Golden Slumbers


2010年1月31日(日)「ゴールデンスランバー」

2009・アミューズ/東宝/博報堂DYメディアパートナーズ/CJ ENTERTAINMENT/KDDI/スモーク/Yahoo! JAPAN/ショウゲート/朝日新聞社/TSUTAYAグループ・2時間19分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://www.golden-slumber.jp//
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

仙台。宅配便のドライバー、青柳雅春(堺雅人)は、大学時代の友人、森田森吾(吉岡秀隆)に釣りに行こうと呼び出され、待ち合わせて車で出かけるが眠ってしまい、気が付くと首相の凱旋パレードのコースすぐ近くに停車している。森田は「早く逃げろ。オズワルドにされてしまうぞ」と警告、車を出た時パレードの上を飛んでいたラジコン・ヘリが爆発、近くにいた警官が青柳を認め拳銃を抜いていきなり撃ってくる。あわてた青柳は逃げ出すが、森田の車が爆発し、警官もろとも吹っ飛ぶ。

78点

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 ちょっと長いが、面白かった。すっきり爽快。デート・ムービーには最適では。予告編の印象とはだいぶ違った。すべてが収まるところへ収まるのではなく、いくつかは変わらないが、それでも納得の収まり方。事件の実行犯や手口、裏で糸を引いていたもの、そして関わったものがあばかれるわけではないが、楽しめる。

 巻き込まれ型の悲惨なストーリー展開でありながら、不思議と爽やかで、笑いさえ適度にちりばめて、キッチリ落とす。脚本も、演出も、俳優たちもピタッとはまっている。それが凄い。才能が重なり、相乗効果となっている。たいていは不協和音となってマイナスになってしまうことが多いのに。

 そして甘酸っぱい懐かしさ。1969年に発表されたビートルズのアルバム“アビイ・ロード”の中の1曲“ゴールデン・スランバー”をモチーフに、懐かしい青春の学生時代が描かれる。それぞれ生きる道は違ってしまったが、そのつながりが現代にも生きている。

 そして、だまされてもだまされても、超お人好しの主人公は信じることが俺の武器なんだと馬鹿正直に進んでいく。観客でさえほとんどがヤバいと思っているのに、主人公は不用心に出て行ってしまう。この辺は少し引いてしまうかも。あとは良い。うじうじと過去のことで悩んだりしない。ノーテンキなのではなく、前向き。観客が感情移入しやすい。

 警察や善人に見える人が裏切り、通り魔やヤクザもの、闇の美容整形外科医などが逆に助けてくれる。逆転の人物設計も面白い。そして友人のありがたさ。ただ、本格ミステリーを期待すると違うということになる。犯人も犯行手口も明らかにならないし、なぜ犯罪者が助けてくれるのかも、わからない。ただ逃げて逃げて逃げ切ると。その逃げっぷりがみごと。

 主役の青柳雅春には堺雅人。最近は「クヒオ大佐」(2009・日)や「南極料理人」(2009・日)、「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2009・日)など出まくりの感じ。目立ち始めたのはNHKの大河ドラマ「新撰組!」(2004)あたりからだろうか。日航機墜落事件をめぐる記者たちの奮闘を描いた「クライマーズ・ハイ」(2008・日)でも光っていた。まっすぐで人の良さそうな感じが良く、それがこのドラマの成否を握っていたのかもしれない。

 学生時代の恋人、樋口晴子は竹内結子。目立ち始めたのは「リング」(1998・日)あたりか。「黄泉がえり」(2002・日)では堂々のヒロイン。「いま、会いにゆきます」(2004・日)で主演、そして中村義洋監督の話題作「チームバチスタの栄光」(2008・日)「ジェネラル・ルージュの凱旋」と続けて出演している。まさに旬な女優。

 大学時代の友人、森田森吾は吉岡秀隆。どうしても倉本聰の「北の国から」(1981・日)が強烈だが、「男はつらいよ 寅次郎紙風船」(1981・日)以降、シリーズにも良く出ている。最近では「ALWAYS続・三丁目の夕日」(2007・日)が良かった。迷いのある感じが抜群にうまい。

 もう1人の大学時代の友人、小野一夫は劇団ひとり。芸人以外に役者としてTVや映画でも活躍。ゲスト的な出演が多かった気がするが、本作はかなり重要な役。

 謎の通り魔キルオを、かわいい陽気なキャラで演じたのは、濱田岳。「ミッドナイトイーグル」(2007・日)で竹内結子と共演している。「鴨川ホルモー」(2009・日)では本作と似た雰囲気の役で、唯一笑える成功キャラだった。この雰囲気を出せるのはこの人しかいないだろう。

 主人公を助けるヤクザッぽい入院患者(それも仮病というかウソけが?)の男は柄本明。志村けんとコントなんかやるとめちゃくちゃ面白いのに、怖い顔をするとめちゃくちゃ恐い。この役にピッタリ。

 まあ、ほかにも有名俳優がズラリ。ちょっと出過ぎの感じはする。実力が有るのに、役をもらえない言い役者がいっぱいいるだろうに。有名俳優を抑えて、ギャラを抑え、それで浮いたお金をもっとCGにつぎ込んだ方が良かったと思う。悪くはないが、仙台市内での爆破シーンや、街の上の打ち上げ花火にもっとお金を掛けていればもっと違和感が少なかったのに。またロケ・シーンでは日本映画っぽく、コントラストが低めで青っぽい色調だったが、ここもお金を掛けたら力強い絵になっていたかも。

 警察のアブナイ男を演じる永島敏行が使うのは、ベネリのM3Tショットガン。持ち替え射撃を披露していた。またカートはオート・モードで飛んでいたように見えた。病院のダミー患者が持っていたのはサイレンサーをつけたシルバーのオートマチック。一瞬しか映らないのでよくわからなかった。警官のリボルバーはニュー・ナンブだったかチーフだったか、アップがないので不明。特殊部隊はスナイパー・ライフル(レミントンのM700だろうか)、MP5、M16系もあったか? 弾薬は麻酔弾という設定。銃器効果はビッグショット納富貴久男。銃器指導に2人の名前があった。

 原作は仙台在住の小説家、伊坂幸太郎の同名小説。数多くの賞を受賞し、また多くが映画化されている。主な作品は「重力ピエロ」、「アヒルと鴨のコインロッカー」、「死神の精度」、「陽気なギャングが地球を回す」、「グラスホッパー」などなど。

 脚本は監督でもある中村義洋、林民夫、鈴木謙一の3人。林民夫は伊坂幸太郎原作、中村義洋監督の「フィッシュストーリー」(2009・日)も手がけている。最近は「ダイブ!!」(2008・日)や「奈緒子」(2008・日)などスポーツものが多かったようだ。鈴木謙一は主に映画の仕事が多いようで、鈴木光司原作のホラー「仄暗い水の底から」(2001・日)の脚本を中村義洋とともに書いている。また伊坂幸太郎原作、中村義洋監督の「アヒルと鴨のコインロッカー」(2006・日)も手がけている。最近は「悪夢のエレベーター」(2009・日)も書いている。

 監督は中村義洋。ビデオ作品の「ほんとうにあった!呪いのビデオ」(1991・日)シリーズの構成・語りを現在までずっと続けている人。つまりホラー系が強いのだろう。しかし、本作のような普通のドラマもイケるというか、ホラーをちゃんと恐く撮れる人は何でもうまく撮れるということ。「アヒルと鴨のコインロッカー」、「チームバチスタの栄光」、「ジェネラル・ルージュの凱旋」「フィッシュストーリー」などを手がけている。本作がこの出来なら、他の作品も見て見たい気になった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に座席を確保しておいて、30分前くらいに到着してロビーで買ってきたコーヒーを飲みながら一服。15分前に開場になって場内へ。だいたい中学生くらいから中高年まで、割りと幅広かったが、多かったのはオバサン。男女比は半々くらい。最終的に157席はほぼ埋まった。ちょっと箱が小さいのでは。

 気になった予告編は……「時をかける少女」はとにかく主演の仲理依紗がかわいい。ただ、少年たちがたくさん見に来そうで、一緒に見るのはかなり勇気が必要そうだ。

 シブリの新作アニメは「借りぐらしのアリエッティ」。内容はまだ全くわからない。ただ蝉時雨が凄かったような……。

 そして、あの曲が流れて「踊る大捜査線3」が夏に公開になるらしい。曲を聴くだけでアガルなあ。

 とにかく遅れてくるヤツが多過ぎ。本編が始まってもまだ入ってくる。そしてエンド・クレジットが流れるとすぐ携帯でメール・チェック。ロビーに出てからやれ。1分も掛からないし、明るくて画面も良く見えるんだから。わざわざ暗いところでチェックする意味がわからない。入場のときに注意した方が良いんじゃないかなあ。

 自ら大河ドラマという「FLOWERS」は日本の6大女優共演らしい。内容は全く不明。「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」はTV拡大版のようだからまた混むんだろう。ちょっとパスだなあ。TV拡大版といえば「トリック」もまた作られるのだとか。予告を見る限りは、キャラはとても良いんだけれど、以前のものと同じ内容のようだった。


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