The Imaginarium of Doctor Parnassas


2010年1月23日(土)「Dr.パルナサスの鏡」

THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS・2009・英/加/仏・2時間04分(IMDbでは122分)

日本語字幕:細丸ゴシック体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(Super 35[3-perf]、Arriflex、TECHNOVISION)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.parnassus.jp/index.html
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

ロンドンの遊園地やショッピングセンターの駐車場などで想像の世界を見せる見せ物小屋をやっているドクター・パルナサスの一座は、ある日橋の下で首をくくっている男を発見し助ける。記憶を失っていた男はジョージ(ヒース・レジャー)と呼ばれることになり、ステージを手伝うことになる。1000歳を超えるというドクター・パルナサス(クリストファー・プラマー)は悪魔のニック(トム・ウェイツ)とある約束をし、人間を想像の世界で選択させそのままこの世に留まらせるか、あるいは地獄に落とすかの試練を課していた。そして娘のヴァレンティナ(リリー・コール)が16歳の誕生日を迎えるまでに、5人の人間を試練に掛け留まらせなければ、娘をニックに差し出さなければならなかった。

70点

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 寝た。最初の方と中盤の2回、気を失ってしまった。単調な上に内容がわかりにくく、まじめなのかふざけているのかさえわかりにくい。画質もあまり良くなく、粒子が目立つ感じ。SFXはスゴイけれど、もともと超現実的なビジュアルなので、いかにも効果らしさがきわだっていまひとつノリ切れなかった。とても興味深くはあるのだが……。

 ストーリーも、最終的には何となくわかるのだが、どうも物語の流れが途中から変わってしまった印象が強い。ほとんどの観客が感情移入するだろうキャラクターが、このエンディングでは……。裏切られた感じ。撮影途中でヒース・レジャーが亡くなってしまったために、こういう展開にせざるを得なかったのだろうか。そんな勘ぐりまでしたくなる。本来、こういうストーリー展開なら途中から加わる男ではなく、最初からいた男の方に感情移入するように作るのではないだろうか。

 全体としてチグハグで、納得のいかない展開。期待していただけに残念。話題になっているジョニー・デップも、ジュード・ロウも、コリン・ファレルも、出るのはほんの1シーン程度。短い。とうぜんヒース・レジャーの存在感は大きい。それだけにこの結末は残念だ。

 オーストラリア出身のヒース・レジャーは本作の撮影中、ロンドンでの撮影を終えた2008年1月22日にニューヨークの自宅で薬物の過剰摂取(または複数の処方薬の中毒)により28歳で亡くなった。まだまだこれからという時に……。しかも医師から処方された薬にたよっていたというのもショッキングだった。「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)、「ROCK YOU! [ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)、「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・加/米)、とおもしろい作品がずらり。そしてつい最近「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)の名演技で話題になっていたというのに、残念。

 ドクター・パルナサスを演じたのはカナダ生まれのクリストファー・プラマー。1927年生まれというから83歳。まったく元気だ。「カールじいさんの空飛ぶ家」(Up・2009・米)では冒険家の声をあてていた。やっぱり有名なのは名作「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)のフォン・トラップ大佐役。「空軍大戦略」(Battle of Britain・1969・英)や、タイム・トラベル・ラブ・ストーリーの「ある日どこかで」(Some Where in Time・1980・米)、最近では重役的な役が多いようで、犯罪映画「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)でもそんな役を演じていた。

 その娘、ヴァレンティナを演じていたのはイギリス生まれのリリー・コール。ちょっとデボン青木に似た感じの人で、同じようにモデル出身。現在ケンブリッジ大学に通う才女。2007年くらいから映画に出ているらしい。きれい。

 曲芸師アントンはアンドリュー・ガーフィールド。ロバート・レッドフォードの「大いなる陰謀」(Lions for the Lambs・2007・米)で戦場に行く学生を演じていた人。その後「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl・2008・英/米)にも出ていたが、クレジットのみでカットされたらしい。

 博士の片腕である背の小さなパーシーは、ヴァーン・トロイヤー。こういうキャラクターはだいたい高飛車な口をきくというちょっとステレオタイプなのが残念だが、お下劣傑作コメディ「オースティン・パワーズ:デラックス」(Austin Powers: The Spy Who Shagged Me・1999・米)でミニ・ミーを演じていた人。

 悪魔のニックを演じたのはトム・ウェイツ。もともとはミュージシャンらしく、1976年くらいからTVで音楽の仕事を始めたのだとか。コッポラの不思議なファンタジー「ワン・フロム・ザ・ハート」(One from the Heart・1982・米)では作曲を手がけている。その関係かコッポラ作品への出演が多い。最近は実在の女賞金稼ぎを描いた「ドミノ」(Domino・2005・仏/米)に出ていた。本作では酷薄な感じのする薄い口ひげがよく似合っていた。

 第三世界の子供の臓器を売買しているという会長を演じていたのは、ピーター・ストーメア。まあ悪役の多い人で、TVの「プリズン・ブレイク」のアブルッチ役は記憶に新しい。「ブラザーズ・グリム」(The Brothers Grimm・2005・英/チェコ/米)にも出ている。強烈だったのは「URAMI 怨み」(Bruiser・2000・仏/加/米)。

 脚本はチャールズ・マッケオンと監督も兼ねるテリー・ギリアム。チャールズ・マッケオンはテリー・ギリアムも参加していたイギリスのコメディ番組「モンティ・パイソン」に出演していた人で、テリー・ギリアムのSF「未来世紀ブラジル」(Brazil・1985・英)、不思議な冒険談「バロン」(The Adventures of Baron Munchausen・1988・英/独)、傑作中世アクション「プランケット&マクレーン」(Plunkett & Maclene・1999・英)などに脚本家として参加している。本作では出演もしているという。

 監督のテリー・ギリアムはアメリカ生まれだが、イギリスの人気コメディ番組「モンティ・パイソン」(Monty Python's Flying Circus・1969〜1974・英)に、クリエーター、脚本家、アニメーター、俳優などで関わってきた人。だいたい「バンデットQ」(Time Bandits・1981・英)、「バロン」など不思議なファンタジーが多い。「ラスベガスをやっつけろ」(Fear and Loathing in Las Vegas・1998・米)でジョニー・デップと、「ブラザーズ・グリム」でヒース・レジャーと仕事をしている。SFの「12モンキーズ」(Rwelve Monkeys・1995・米)や「ローズ・イン・タイドランド」(Tideland・2005・加/英)のようにダークな作品もある。ただ、運に恵まれない人のようで、「未来世紀ブラジル」は大変な苦労をして完成が危ぶまれたほどで、その顛末が本になった。そして苦労の末ようやく撮影にはいったジョニー・デップとの「ドン・キホーテを殺した男」は撮影中に次々と災難に見舞われ、中止の憂き目に。その様子はメイキング・ドキュメンタリーとして「ロスト・イン・ラ・マンチャ」(Lost in La Mancha・2001・英/米)のタイトルで公開されたほどドラマチックだったようだ。本作ではメインの俳優が亡くなっている。

 公開初日の2回目、新宿の劇場は全席指定で、これも前日に確保。10分ちょっと前に開場。入ったら4〜5人の関係者らしい一団が場内左右に。多いなあ。目立ち過ぎ。このむ作品も始まってもどんどん人が入ってきた良くわからなかったが、たぶん1番大きい劇場の607席がほぼ満席になったようだった。

 年齢層としては、年少者はいなかったと思うが、若から老まで幅広かった。ただ2/3くらいが若者層。男女比も3.5対6.5くらいと女性の方が多かった。ジョニー・デップ効果だろうか。テリー・ギリアム作品はあまり若い人や女性が見ない気がするのだが……。

 気になった予告編は……詳細はさっぱりわからないが「みなごハッチ」が劇場公開されるらしい。アニメ、なんだろうなあ、当然。TV・CMの方が先に始まった「ゴールデンスランバー」は、よくわからないが首相暗殺犯に仕立て上げられた男の話らしい。予告は面白そう。

 上下マスクの「アデル」はリュック・ベッソンの監督作品。日本の公式サイトはまだない模様で、プテラノドンのような怪物と、馬、冒険、女性くらいしかわからない。上下マスクの「第9地区」は、インタビュー構成の予告。アフリカが舞台の戦争ドキュメンタリーかと思ったら、SFアクションらしいことはわかった。でもボカシのかかった宇宙人が登場。ということはコメディか。

 上下マスクの「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」は新パターンの予告。ドラゴンやゴーゴン、デミゴッド、ジス・イズ・ア・ペンに、大冒険。面白そう。


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