Public Enemies


2009年12月12日(土)「パブリック・エネミーズ」

PUBLIC ENEMIES・2009・米・2時間21分(IMDbでは140分)

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex、HDCAM、ソニー)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日G指定)

公式サイト
http://www.public-enemy1.com/
(入ると画面極大化。音に注意。全国の劇場案内もあり)

世界大恐慌が始まって4年目、そのピークと言われた1933年、銀行強盗のボスであったジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)は、インディアナ州の刑務所を襲い仲間を助け出す。そのころ、FBIもギャングに対する取締を強化し、プリティ・ボーイ・フロイド(チャニング・テイタム)はメルヴィン・パーヴィス特別捜査官(クリスチャン・ベイル)の手によってオハイオ州で射殺される。しかし議会で捜査部をFBIに格上げする予算の増加は認められなかった。初代長官の座を狙っていたJ・エドガー・フーバー(ビリー・クラダップ)は実績を上げるため、パーヴィスをシカゴ支局の局長にし、デリンジャーを逮捕するように命じる。デリンジャーは次の標的を選んでいる時、ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)と出会い、恋に落ちる。一方パーヴィスはじわじわと捜査の輪をせばめていく。

74点

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 一言でいえば、間違いなくギャング映画。ただ、きわめてエンターテインメント色の強いシネスコ・サイズの画面を使ってドキュメンタリー調を出そうとしているのが、今ひとつピンと来なかった。

 あえて民衆の英雄という扱いでもなく、単なる非情な悪人という扱いでもなく、おそらくは史実に忠実に、時代感を盛り込みながら、ややセンチメンタルに描いたというところだろうか。ちゃんと木を削って作ったと言う脱獄に使ったピストルも出てくるし、形も残されている写真の通り。追いつめるFBI側も完全な善ではなく、また義賊的なヒーローをつぶそうとする悪的善でもない。そしてギャング映画なので、結末は決してハッピーではない。

 マイケル・マン監督作品なので、男の映画ではある。女を守ろうとする男。1930年代は女はか弱く、男は強くという構図がまだあった時代。現代はどちらかというと女性のヒロインが多く活躍し、時に男性を助ける時代になった。マイケル・マンは男が男らしかった時代を描きたかったんだろう。銃撃戦は壮絶で、銃ごとに銃声が違い、暴力的で甲高く、恐い。弾着、跳弾音もあり、かなりリアル。

 画質はビデオ・パート(ハイビジョン)とフィルムとの差が大きく、気になった。暗いシーンや、手持ちしたいところでハイビジョンを使ったのだろう。しかし、ハッキリ言ってカメラを動かし過ぎ。見ていて疲れる。シロートじゃないんだから……。ビスタ・サイズならまだしも、シネスコ・サイズで手持ちカメラをやられると、車酔いのようになるし、疲れるのだ。落ち着いてみていられない。

 主演のジョン・デリンジャー役はジョニー・デップ。雰囲気としてはジョン・ミリアス監督の「デリンジャー」(Dillinger・1973・米)のウォーレン・ウォーツが風貌まで似ていたが、ジョニー・デップもなかなかクールで、洒落もので、そんな雰囲気。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)シリーズのキャプテン・スパローが一番合っているような気もするが、おもしろい作品もそうでない作品もいろいろ。特に最近は出まくりなので、そりゃそうだろうと。公開を控えている作品は7本ほどもある。使っていた銃はコルト32オート、ダブル・ショルダーに入れたガバメント、シカゴ・タイプのトンプソン(ドラム・マガジンも使う)、レミントン・モデル8など。

 デリンジャーを追うメルヴィン・パーヴィス特別捜査官はクリスチャン・ベイル。この人もたくさん出まくりだが、割り合いおもしろい作品が多い。「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)で天才子役と言われて以来、実はパッとしない感じだったが、青年になって出た「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000・米/加)あたりからずっと作品に恵まれている。最近で言えば「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)、「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)、「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)。どれも面白かったし、クリスチャン・ベイルは存在感があった。冒頭でリティ・ボーイ・フロイドを狙撃するライフルはモーゼルのスポーターらしい。ダブル・セット・トリガーになっていて、ちゃんと後ろのトリガーでセットしてから撃っている。

 彼女を演じた美女、ビリー・フレシェット役はマリオン・コティヤール。「TAXi」(Taxi・1998・仏)でヒロインを演じていた人。ティム・バートンのファンタジー「ビッグ・フィッシュ」(Big Fish・2003・米)や、強烈な戦争ミステリー「ロング・エンゲージメント」(Un long dimanche de fiacailles・2004・仏/米)にも出ていた。本作では父がフランス人で、母がインディアンという設定。拷問で漏らしてしまうなど、体当たり演技でがんばっている。

 J・エドガー・フーバーを演じたのはビリー・クラダップ。「ウォッチメン」(Watchmen・2009・米)でほとんどスッポンポンのドクター・マンハッタンを演じていた人。「M:i:III」(Mission: Imposible III・2006・独/米)では、トム・クルーズを裏切る上司を演じていた。

 セカンド・デリンジャー・ギャングの1人、ホーマー・ヴァン・メーターを演じていたのは、スティーヴン・ドーフ。B級が多い感じの人だが、恐怖の一夜を描いたサスペンス「ジャッジメント・ナイト」(Judgemant Night・1993・米/日)、SFコメディーの「スペース・トラッカー」(Space Trackers・1996・英/米ほか)、吸血鬼映画「ブレイド」(Blade・1998・米)、強盗団映画「スティール」(Riders・2002・仏/英ほか)など、IMDbでの評価は低いがなかなか面白い作品に出ていた。最近見ないなあと思ったら、まだまだがんばっている。ちょっと存在感が薄かったが。なんとBARを片手で撃っている。

 仕事の手配をしている男、アルヴィン・カーピスを演じていたのはジョヴァンニ・リビシ。傑作ミステリー「閉ざされた森」(Basic・2003・米/独)で、ちょっとアブナイ男を演じていた人。傑作ウエスタン「コールド・マウンテン」(Cold Mountain・2003・米)にも出ていた。

 暴走してしまう危険な男、ベイビー・フェイス・ネルソンを演じたのはスティーヴン・グラハム。ギャング映画の「スナッチ」(Snatch.・2000・英/米)や「ギャング・オブ・ニューヨーク」(Gangs of New York・2001・米/伊)に出ていた人。なんかギャング役が多い感じ。なんと脱出の際に使うのは.38口径ガバメントがベースのマシン・ピストル。トンプソンのように快調に動いている。

 応援捜査官のチャールズ・ウィンステッドを演じたのはスティーヴン・ラング。SFアクションの「飛べ、バージル/プロジェクトX」(Project X・1987・米)、ずっしりとくるドラマ「ブルックリン最終出口」(Last Exit to Brooklyn・1989・米/英ほか)、刑事コメディの「ハード・ウェイ」(The Hard Way・1991・米)、競作となった西部劇の「トゥームストーン」(Tombstone・1994・米)、スタローンのサスペンス「D-TOX」(D-Tox・2002・米/独)などで悪役を演じていた人。とても冷酷な感じがする人。

 共同脚本・監督・製作は男の映画ならお任せのマイケル・マン。監督作品としてはホーグ・カスタムが活躍した犯罪映画「ザ・クラッカー」(The Thief・1981・米)、第二次世界大戦吸血鬼映画「ザ・キープ」(The Keep・1983・英)、傑作西部劇「ラスト・オブ・モヒカン」(The Last of Mohicans・1992・米)など、みな銃にこだわりがある。最近ではトム・クルーズが正式な訓練を受けて望んだ殺し屋映画「コラテラル」(Collateral・2004・米)が良かった。

 共同脚本は刑務所コメディ「ラッキー・ブレイク」(Lucky Break・2001・英/独)のロナン・ベネット。そしてサイコ・スリラー「コピーキャット」(Copycat・1995・米)のアン・ビダーマン。

 登場する銃は、凝り性なマイケル・マンならではだろう。ちゃんと史実に忠実に用意されたようだ。ほかにもスプリングフィールドM1903ライフル、ウンチェスターM1897ショットガン、ウインチェスターM92カービン、レミントンM11ショットガンを切り詰めたものなどが登場する。
 アーマラー(武器係)のチーフはハリー・ルー。1990年頃から活躍しているベテラン。「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgement Day・1991・米/仏)、「トゥルー・ライズ」(True Lies・1994・米)、「ヒート」(Heat・1995・米)、「交渉人」(The Negotiator・1998・独/米)、「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)、「ランボー」(Rambo・2008・米/独)など、ジェームズ・キャメロンやマイケル・マン作品などを手がけている。

 さらにタラン・バトラーはいろいろな大会で優勝しているピストル射撃のチャンピオンで、自身のトレーニング施設も持っているらしい。個別の映画は担当していなかったようだが映画スターのトレーニングを行っているのだとか。マイケル・マンらしい人選だ。もう1人のアーマラー、ヴィンセント・ジョセフ・フラハティは2002年くらいから多くのアクション作品を手がけているアーマラー。「トリプルX」(xXx・2002・米)、「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)、「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)、「Mr. & Mrs.スミス」(Mr. & Mrs. Smith・2005・米)、「ダイハード4.0」(Live Free or Dioe Hard・2007・米/英)、「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)など大作がずらり。特に最近の活躍が目覚ましい。

 第2班アーマラーは、小道具助手でもあるハワード・ファノン。実際の実務的なプロップ・ガンの手配準備などはこの人がやったのかもしれない。「ランボー3/怒りのアフガン」(Rambo III・1988・米)、「プレデター2」(Predator 2・1990・米)、「沈黙の戦艦」(Under Siege・1992・仏/米)、「ザ・ロック」(The Rock・1996・米)、「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・独/米)など、そうそうたるアクション作品を手がけている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定なので前日に座席を確保しておいて、20分前くらいに到着。15分前くらいに開場となり劇場へ。ギャング映画なのに、男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多かった。老若比はほぼ半々くらい。若い人がこういう古い設定の映画を見るのも珍しいだろう。

 本編が始まってからもぞろぞろと入ってきていたので、最終的にどれくらい入ったのかわからなかったが、たぶん157席に7割くらい入ったのではないだろうか。

 ほぼ暗くなって時待った予告編で気になったのは……ついに「Dr.パルナサスの鏡」の予告が始まった。鏡の中の世界の話という感じらしい。途中でヒース・レジャーが亡くなったので、ジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウが引き継いだのだとか。なかなか面白そう。

 スクリーンの上が下がってシネスコ・サイズになり、ドキュメンタリーの「オーシャンズ」の予告。「アース」「ディープ・ブルー」の3匹目のドジョウを狙ったものだと思うが、さすがに真実の驚異的映像には力がある。うむむ。

 「ダレン・シャン」ハーフ・ヴァンパイアとなった主人公の話らしいが、ティーザーなので良くわからなかった。日本語吹替予告だったが、まだ日本語サイトはない模様。このへんからスクリーン下のピンがぼけているのが気になる。

 左右マスクの「恋するベーカリー」は何とも安直なタイトルだが、メリル・ストリープが分かれた夫とまたよりを戻すとか何とか。

 結局下のピンがあまいまま、本編に突入。


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