Katyn


2010年1月29日(金)「カティンの森」

KATYN・2007・ポーランド・2時間02分

日本語字幕:手書き書体右縦、久山宏一/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、by Panavision)/ドルビー・デジタル(IMDbではドルビー・デジタルEX)

(スウェーデン15指定、日R15+指定)

公式サイト
http://katyn-movie.com/pc/
(全国の劇場案内もあり)

1939年、ポーランドは西からドイツ軍が進攻し、東からソ連軍が進攻し、人々は大混乱の中逃げ惑っていた。クラクフから娘ニカを連れてポーランド軍の将校である夫のアンジェイ大尉(アルトゥル・ジミイェフスキ)に会いに来たアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)だったが、ソ連軍の捕虜として軍用列車で収容所に運ばれてしまう。アンジェイ大尉はソ連は赤十字に加盟していないから手紙を書いても家族に届かないから、手帳に起きたことをすべて書くと決心する。そのころクラクフでは侵攻してきたドイツ軍によって大学が閉鎖され、アンジェイの父ヤン教授(ヴワディスワフ・コヴァルスキ)が逮捕され、ザクセンハウゼン収容所に送られてしまう。

72点

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 うーん、これは……。重くて暗い作品は予想していたことだが、意外と感情が伝わって来にくかった。というのも、テーマはカチンの森の虐殺事件で、それしか掘り下げていないのに、群像としようとしたようで、多くの人を立てたために、焦点がぼけてしまった感じ。

 実写記録映像を交えながら映画は1939年のドイツ軍のポーランド侵入から始まり、独ソ不可侵条約を破ったソ連軍もポーランドに浸入するや、秘密裏にポーランド人将校をおよそ15,000人も虐殺したこの事件が1941年に起きる。さらにこれをドイツ軍が発見して1934年にソ連の犯行と発表し政争の道具として使うが、1945年に第2次世界大戦が終り、ソ連軍が進攻してきて、ドイツ軍の仕業だったとプロパガンダに使われたと発表、それは終戦後にまでおよぶ。

 細かく、伏線というか、連携が取られていて、最後にはそれらがピッタッとハマってくるあたりはさすがの展開。しかし、重要な出来事が映像ではなく、ほとんどセリフとして語られるだけなので、感情移入しにくい。話のスパンが長過ぎ、間口も広過ぎ。1つの家族とか1人の人物に絞った方が良かったかも。

 しかも、観客には軍服の違いがわかりにくい。ドイツ軍は緑系だから違いがわかるが、ポーランド軍とソ連軍は茶系でとても似ている。そしてポーランド語とロシア語の違いも良くわからないから、誰がどの軍やら……。ヨーロッパの人には簡単に見分けられるのだろうけど。その上字幕に字数の制限があって、情報量が少なくなっているから、ますます混乱する。吹替版ならわかりやすいのかもしれない。

 ほとんどの役者が日本ではなじみがない。かろうじてアンジェイの母を演じたマヤ・コモロフスカが見たことがある感じだが、日本劇場公開されたTVドラマ「夜曲(ノットゥルノ)/シューベルト愛の鼓動」(Mit meinen heisen Tranen・1986・墺)や「悲愴」(Wherever You are・1988・ポーランド/英ほか)があるが、どれも見た記憶がない。アンジェイ・ワイダ作品は「ヴィルコの娘たち」(Panny z Wilka・1979・ポーランド/仏)に出ている。

 アンジェイの父ヤン教授役のヴワディスワフ・コヴァルスキにも見覚えがあったが、なんと押井守監督の「アヴァロン」(Avalon・2000・日)にゲーム・マスター役で出ていた人らしい。

 監督は大御所アンジェイ・ワイダ。1926年生まれと言うから84歳。主な作品に「地下水道」(Kanal・1957・ポーランド)、「灰とダイヤモンド」(Popiol i diament・1957・ポーランド)、「約束の土地」(Ziemia obiecana・1975・ポーランド)、「大理石の男」(Czlowiek z marmuru・1977・ポーランド)、「鉄の男」(Czlowiek z zelaza・1981・ポーランド)、「コルチャック先生」(Korczak・1990・ポーランドほか)などがある。本作では脚本も担当。

 登場する銃は、ドイツ軍のKar98kライフル、ソビエト軍のたぶんSG-43重機関銃、ポーランド軍将校が自殺に使うオートマチックはラドムかトカレフか、そしてソ連軍のサブマシンガンPPSh-41、パルチザンの青年が持っていたのはルガーP08、ソ連軍が虐殺に使う拳銃はドイツのワルサーP38(1回不発になるのが「戦場のピアニスト」(The Pianist・2002・英/仏ほか)と同じでより恐さを増加させている)といったところ。

 公開ほぼ2カ月後、前売り券をもらったので、劇場公式サイトで調べたら土日は混むらしいので、金曜日の初回、30分前開場と言うことで30分前に着いたらすでに開場済み。232席の1/4くらいが埋まっていた。

 最終的に220席はほぼ満席。古い劇場でデジタル・サウンドには対応しているものの、床がフラットでスクリーンも小さく、座席が千鳥配列でも前席が邪魔になってスクリーンが良く見えない。字幕が下に出たらかなり読みづらいのではないかと思う。ほほ高齢者で、第二次世界大戦に興味がある年齢層ということだろう。平日の初回という時間帯もあるはず。若〜中年層もいたが2〜3割ほどか。しかも女性が圧倒的に多かった。たぶん8割りくらいがおバアさん。

 ブザーの後アナウンスがあって、カーテンが上にあがって暗くなってから予告。CMは入れないのがポリシーらしい。「抵抗と人間」というテーマで、ジャン=ピエール・メルヴィル監督の「海の沈黙」(Le Silence De La Mer・1947・仏)とロベール・ブレッソン監督の「抵抗」(Un Condanne a Mort S'est Echappe Ou Le Vent Souffle Ou Il Veut・1956・仏)の2本が上映される。楽しい映画ではなさそうだが、思索が好きな人には向いているかも。


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