Whiteout


2009年10月31日(土)「ホワイトアウト」

WHITEOUT・2009・米/加/仏・1時間41分

日本語字幕:手書き書体下、佐藤真紀/シネスコ・サイズ(マスク、With Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビーデジタルのみ)

(米R指定、日RPG12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/whiteout/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1957年、ロシアの貨物機内で銃撃戦が発生、パイロットが撃たれ機は南極に墜落する。そして現代、南極の南極点にあるアメリカのアムンゼン・スコット基地近くで変死体が発見される。連邦捜査官のキャリー・ステッコ(ケイト・ベッキンセール)は、遺体を回収、空から落下したのではないかと睨む。ちょうど南極は冬期に入ろうとしており、まもなく半年の夜の季節になるため、半数ほどの隊員が本土に帰国する。キャリーは帰国して連邦捜査官を辞職するつもりだった。そこへロシアのボストーク基地からキャリーに電話があり、電話では話せない重要な話があるので来て欲しいという。駆けつけると基地には誰もおらず、突然何者かに襲われる。

73点

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 前売り券が作られていないということで、ちょっと心配したが、普通に面白いミステリー・サスペンスだった。通常は-30℃くらいだが、嵐になると-56℃などの極寒となり、吹雪が視界を遮りホワイトアウトとなる、などの極地の自然環境をうまく使い、うまくミステリーを構築している。

 ただ、その謎がそれほど深いとか、複雑なわけではなく、当たり前の捜査をすれば当然たどり着くであろう結果という気がする。南極では自然環境とか、生活環境があまりに違いすぎているため、それがうまくいかないとか時間がかかるというだけなのだ。これは惜しい。

 南極はいわば閉鎖空間であり、ミステリーで言うところの密室。世界各国が基地を作っているが(日本の旗もある)、主要人物は限られており、自ずと犯人の予想は付く。ちょっとおもしろいのは、1957年、命をかけて乗組員が奪い合ったものは何だったのかということだが、これは“マクガフィン”に近い。何でもないものなのだが、それを巡って殺し合いが起きる。中身は現金でも、貴金属でも、宝石でも麻薬でもなんでもいい。事件の中身には直接関係しない。ただ、あまりにちゃちすぎて観客をガッカリさせないものならば。今回はすべての発端なので、最後まで正体を隠すと大きな不満が残ってしまうと思うけれど。

 特殊効果もたくさん使われているようで、暴風でテーブルの上のカップが落ちてコーヒーがすぐに凍ってしまう効果は驚いた。また手袋を忘れて素手でドア・ノブを回すとむ手が貼り付いてしまうところも凄かった。寒い感じは良く出ていたと思う。吐く息が白く、どうやって撮影したのだろう。本当に寒いところか。

 逆に、まっすぐに昇る真っ赤な太陽などに比べて、オーロラはどうせCGじゃないかという気がして、感動が薄かった。大切なところで使われるオーロラなのに。

 主演はケイト・ベッキンセール。イギリス生まれで、オックスフォード大時代からTVに出演し、ケネス・ブラナーの「から騒ぎ」(Much Ado About Nothing・1993・英/米)で映画デビュー。アメリカ進出2作目の「ブロークダウン・パレス」(Brokedown Palace・1999・)のダメな女の子役が強烈すぎて、悪いイメージが付いてしまった感じ。ロマンチック・ラブ・ストーリーの「セレンディピティ」(Serendipity・2001・米)で挽回したものの、良いのに小さな作品で注目度が低かった。さらにイメージを一新したSFアクション・ファンタジーの「アンダーワールド」(Underworld・2003・米ほか)がヒットしたことで、悪いイメージを払拭。主演で行けることを証明した。アクション・ホラーの「モーテル」(Vacancy・2007・米)でも戦うヒロインを好演。本作へとつながってくる。使っていたのはグロックのたぶんG26。ホルスターはビアンキのアキュモールドっぽかった。

 お父さん的な存在のドクを演じたのはトム・スケリット。なんといっても「エイリアン」(Alien・1979・英/米)の船長役が有名。その後トム・クルーズの大出世作「トップガン」(Top Gun・1986・米)の教官役でも知られるが、最近はTVが多いようでスクリーンではあまり見かけなくなっていた。さすがベテラン、存在感があるし画面に重みが出る。もっと映画に出て欲しいなあ。劇中、食堂のものより日本の袋インスタント・ラーメンの方がごちそうだといっていた。

 インターポールの捜査官ロバート・プライスを演じたのはガブリエル・マクト。二枚目なのにどこかワルっぽいところもあり、本作ではそれが効いている。はたして味方なのか敵なのか。敵地脱出戦争映画の「エネミー・ライン」Behind Enemy Lines・2001・米)、サスペンス・アクションの「9デイズ」(Bad Company・2002・米/チェコ)、スパイ・アクション「リクルート」(The Recruit・2003・米)などに出ていた。最近はコミックを実写化した「ザ・スピリット」(The Spirit・2008・米)で、マスクのヒーロー、ザ・スピリットを演じていた。使っていた銃は一瞬しか見えなかったが、ベレッタのM92あたりだったような。ガバっぽくも見えたが……。

 原作は製作総指揮も兼ねるグレッグ・ルッカとスティーヴ・リーバーのグラフィック・ノベル。グレッグ・ルッカはかなりのハードボイルド小説やコミック、エッセイなどを手がけているらしい。スティーヴ・リーバーは初作品の模様。

 脚本はジョン・ホーバー&エリック・ホーバーとチャド・ヘイズ&キャリー・W・ヘイズの4人。ジョン・ホーバー&エリック・ホーバーはアクション・コメディの「ダブル・ガントレット(未)」(Montana・1998・米)を手がけているが、本作が評価されてなんと公開を控えている作品が3本もある。チャド・ヘイズ&キャリー・W・ヘイズは双子だそうで、1989年から多くのTVドラマを手がけている。映画では「24」のエリシャ・カスバートが主演した「蝋人形の館」(House of Wax・2005・豪/米)やイナゴ少女の「リーピング」(The Reaping・2007・米)を担当。

 監督はドミニク・セナ。ジャネット・ジャクソンのPV「リズム・ネイション」を監督した人で、それが評価されブラッド・ピットのスリラー「カリフォルニア」(Kalifornia・1993・米)を手がけ、ニコラス・ケイジ主演のリメイク・アクション「60セカンド」(Gone in Sixty Seconds・2000・米)、ヒュー・ジャックマンのアクション「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・豪/米)と話題作を連続して監督。ビデオとTVを経て本作に至ったようだ。

 プロデューサーの1人がジョエル・シルバー。「蝋人形の館」、「リーピング」、「ソードフィッシュ」は彼のプロデュース作品。最近パッとしない感じだが、「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon・1987・米)シリーズや「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)シリーズ、「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)シリーズをプロデュースしたのは彼。控ている作品は10本ほどもあるが、がんばって欲しい。

 冒頭のロシアの輸送機内での銃撃戦では、トカレフ、マカロフ、そしてサブマシンガンはストックが折りたたみだったかどうか。折りたたみならVz24、木ストならVz26のような気がした。

 公開初日の初回、新宿の劇場は40分前くらいに着いたら、ちょうど3館共通の窓口が開いたところ。中高年が3人ほど並んでいて、1人は女性。30分前くらいから人が来だして、20分前くらいに開場。ペア席以外全席自由。この時点で12〜13人。始まってからも入ってきていたので、最終的にはたぶん1,064席に4割くらいの入り。ほとんど中高年で、高齢者が多かった。6対4くらいで男性の方が多かったものの、意外に女性が多かった。60歳以上はいつでも1,000円だからか。

 チャイムが鳴って、アナウンスが流れてからカーテンが上に上がり、ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……マット・デイモンがダメオヤジを演じるソダーバーグの「インフォーマント!」は、流れているダメダメの気まずい空気感みたいなものが伝わってきて、どうにも居心地悪い感じ。画質もあまり良くなかったし。

 ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」は初の予告ではないだろうか。なかなか面白そう。一部デジタル3D上映で別料金、IMAX版(前売りで2,000円!)もある。前売り券はもらえる特典によって発売日が違うので、あらかじめチェックしておきたい。

 「シャーロック・ホームズ」は長い版。早く見たい。なんと来年3月公開予定。


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