた恋に身を引いて、片方が死んだと思ってもう片方も……という展開らしい。

 3D-CG偏向監督ロバート・ゼメキスの上下マスク「クリスマスキャロル」は、なかなか3人の亡霊たちが怖そうで、ちょっと想像していたものとは違った。スクルージが誰かに似ているなあと思ったら、声をジム・キャリーがやっているらしい。そうか、ジム・キャリーに似ていたのだ。やっぱり動きには違和感があるが、ストーリーがしっかりしているので、面白いかも。3D上映は別料金らしいけど。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになり、左右マスクで「カールじいさんの空飛ぶ家」。新予告で、段々ストーリーがわかってきた。ちょっと悲しい感じが……。タイトルは「ハウルの動く城」みたいだが。


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