Up


2009年12月5日(土)「カールじいさんの空飛ぶ家」

UP・2009・米・1時間43分

日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(1.85、Disney Digital 3-D)/ドルビーデジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビーデジタルEX)

(米PG指定)(3-D上映もあり、字幕版・吹替版)
同時上映:短編「Party Cloudy」3-D(セリフなし、6分)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/carl-gsan/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

冒険家チャールズ・マンツ(声:クリストファー・プラマー)に憧れる少年カール・フレドリクセン(声:エドワード・アズナー)は、全く同じ趣味を持つ少女エリー(声:エリー・ドクター)と知り合い、大人になって結婚し、マイ・ホームを買って幸せな家庭を築いたが、子宝に恵まれずそのまま歳をとり、ある日、妻に先立たれてしまう。マイ・ホームのまわりはいつの間にかビルが林立し、立ち退きを強いられる毎日。そんな時作業員に怪我をさせてしまい、裁判により老人ホームに行くことを命じられてしまう。一大決心をしたカールは、迎えの車が来る朝、大量の風船を家に付けて家ごと舞い上がり、かつて妻と約束した南米のパラダイス・フォールを目指して片道の旅に出る。ところが、家のベランダに近所の少年自然探検隊で「お年寄りの手伝いをしたバッジ」の取得を目指すラッセル少年(声:ジョーダン・ナガイ)が乗っていた。

87点

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 こころが暖まってほっこりする映画。見終わった後優しい気持ちになれる。キャラクターも魅力的で、背景などは実写のよう。素晴らしい絵の力であふれている。まるで横綱相撲のようで、安心して見ていられるし、まったく期待を裏切らない。子供から大人まで、家族みんなで楽しめる映画。ロバート・ゼメキスはピクサーの爪の垢でも煎じて飲めばいいのではないだろうか。

 初めの10分か20分くらいで、カールじいさんの半生が描かれる。もうそれだけで泣きそうになるような、優しさに溢れたエピソード。動物園で風船を売る仕事で贅沢は出来ないけれど、慎ましやかに、けれど幸せに生きてきたという感じが実に良く出ている。愛し合っていたんだなあと、思わせる。これが成功したことで、後の物語が多少突拍子もなくても、充分受け入れることが出来る。しかも純真な少年と、気の良い犬、そして謎の生物、恐ろしい悪役までも登場させる鉄板の構成。たっぷりのユーモアが単なるお涙頂戴ものとは一線を画し、作品としてのレベルを上げている。小道具の使い方も実にうまい。

 ただ、3-Dとしては昔のものとたいして変わらない印象。最後に見たのは「ジョーズ3」(Jaws 3-D・1983・米)だったろうか。確かに軽量化されてはいるもののまだメガネが重いし、視界が狭いし、画面が暗いし、何もない状態で掛けると少し緑っぽい色が付いている。立体感というのも狙ったカット以外それほどでもない。狙ったカットはわざとらしいし。しかも公開初日だというのに、最終回だったからか、レンズが汚れていて曇り放題。レンズクリーナーで何回も拭いたがキレイに出来なかった。これで前売りとの差額700円も取られるのは全く納得できない。この程度のクォリティの立体感ならコストを考えると明るく見やすい2-D上映の方が良いのではないかという気もする。200〜300円ならまだしも、700円の価値があるのだろうかというのが、正直な感想。それでも深い谷とかの高さ感は良く出ていた。足がすくむ感じがしたから。

 広告などで言っているような「幸せは家にあった」というようなことではなく、歳をとったからと言って、愛する人を失ったからと言って家に閉じこもるのではなく、どんどん新しい冒険を始めて行けということではないかと思った。近所の少年と親交を結び、父親代わりのようになって癒しを与え、色んなことを教えてやることも、そのひとつだと。その通りだと思うが、やはりアメリカ人らしい発想という気もする。

 カールの声を出していたのはエドワード・アズナー。1929年生まれと言うから、80歳。本当にお年寄りだ。渋い脇役が多いが、最近はTVが多かった模様。最後に見たのはクリスチャン・スレーターの洪水映画「フラッド」(Hard Rain・1998・米ほか)だったろうか。現金輸送車の相棒を演じていた人。もうちょっと前だと「JFK」(JFK・1991・米/仏)にも出ていた。

 旅の道連れとなる少年ラッセルの声はジョーダン・ナガイ。映画の仕事は今回が初めてのようで、名前からするとアメリカ生まれの日系人か。2000年生まれの9歳。

 カールが幼い頃憧れた冒険家チャールズ・マンツの声はクリストファー・プラマー。たくさんの作品に出ている大ベテランだが、やっぱり有名なのは「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)のお父さん、フォン・トラップ大佐だろう。最近だと、おもしろかった銀行強盗映画「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)に銀行の重役役で出ていた。

 のちに結婚する少女エリーの元気な声はエリー・ドクター。こちらも映画の仕事は今回が初めてのようで、名前が監督と同じなので、娘さんなのかも。

 ちょっとドジでお人好しの犬、ダグ/アルファーの声はボブ・ピーターソン。1961年生まれ。本作の共同監督であり、脚本・原案も担当している人。多くのピクサー作品に関わっており、声の出演も果たしている。監督としては本作が初作品。

 犬語翻訳機が壊れてヘンな声になってしまうクールな犬のリーダー、ベータの声はイギリス生まれのデルロイ・リンドー。悪役が多い黒人俳優で、最近では痛快冒険活劇「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英ほか)に出ていた。

 監督・原案・脚本は、ボブ・ピーターソンとピート・ドクターの2人。ピート・ドクターは1968年生まれ。ボブより新しいスタッフで、「モンスターズ・インク」(Monsters, Inc.・2001・米)の監督を務めている。

 劇中、冒険家チャールズ・マンツの使う銃は、スペンサー・ライフルだったと思う。この銃を選ぶところがマニアックだ。カービンはよく見るがライフルとは。1860年〜1869年にかけて作られていたので(弾は1920年代まで売っていたらしい)、チャールズ・マンツが1910年〜1920年くらいに活躍していた人とすれば、すでに骨董品の部類。なかなか面白い設定。飛行船から出てくる複葉機からはマシンガンでガンガン撃ちまくる。

 公開初日の最終回、3-Dの字幕版の初回(1日1回のみ上映)、新宿の劇場は午前中に座席を確保しておいて30分くらい前に着き、スタバでおいしいコーヒーを確保してロビーで飲む。なにしろ場内へは持ち込み禁止だから。10分前を少し過ぎたくらいで開場。3-Dメガネの回収などがあって、入れ替えに時間がかかるらしい。

 上映開始1分前くらいに、3-Dメガネの説明。声が小さくて良く聞こえなかった。CM・予告のように上映でやればいいのに。やはりセンサーで読み取って左右の映像に合わせて液晶シャッターを開け閉めしているようだ。それにしても、メガネはちゃんとキレイにしておけよなあ。700円も差額を取るんだから。

 最終的には301席がほぼ埋まってしまった。8割くらいは若い人で、男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。終わるのが23時半くらいなのに。

 メガネを掛けてくださいと出て、3-Dで始まった予告編で気になったのは……ディズニーの「プリンセスと魔法のキス」はいかにもディズニーらしい映画のよう。「美女と野獣」や「アラジン」系のラブ・ストーリーらしい。

 「ティンカーベルと月の石」はこのシリーズ、まだ作られるんだという感じ。「アバター」は3-Dでも内容は同じで、印象もそれほど変わらなかった。ただ、吹替版での予告。奥行きが出る分視野が狭くなり暗くなるので、トータル行って来いで同じと言うことか。目新しさはあるけど……。パンフォーカスでないと立体感が不自然になるのか、どうにも書き割りが前後に並んでいるような感じ。

 なんと「トイ・ストーリー3」も作られるそうで、ピクサーは大忙し。こちらも日本語での予告。リュック・ベッソンのように作りすぎで薄味にならなければいいが。また、「アリス・イン・ワンダーランド」も3-D、日本語吹替版での予告。ファンタジーなので、3-Dが似合っている。しかし暗い画面が一層暗くなるのはちょっと残念。

 上下マスクの実写+3D-CGアニメ「Gフォース」は、「キャッツ&ドッグス」系のネズミが主人公のスパイ活劇らしい。しかも3-D。

 ディズニー・デジタルのの表記の後、暗くなって短編からの上映。


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