The Proposal


2009年10月24日(土)「ホースメン」

HORSEMEN・2009・米・1時間30分

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(1.85、With Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.horsemen.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ある冬、デトロイト郊外の凍った河で血まみれの歯が何本もまとめて小テーブルの上のトレイから発見される。家庭を顧みないワーカホリックの刑事エイダン・ブレスリン(デニス・クエイド)が現場に急行すると、東西南北に赤いペンキで「COME AND SEE(来たれ)」と書かれている。続けてある屋敷の主婦が全裸で極太の釣り針で宙づりにされて殺されているのが発見される。第一発見者はその家の養女の長女クリスティン(チャン・ツィイー)。やはり東西南北の壁に赤ペンキで「COME AND SEE(来たれ)」と書かれている。しばらくしてクリスティンに呼び出されたプレスリンは、彼女から自分が殺したことを告げられる。取り調べる内、聖書の黙示録との共通点が浮かび上がる。

72点

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 うーむ、ショッキングで強烈な映画だが、これはほとんど「セブン」(Se7en・1995・米)ではないか。聖書がベースで、残酷描写の凄さ、ラストの決してハッピー・エンドとは言えないエンディング。ちょっと化粧というか、味付けを変えただけという印象も大きい。「アイ・ラブ・ユー」のセリフで終わるが、重くズシーンと来る。後味、ワル。「ソウ」(Saw・2004・米/豪)シリーズの影響も大きく受けている。「ヘル・レイザー」(Hellraiser・1987・英)とか「殺し屋1」(2001・日/香/韓)も入っている……と思ったら、プロデューサーがあのマイケル・ベイ。それで納得。音で脅かす傾向もあったし。

 マイケル・ベイは「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・2005・米)「悪魔のいけにえ」(The Texas Chainsaw Massacre・2003・米)「ヒッチャー」(The Hitcher・2007・米)「13日の金曜日」(Friday the 13th・2009・米)「エルム街の悪夢」(A Nightmare on Elm Street・2010・米)など過去のホラー名作をプロデュースして、レベルを落としてリメイクしまくっている。なぜ?

 たしかにアメリカ映画は聖書がモチーフになっていることが多い。聖書を知らないとわかりにくいことは多い。聖書の「七つの大罪」とか「黙示録(の四騎士)」とか、「ペイルライダー(四騎士の1人)」とか、「旧約聖書・出エジプト記の10の災い」とか。知らなくてもわかるようになっているが、知っていればたぶんより怖く、より深く理解できるはず。ただ、本作の場合、知らなくても真ん中くらいでリーダーの正体は想像が付く。主人公が気付かないのも残念だ。ワーカホリックの刑事も耳にタコだし。

 主演のデニス・クエイドは今年55歳。兄は俳優のランディ・クエイド。1980年くらいからずっと第一線で活躍している。つい最近、ガッカリだった「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of ・2009・米/チェコ)でちょい役だが、司令官のホーク将軍を演じていた。その前は「羅生門」的視点転換ミステリー・アクション「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)でトラウマを持つシークレット・サービスを演じていた。本作のような残酷なものというと、戦争映画「セイヴィア」(Savior・1998・米)がある。あれも強烈だったなあ。新作が3本ほど控えている。革のヒップホルスターにM92を入れていたが、ラストに撃つ時以外はトイ・ガンだったような……。

 美しき容疑者の一人はチャン・ツィイー。最近結婚してしまったが、あいかわらずキレイ。「SAYURI」(Memories of a Geisha・2005・米)、「LOVERS」(House of Flying Daggers・2004・中/香)、「HERO」(Hero・2002・香/中)、「グリーン・デスティニー」(Crouching Tiger, Hidden Dragon・2000・台ほか)などが特に良かった。本作はプロデューサーのマイケル・ベイが美女好きだからキャスティングされたような気がしないでもない。マイケル・ベイのプロデュース作品は無駄に美女ばかりの気が……。やはり新作が3本ほど控えている。

 デニス・クエイドの相棒の刑事スティングレイを演じたのはクリフトン・コリンズJr.。つい最近、傑作はちゃめちゃアクションの「アドレナリン:ハイ・ボルテージ」(Crunk: High Voltage・2009・英ほか)にとんでもなく悪いメキシカン・マフィアを演じていた。「サンシャイン・クリーニング」(Sunshine Cleaning・2008・米)では、事件現場清掃のノウハウを教えてくれる親切な片腕の男を演じていた。独特の味がある。

 デニス・クエイドの上司を演じていたのはバリー・シャバカ・ヘンリーという人。マイケル・マンの「アイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・独/米)で上司を、同じくマイケル・マンでトム・クルーズの傑作アクション「コラテラル」(Collateral・2004・米)で、ジャズ・バーのようなところでサイレンサー付きルガー・マークIで殺される男を演じていた。

 チャン・ツィイーの変態義父を演じたのは、イヤらしい役ならお任せの、スウェーデン生まれのピーター・ストーメア。「URAMI 怨み」(Bruiser・2000・仏ほか)の編集長役は凄かったし、TV「プリズン・ブレイク」(Prison Break・2004〜2006・米)のマフィア役も凄かった。控えている作品が10本くらいあるという超売れっ子。

 脚本はデヴィッド・キャラハム。32歳の若手。「DOOM ドゥーム」(Doom・2005・英ほか)の脚本を書いた人。IMDbでの評価は低いがボクはそこそこ面白かった。新作は2本ほど控えている。

 監督はジョナス・アカーランド。スウェーデン生まれの43歳。マドンナのミュージック・ビデオなどで頭角を現し、本作での起用につながったらしい。残酷表現が凄い。

 銃は他にチーフのような小型スナブノーズ・リボルバーも。そして人体をフックで引っかけて宙釣りにする器具はSMプレイなどで使うものだそうで、サスペンションといって市販されているらしい。また、現在の話としては意外なほどタバコもたくさん出てきていた。

 公開初日の初回、といっても新宿の劇場は夕方からのみ。15分前くらいに着いたら、ちょうど開くところ。入場者プレゼントがあって、ポスト・カードの大型判のようなものをもらったが……。

 最終的に81席ほぼすべて埋まった。男女比は意外なことに6対4くらいで女性も結構いた。さすがに若い人が多く、2/3くらい。時間帯なのかカップルも多かった。外人さんも数人。

 気になった予告編は……マナーや劇場案内のアニメはダジャレばかりでくだらないと思ったが、若い人には受けていた。タイトルが最後に1回しか出ないから覚えられないものが多くて……それでも韓国映画もウォンビン復帰作、上下マスクの「母なる証明」は面白そうだった。こういう映画が作れるだけで韓国映画は凄い。日本映画は涙ばっかりだもんなあ。

 コミックの映画化という日本の「彼岸島」は、絵が邦画と言うよりとてもハリウッドっぽいなあと思ったら、監督が「火山高」(Volcano High・2001・韓)のキム・テギュンだとか。同じ機材でも監督が替わると絵が変わると言うことか。内容はよくわからなかったが、かなり怖そう。

 それにしても解剖人間、科学君みたいな人体がタンバリンを手にダンスを踊るI LOVE SCIENCEはまだやっている。意図不明。まさか何かを脳に刷り込む実験じゃないだろうなあ。サブリミナルとか。怖い。


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