2012


2009年11月22日(日)「2012」

2012・2009・米/加・2時間38分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、HDCAM)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://2012-MOVIE.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2009年、インド・ニューデリー大学の近くの鉱山の地下深くで、巨大太陽フレアの影響によるニュートリノの増大と物理反応により、地球内部で突然変異が発生し加熱していることが発見された。地質学者のエイドリアン(キウェテル・イジョフォー)は地球規模の大異変が起きるというリポートをG8に提出した。6ヵ月後、リポートは真実と検証され、終末に向けて密かに準備が開始された。2012年、離婚した小説家のジャクソン(ジョン・キューザック)は、妻と暮らす子供たちと久しぶりにイエローストーン公園へキャンプに出かける。しかしそこで謎の男チャーリー(ウディ・ハレルソン)と出会い、地球の滅亡が訪れ、40万人の限られた人間だけが巨大な宇宙船で脱出するという話を聞かされる。全く信じなかったジャクソンだったが、キャンプからもどるとマグニチュード10.9という巨大地震が発生、街は壊滅する。からくも脱出した一家は、巨大な宇宙船がある場所を記した地図を持っていたチャーリーのもとへ再び戻る。

73点

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 まあ、何とも凄いビジュアルと音。3D-CGを使いまくりのはずだが、それほどCGショーという感じがしなかったのは不思議。おそらく、人間をメインにしたビジュアルではなく、街の破壊、天変地異などが描かれているから、違和感を感じにくいのかもしれない。人間はウソの人間を良く見抜くが、それ以外はあまり区別が付かないのかも。

 印象としては「タワーリング・インフェルノ」(The Towering Inferno・1974・米)や「大地震」(Earthqeake・1974・米 )、「ポセイドン・アドベンチャー」(The Poseidon Adventure・1972・米)「世界崩壊の序曲」(When Time Ran Out...・1980・加/米)などのかつてのパニック映画全盛期の作品に近い。あんな超大作を見終わった脱力感があった。センサラウンドで座席というか体も振動したら、もっとスゴイ体験だったろうに。

 ただ、メインの出演者はいるものの、全世界での天変地異で、群像劇的構成にもなっているので、ちょっと感情が伝わって来にくかった。「ディープ・インパクト」(Deep Impact・1998・米)に近いかも。それが惜しい。もう少しうまいエピソードの構成と折り込み方がされていれば……。しかも、緊張するようなスリルの連続なのに眠気が襲ってきて、長く感じた。単調だったんだろうか。不思議。仕掛けが、どれも時間ぎりぎりにトラブルが起きてというパターンで、飽きるのかもしれない。ここも絵に頼りすぎて、工夫が足りない感じが。

 予告とは違って、マヤの世界の終末、2012年12月21日と特に関係はなく、たまたまこの年に異変が起きたという設定だった。

 画質的には、ハイビジョンの部分が生々しい感じがあったのと、パンすると圧縮されているからなのか、画質が落ちる感じがして、フィルム・パートと馴染んでいなかった気がした。デジタルの方が生々しいのと、カメラが小型なので振り回しやすく臨場感が出やすいということはあるのだろうが、この辺は今後の課題かもしれない。

 主演の離婚した小説家のジャクソンにはジョン・キューザック。「1408号室」(1408・2007・米)は残念だったが、「セレンディピティ」(Serendipity・2001・米)や「“アイデンティティ”」(Identity・2003・米)は良かったなあ。本作はあまり良い役ではなかった気がする。

 別れた奥さんを演じたのはアマンダ・ピート。「隣のヒットマン」(The Hole Nine Yards・2000・加/米)の美女。「“アイデンティティ”」ではジョン・キューザックと共演している。

 末の娘リリーを演じたのはモーガン・リリー。アメリカ生まれの9歳で、TVなどに出ていたようだが、大作映画はこれが初めて。長男のノアを演じたのはリアム・ジェイムズ。カナダ生まれの13歳。残念な続編「AVP2エイリアンズvs.プレデター」(AVPR: Aliens vs Predator - Requiem・2007・米)や、マイケル・ベイの残酷映画「ホースメン」(Horsemen・2009・米)の主人公デニス・クエイドの息子役などで出ている。

 地質学者のエイドリアンはキウェテル・イジョフォー。傑作「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)、ハード・アクション「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・日/英/米)、強盗サスペンス「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)、デンゼル・ワシントンがギャングを演じたリドリー・スコットの「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)などの良い作品に出まくっている。

 政府の高官カールはオリバー・プラット。小悪党みたいな役が多い気がするが、古くはハリソン・フォードの「ワーキング・ガール」(Working Girl・1988・米)などに出ていたが、最近ではシリアスなドキュメンタリー調の「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2009・米/英/仏)でフロスト側のスタッフとなるジャーナリストを演じていた。

 アメリカ大統領はダニー・ダローバー。「リーサル・ウェポン」(Lathal Weapon・1987・米)シリーズが有名なスターだが、小作品にも良く出ている。つい最近、自ら製作総指揮を兼ねた日本を舞台にした映画「はりまや橋」(The Harimaya Bridge・2009・米)に出ている。

 その娘を演じたのが、タンディ・ニュートン。トム・クルーズの「M:I-2」(Mission: Impossible II・2000・米/独)でヒロインを務めた人。最近ではガイ・リッチーの不快映画「ロックンローラ」(RocknRolla・2008・英)で会計士の女を演じていた。

 謎の男チャーリーを演じたのはウディ・ハレルソン。オリバー・ストーンの「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(Natural Born Killers・1994・米)の殺し屋を演じた人。変人や異常者が特にうまい。最近は「7つの贈り物」(Seven Pounds・2008・米)に出ていた。

 ちょっとだけだが、ベテラン俳優のジョージ・シーガルも日本に息子がいるジャズマン役で顔を見せている。超大作「史上最大の作戦」(The Longest Day・1962・米)や、MATサブマシンガンが印象的な「名誉と栄光のためでなく」(Lost Command・1966・米)、「レマゲン鉄橋」(The Bridge at Remagen・1969・米)などの戦争映画で印象的な役を演じている。泥棒映画「ホット・ロック」(The Hot Rock・1971・米)も良かったなあ。ちょっとコミカルな役所が多い人。最近はTVが多いようだが、もう75歳。がんばって欲しい。

 劇中使っているPCはもちろんソニーのバイオ。

 監督は脚本と製作総指揮も手がけたドイツ生まれのローランド・エメリッヒ。学生時代に卒業製作で撮ったSF「スペースノア」(Das Arche Noah Prinzip・1984・独)のときは面白い監督が出てきたなと思ったが、どうも規模が大きい作品は今ひとつの感が強い。好みということもあるが、ボクは「インデペンデンス・デイ」(Independence Day・1996・米)や、本作と似ている「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)はあまり評価しない。「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)は好きだが、1作前の「紀元前1万年」(10,000 BC・2008・米)なんて酷かったもんなあ。その意味では、「Godzllaゴジラ」(Godzilla・1998・米/日)は良い方だと思う。ひょっとしたら脚本はやらない方が良いのではないだろうか。盛り上げはうまい。

 脚本と製作と音楽を手がけたのはオーストリア生まれのハロルド・クローサー。作曲家としての仕事が一番多いようで、「紀元前1万年」の脚本も手がけているようだから、向いていないのではないだろうか。ちゃんとした脚本家に任せていれば……。

 これまで多くの作品でいっしょに仕事をしていたプロデューサーのディーン・デブリンとは「パトリオット」以降、袂を分かってしまったのか。確かにローランド・エメリッヒと離れた「セルラー」(Cellular・2004・米/独)や「フライボーイズ」(Flyboys・2006・英/米)は面白い。別れて正解か。ただ、その後はTVしかやっていないようだが……。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、事前に確保しておいて、20分前くらいに到着。15分前くらいに開場して、最終的に301席に8割くらいの入りはとても優秀。朝9時からなのに。

 ほとんどが中高年で、若い人は2割くらいいただろうか。時間帯もあるだろう。ファミリーも少し。男女比ははっきりしないが、6対4くらいで男性が多かっただろうか。

 気になった予告編は……とても怖そうな上下マスクの「THE 4TH KINDフォース・カインド」が日本ではG指定だということ。予告以上にやばいシーンはないということか。IMDbで調べてみると、アメリカではPG-13指定。6.6点。うーむ。

 スクリーンが左右に広がって、「アバター」の新予告。あらすじがわかってきた。宇宙のある惑星の開発で、先住民がいてジャマだから、それを主人公がアバター(分身)を使ってどこかに移住させるというような感じらしい。ところが先住民の女性に惚れ、ミイラ取りがミイラになると。うーむ、良くあるパターン。アメリカ・インディアンの話のようだし、分身というのは「サロゲート」のようでもあるし。ただ、絵の力がスゴイ。いかにもCGっぽいが圧倒的だ。色もキレイ。IMAXの3D版もあるのだとか。


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