The Lovely Bones


2010年1月31日(日)「ラブリーボーン」

THE LOVELY BONES・2009・米/英/ニュージーランド・2時間15分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri、HDTV、RED)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビー・デジタルのみ)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.lovelyb.jp/#home
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

サーモン家の長女、スージー(シアーシャ・ローナン)は、両親に愛されて成長し中学に進んだが、1973年12月6日、近所に住むミスター・ハーヴィ(スタンリー・トゥッチ)によって殺害され、天国とこの世の間でさまようことになってしまう。この悲劇で警察は犯人を逮捕することが出来ず、悲しみのため家族はバラバラになり、ついには妻のアビゲイル(レイチェル・ワイズ)が耐えきれずで出て行ってしまう。父のジャック(マーク・ウォールバーグ)は独自に捜査を始め、ミスター・ハーヴィを怪しいとにらみバットを持って追いつめるが、勘違いした若者にめった打ちにされ重傷を負ってしまう。そんな時、妹のリンジー(ローズ・マクアイヴァー)も近所のミスター・ハーヴィを怪しいにらみ家に忍び込むが……。

71点

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 帰りがけに若いカップルの男性が一言。「これって宗教映画?」。まさにそんな感じもある。日本人にはキリスト教的世界観はわかりにくいが、これがそうなのかと。予告編とはだいぶ違う印象。

 ダークな物語。バッド・エンディングではないが、前半で掛けられたストレスは解消されず、ため息が出てしまう。不景気な時にはこういう映画ではなく、勧善懲悪というか「アバター」(Avatar・2009・米/英)のようなわかりやすくキッチリと方を付けてくれるものが良いと思う。気分がすっかり落ちてしまった。

 多くのホラー映画は死体が発見されないことで心霊現象が起こり、霊感の強い人がそれを感じて発見してちゃんと埋葬してやることで事件は解決する。ところが、本作はその原因を作って終る。すべての登場人がこれで納得しているかのように、14歳の少女さえ自分自身を解放することで現世への執着を捨て旅立つが、どうにもスッキリしなかった。「汝の敵を許せ」ということか。なんでもきっちり片づくのは物語の世界だけで、このほうが確かにリアルだとは思うが、こんな結末でいいのか。原作に忠実ということなのかもしれないが……。

 ピーター・ジャクソン監督の「乙女の祈り」(Heavenly Creatures・1994・英/独/ニュージーランド)や「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Ring: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)シリーズに通ずるダーク・サイド、暗さ。ただスージーを演じた青い瞳のシアーシャ・ローナンの可愛さ、愛らしさで救われている。

 そのシアーシャ・ローナンはアメリカ生まれの16歳。2003年からキャリアを積んでいるが、日本公開されているのはキーラ・ナイトレイの「つぐない」(Atonement・2007・英/仏)だけのよう。ヴァネッサ・レッドグレーヴの13歳の時を演じた。今後がとても楽しみな女優だ。

 父のジャックを演じたのはマーク・ウォールバーグ。本人はあまり好きではないようだが、この人はアクションものの方が光る。「ビッグ・ヒット」(The Big Hit・1998・米)、「ミニミニ大作戦」(The Italian Job・2003・米/仏/英)、「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」(Four Brothers・2005・米)、「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)などは面白かった。

 妻のアビゲイルはレイチェル・ワイズ。たぶん広く知られるようになったのは「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(The Mummy・1999・米)からではなかったろうか。「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2001・米/独ほか)とか「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・英/独)は衝撃的だったけれど、どちらかといえば明るい役の方が向いている気がする。暗い役だと、ぐーんとものすごく暗くなってしまう。

 やたら煙草を吸うクールなおばあちゃんはスーザン・サランドン。ジャック・レモンとウォルター・マッソーが共演した名匠ビリー・ワイルダー監督の「フロント・ページ」(The Front Page・1974・米)あたりから活躍している人で、「イーストウィックの魔女たち」(The Witches of Eastwick・1987・米)や「テルマ&ルイーズ」(Thelma & Louise・1991・米/仏)、「依頼人」(The Client・1994・米)、「デッドマン・ウォーキング」(Dead Man Walking・1995・英/米)、「グッドナイト・ムーン」(Stepmom・1998・米)など話題作に出ていた。最近は残念な「スピード・レーサー」(Speed Racer・2008・米/豪/独)のママ役で、あまり存在感はなかったが、本作も何だか中途半端な感じ。長くなり過ぎて出演シーンが短くされたのかもしれない。

 ちょっとぽっちゃりの妹リンジーを演じたのはローズ・マグアイヴァー。ニュージーランド生まれの23歳。これまではほとんどTVばかりのようで、今後の活躍に期待したい。

 あぶないオヤジ、ミスター・ハーヴィを演じたのはスタンリー・トゥッチ。髪の毛やヒゲや眼鏡で嫌らしくてあぶない感じを出しているが、実際のところはスキン・ヘッドの好男子。「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)で、主人公にファッション・アドバイスするちょっとオカマっぽいナイジェルを演じていた人。日本映画をハリウッドでリメイクした「Shall We Dance?」(Shall We Dance・2004・米)の竹中直人がやった役、そしてスピルバーグ監督とトム・ハンクスが組んだ「ターミナル」(The Terminal・2004・米)の厳しい空港職員などを演じていた。うまいからここまでの変態チックな感じが出せるのだろう。

 原作はアリス・シーボルトのベスト・セラー「ラブリー・ボーン」(ヴィレッジブックス)。それをフラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、監督のピーター・ジャクソンが脚本化。フラン・ウォルシュはピーター・ジャクソンの奥さんで、デビュー作の次からずっと脚本を担当している。フィリッパ・ボウエンも女性脚本家で、「ロード・オブ・ザ・リング」から脚本を担当しているらしい。なるほど。

 脚本・監督・製作はピーター・ジャクソン。デビュー作の「バッド・テイスト」(Bad Taste・1987・ニュージーランド)や「ブレインデッド」(Braindead・1992・ニュージーランド)はB級のスプラッタだったが、「乙女の祈り」は一転して恐ろしい心理ドラマに。そしてロバート・ゼメキスに見出されて傑作コミカル・ホラー「さまよう魂たち」(The Frighteners・1996・ニュージーランド/米)を撮り[この辺から太り始めたらしいが、最近またスマートにもどった]、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを撮った後、傑作「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)を撮っている。その人がなぜ本作なのか。

 劇中もスージーが誕生日にもらうカメラは、時代を反映してコダックの110(ワンテン)。ボクは大学の時アルバイトをしてやっと買った。ちょっとスパイ・カメラ、ミノックスのような雰囲気がある。懐かしかった。

 タイトルは「愛らしい骨」という意味。てっきり「愛らしく生まれて」という意味かと思っていた。ボーンは生まれるじゃなく、骨のボーンだった。日本語タイトルはボーンズにすれば勘違いされなかったのに。「ボーンズ」っていうドラマもあるんだし。まさか、誤解を狙ったとか……。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は20分前くらいに着いて待っていると、12〜13分前に開場。下は小学生くらいから、中高年まで幅広かったが、中学・高校生くらいは全くいなかった。目立っていたのは20代くらいの女性。最終的に287席がほぼすべて埋まった。男女比は3.5対6.5くらいで女性の方が多かった。小学生はごくわずかだったが、この作品を子供に見せるのはいかがなものか。かなり恐い。簡単に知らない人に付いていかないようにという教育には良いかもしれないが。

 気になった予告編は……サンドラ・ブロックの「しあわせの隠れ場所」は、黒人の少年を金持の一家が自分たちの子供として育てる話らしい。2/27公開だというのに日本語サイト無しって。

 画面が左右に広がってシネスコになってから、3D-CGアニメの「ヒックとドラゴン」少年と傷ついたドラゴンとの心の交流を描くらしい。かなり実写っぽい絵だったが、キャラクターはあくまでマンガチック。3D上映もあるのだとか。

 そして驚いたのは「アイアンマン2」。敵役はミッキー・ローク。サミュエル・L・ジャクソンやスカーレット・ヨハンソンとか美女もたくさん出ているようだった。6/11公開。これは期待。

 レオナルド・ディカプリオの「シャッター・アイランド」はミステリー感たっぷり。恐おもしろそう。いつもながらレオナルド・ディカプリオはうまい。


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