Where the Wikd Things are


2010年1月16日(土)「かいじゅうたちのいるところ」

WHERE THE WILD THINGS ARE・2009・米・1時間41分

日本語字幕:ゴシック手書き風書体下、さとうけいこ/字幕監修:じうぐうてるお/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、by Panavision)/ドルビー・デジタル、 dts、SDDS(IMDbではドルビーデジタルのみ)

(米PG指定、日G指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/wherethewildthingsare/
(重い。音に注意、全国の劇場案内もあり)

8歳の男の子マックス(マックス・レコーズ)はやんちゃざかりで、遊びたくて仕方がない。しかし姉のクレア(ペピア・エマリッチス)はいつも友達と一緒でかまってくれず、母(キャサリン・キーナー)も仕事が忙しい上に、恋人がいてなかなかかまってくれない。自分の気持ちをうまく伝えられず、感情のコントロールもうまくできないマックスは、ある日ついに感情が爆発して暴れ、母に噛みついたあげく家を飛び出してしまう。やがてマックスはある浜辺にたどりつくと、帆のある小さなボートを見つけ乗って沖へと漕ぎ出してしまう。何日かして島を見つけ上陸。明かりの見えた山を目指して登ると、そこにはけむくじゃらのかいじゅうたちが大暴れしていた。

72点

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 楽しいファンタジーかと思ったら、かなり重い。予告編のイメージで見に行くとかなり肩透かしをくらうことになる。

 ずっしりとくる大人の童話という感じ。見終わって、すっかり暗くなってしまった。思わずため息が出た。なにしろテーマが重い。人はやっばりうまくコミュニケーションが取れず、関係を壊していくものなんだと思わせられる。安直な答は用意されていないので、わずか101分ですべてがうまくいくなんてことはない。母と息子、姉と弟、壊れた関係は壊れたまま。ただ、たぶんちょっとだけ、一歩か半歩くらい主人公の少年は大人になっただろうと匂わせる。

 だいたい主人公の少年の設定が重い。8歳なのに5歳くらいで成長が止まってしまったかのよう。毎日遊びまくっていて、自分の感情のまま振る舞う。笑っていたかと思えば、怒り出して叫びまくり、急に泣き出してしまう。他人を思いやることもできず、感情コントロールもうまくできない。感性が豊かなだけに他人の言葉や態度に深く傷つく。そして想像力も豊かで、空想の世界にはまりこむことも。自閉症になりそうな危うい状態。

 しかし母も姉もそんなマックスに手を焼き、どうすることもできない。この手詰まり状態。マックスの気持ちもどうにか観客に伝わってくるし、どうすることもできない母と姉の気持ちもよくわかる。現実世界で起こっていることは非常にリアルで、見ていて息が詰まってくる。そしてファンタジーの世界でもほぼ現実世界をそのまま反映した出来事が起こる。ここでもまた息が詰まる。現実世界で何も解決せず(8歳の子には無理だろう)逃げ出し、逃げ込んだファンタジー世界でも(王となってやりたい放題の揚げ句)同様の問題が持ち上がって逃げ出す。母が偉いなあと思うのは、息子がもどった時(夕食時に飛び出し、11時頃〈キッチンの時計〉もどってくる)、スゴク心配して怒っていたはずなのに、何も言わずただやさしく抱きしめてあげること。この母は、たぶん息子が大好きな父と離婚し(それを匂わすような父からのプレゼントの地球儀がある)、父親の役もはたさなければならないのだ。重い。

 主役の少年マックスを演じたのはマックス・レコーズ。現在12歳だそうで、この前に「Brothers Bloom」(2008・米)という作品に出ているそうだが、日本未公開。感受性豊かで傷つきやすい繊細な感じが実にうまかった。

 母を演じたのはキャサリン・キーナー。もうすでに20年以上のキャリアを持つベテラン。スパイク・ジョーンズ監督の「マルコヴィッチの穴」(Being John Malkovich・1999・米)にも出演しているし、スパイク・ジョーンズがプロデュースした「脳内ニューヨーク」(Synecdoche, New York・2008・米)にも出演している。

 かいじゅうたちは基本は着ぐるみで、顔だけがCGだったらしい。いかにも着ぐるみなのに奇妙なリアルさと存在感。これは素晴らしい。見る価値がある。

 そのかいじゅうの問題児というかトラブル・メーカー、キャロルの声はジェームズ・ガンドルフィーニ。よくギャング役とか、警察のボスなんかを演じている人。最近ではリメイク作品の「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 123・2009・米/英)でニューヨーク市長を演じていた。

 その恋人らしい、ちょっとママに似た雰囲気のKWの声はローレン・アンブローズ。TVドラマ「シックス・フィート・アンダー」に出ていたらしい。声の雰囲気はピッタリという感じ。

 陰気なジュディスの声はキャサリン・オハラ。マーティン・スコセッシの傑作「アフター・アワーズ」(After Hours・1985・米)やホラー・コメディ「ビートル・ジュース」(Beetle Juice・1988・米)、「ホーム・アローン」(Home Alone・1990・米)のお母さんなどが有名。最近では「ペネロピ」(Penelope・2006・英/米)に出ていた。コメディ系が多いようだが、最近はアニメの声優が多い。

 その夫らしいアイラの声はフォレスト・ウィティカー。いろんな作品に出ている人だが、強烈だったのはニール・ジョーダンの傑作「クライング・ゲーム」(The Crying Game・1992・英/日)だろう。そして葉隠れを愛読書にしている殺し屋を演じた「ゴースト・ドッグ」(Ghost Dog: The Way of the Samurai・1999・仏/独ほか)、トワイライト・サーガのクリスティン・スチュワートが子役で出ていた「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)の悪役、さらに人肉アミンを演じた「ラストキング・オブ・スコットランド」(The Last King of Scotland・2006・英)など衝撃的な映画が多い。つい最近「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)にアメリカ人旅行者で出ていた。

 ヤギみたいなアレクサンダーの声はポール・ダノ。アート系で話題になった「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)や「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(There will be Blood・2007・米)に出ていた人。

 鳥のダグラスの声はクリス・クーパー。悪役の多い人だが、傑作「遠い空の向こうに」(October Sky・1999・米)の父親役が強い印象を残し、最近では「アメリカを売った男」(Breach・2007・米)が衝撃的だった。

 最後にちょっとだけしゃべる牛の声はマイケル・ベリーJr.。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)や「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・独/米)、最近では「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)に出ていたのだとか。

 原作はモーリス・センダックの絵本。世界的なロングセラーなのだとか。読んではいないが、こんなに重い話なのだろうか。

 脚本は、監督のスパイク・ジョーンズとデイヴ・エッガーズの2人。デイヴ・エッガーズは作家で、編集者で、教師もやっているらしい。この前に「Away We Go」(2009・米/英)の脚本も書いているようだが、日本で劇場公開されていない。

 監督はスパイク・ジョーンズ。1991年からビデオ作品の監督を始め、「マルコヴィッチの穴」(Being John Malkovich・1999・米)でアカデミー賞監督賞にノミネートされた。へんてこな話で、やっぱり重いというかダークな部分があったが、それが共通している。その後もビデオを中心に制作を続け、劇場作品もたまに作っていたようだが、日本公開はされていない。本作は久々の新作となる。アメリカではIMAX版も作られているのだとか。

 なんとプロデューサーの1人がトム・ハンクス。そのおかげでこれだけ豪華な配役になったのかもしれないが、当初からこんな難しい話を狙っていたのだろうか。評価は高いようだけど……。

 公開2日目、新宿の劇場の2回目、字幕版の初回、20分前くらいに着いてコーヒーを飲んでいたら15分前くらいに開場。下は親に連れられた小学生の女の子から、高齢者まで幅広かったが、中心は若者層。子供にこの話は難し過ぎると思う。男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。

 関係者らしい男性3人が入口付近にいてしゃべっていたが、もうちょっと目立たない所にいたらどうだろうか。本編が始まっても入ってきて、よくわからないが、たぶん最終的には287席に9割りほどの入り。こんなに人が入る作品とは思えなかったが……。

 気になった予告編は……上下マスクの「サロゲート」は日本語吹替版での新予告。なんだかコンセプトは日本映画の「HINOKIO ヒノキオ」(2005・日)みたいだが、すごいアクション。さすがハリウッド、スケールが違う。

 上下マスクの「インセプション」はレオナルド・ディカプリオと渡辺謙も出ているSFアクション。監督はなんとクリストファー・ノーラン。街が持ち上がってビルがタイトルになるという驚異のビジュアル。これは期待できそう。

 スクリーンが左右に広がってから「タイタンの戦い」の新予告。素晴らしい絵と、大冒険の予感。面白そう。モンスターはちょっとギレルモ・デル・トロ風だったが。サム・ワーシントンも出ていた。

 「インビクタス」はシネスコ・サイズで見るともう予告というより本編的な印象。短いのに感動する。イーストウッドはスゴイなあ。


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