The Haunting in Connecticut


2010年1月24日(日)「エクトプラズム 怨霊の棲む家」

THE HAUNTING IN CONNECTICUT・2009・米・1時間43分(IMDbでは92分、延長版は102分)

日本語字幕:手書き書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/hauntinginconnecticut/
(全国の劇場案内もあり)

1987年、アメリカ・コネティカット州の小さな町に暮らすキャンベル一家は、長男のマット(カイル・ガルトナー)が末期癌のため、毎週治療の度に妻のサラ(バージニア・マドセン)が何時間も掛けて車で送り迎えしていた。しかし症状が悪化するに従って、長時間のドライブが運転するサラはもちろん、マットにも良くないということで、病院に近い家を借りて引っ越すことにする。ある日、偶然、サラは格安料金を貸家を見つけ、甥のビリー(タイ・ウッド)と姪のメアリー(ソフィ・ナイト)、ベビーシッターのウェンディ(アマンダ・クルー)とともに引っ越す。父のピーター(マーティン・ドノバン)はローンを抱え、仕事の関係もあることから、単身残ることになる。ところが、引っ越したその日から、家には奇妙な現象が起こり始める。実はそこは、以前、地下に死体の防腐処理室や焼却炉も備えた葬儀場だったのだ。

73点

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 前売り券さえ作られず、ほとんど予告編も広告さえもほとんど行われていない作品にしては、面白かった。実話に基づいたホラーで、ちゃんとストーリーが破綻せずにしっかりと最後には収めて見せるあたり見事。謎解きの過程もおもしろい。この脚本と監督はかなりの実力者ではないだろうか。

 しかも、癌患者を抱えた家族というドラマもしっかりと成立させており、それがリアル過ぎてホラーに集中できないくらい。つまり恐さを楽しめないほど悲惨な状況。過去の恐ろしい事件も、実際の家族が多感な少年の末期癌患者をかかえて、経済的にも、絆さえも崩壊するさまに比べると大したことなく思えてしまう。実際にあった事件なので、設定が凝り過ぎたわけではないだろうが。それが惜しい。

 そして、やはり音で脅かすパターン。それは恐いのじゃなく、単なるビックリだというのに、ハリウッドのシステムに乗っかってしまうと、サウンド・デザイナーによって自動的に恐いシーンでは突然の大音響の音が付けられてしまうことになる。よほど監督かプロデューサーがこだわらない限り。特にハリウッドのプロデューサーの中にはホラーとは音で脅かすものというイメージができ上がっているようで、そういう音楽・音響効果が仕上がってくればすぐにOKを出してしまうという感じだ。どの映画でもハリウッド製のホラーはみんな全く同じ。最近では次に音が出るなとわかるようになってきた。それくらいワン・パターン。

 おかげでラスト近く、すべてのドアが勝手に開いたり閉まったりしてバタバタと音を立てるシーンが、それまでに大音響が何回も使われているから、まったく際立たない。こんな調子だからヨーロッパやアジアのホラーの方が恐かったりするのではないだろうか。静かな恐さ。日本的な考え方なんだろうか。

 実際の事件は2002年にTVのディスカバリー・チャンネルで放送されたらしい。TVドラマ化もされているのだとか。アメリカでは割りと有名な話なんだろう。

 多感な年ごろの末期癌患者マットを演じたのはカイル・ガルナー。2000年からTVで活躍。女子高生探偵の「ヴェロニカ・マーズ」(2004〜2007)などに出演。本作は初のメジャー劇場作品ではないだろうか。病弱な感じが実にうまかった。

 その母を演じたのはヴァージニア・マドセン。なかなか恐かった都市伝説ホラーの「キャンディマン」(Candyman・1992・米)で主役の女子大生を演じていた。結構ホラーに出ているが、最近ではさすがにお母さん役が多く、ハリソン・フォードのアクション「ファイアーウォヘル」(Firewall・2006・米/豪)で妻役を演じていた。ビリー・ボブ・ソーントンの「庭から昇ったロケット雲」(The Astronaut Farmar・2007・)やジム・キャリーの「ナンバー23」(The Number 23・2007・米)でも妻、お母さん役を演じていた。マイケル・マドセンの妹。

 お父さん役はマーティン・ドノヴァン。どちらかというとTVの仕事の方が多いようだが、ノルウェー映画のリメイク・ミステリー「インソムニア」(Insomnia・2002・米/加)、マイケル・ダグラスの「ザ・センチネル 陰謀の星条旗」(The Sentinel・2006・米)などにも出ており、名バイプレーヤーという感じ。本作でも元アル中の感じとそれで悩むところなど良かった。

 ベビーシッターのウェンディはアマンダ・クルー。カナダ生まれの24歳。「ファイナル・デッドコースター」(Final Destination 3・2006・独/米/加)にも出ていて、主人公の妹を演じて目立っていた人。美人。本作でも少ない出番ながら印象に残る。シャワー・シーンはちょっと半端だったけど。

 力を貸してくれるポペスク牧師を演じたのはイライアス・コーティアス。本作は良い役だが、悪役が多い人で、「ザ・シューター 極大射程」(Shooter・2007・米)や「コラテラル・ダメージ」(Collateral Damage・2002・米)でも実に憎たらしい悪役を演じていた。つい最近ホラーの「THE 4TH KINDフォース・カインド」(The Fourth Kind・2009・米)に出ていたばかり。

 脚本はアダム・サイモンとティム・メトカーフの2人。アダム・サイモンはアメリカのホラー映画のフィルム・メーカーにインタビューしたドキュメンタリー「アメリカン・ナイトメア」(The American Nightmare・2000・米/英)の脚本・監督を務めた人で、2001年からティム・メカトーフと一緒にホラーの「BONESボーンズ」(Bones・2001・米)の脚本を書いているが、見ていないので、何とも……。ホラー系の人ではあるらしい。ティム・メトカーフはブラッド・ピットのKで始まる「カリフォルニア」(Kalifornia・1993・米)の原案と脚本を手がけた人。

 監督はピーター・コーンウェル。15分の短編アニメ「WARD 13」(2003・豪)で多くの賞を受賞、国際的に高い評価を得て、本作で実写の長編劇場映画監督デビュー。本作はIMDbで5.8点と低い評価。はたして次はどうなるのか。

 前売り券がないので見ないつもりだったが、よい劇場で上映され、しかもホイントが使えるというので、急きょ見ることに。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は30分くらい前について、劇場内には持ち込めないうまいコーヒーを飲みながらロビーで待機。15分前くらいに開場し、場内へ。とくかく遅れてくるヤツが多く把握しにくかったが、若から中高までほぼ万遍なくいた感じ。最終的には127席に20人くらいだったろうか。女性は若い人が1人か2人。もっと入っても良いと思うが……。近くの席で靴を脱ぐオヤジがいて、がっかり。テンションがダダ落ちした。

 気になった予告編は……上下マスクの「タイタンの戦い」はとにかく驚異の映像と大冒険の予感でぜひ見たい。1981年版も楽しめたが、技術の進歩でどこまでスゴクなっているのか。


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