Invictus


2010年2月7日(日)「インビクタス 負けざる者たち」

INVICTUS・2009・米・2時間14分(IMDbでは133分)

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(Arri、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビー・デジタルのみ)

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/invictus/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

1990年2月11日、南アフリカ。刑務所からネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)が釈放される。彼はアフリカ民族会議(ANC)の副議長になり、そしてついには南アフリカの大統領に就任する。課題は山積で、貧困にあえぎ、黒人と白人の抗争は激化、内戦の危機さえあった。マンデラは初めて登庁した日、全職員を集めて白人の職員の力も必要だから、出て行く必要はないと伝える。さらに、国民のみならず、世界中の目にさらされることになる大統領警護官に、もとSASの公安の白人警察官を4名、黒人のチーフの下に付ける。そして南アの弱小ラグビー・チームの試合を観て、白人は南アチームを応援するが、黒人は相手チームを応援することに気付く。彼は主将のフランソワ(マット・デイモン)を呼んで、1995年に南アで開催されるラグビーのワールド・カップで優勝するようにほのめかす。

75点

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 さすがにクリント・イーストウッド作品、きわめて感動的。ちょっと涙が出そうになった。しかも、実話というのが凄い。ただ、絵は日本映画のように浅い色で、いつも曇り空みたい。あえてドキュメンタリーのような雰囲気を狙ったのかもしれない。スポーツ映画としても面白いのだが、やはりマンデラが魅力的で面白い人物。30年近く自分を牢獄に閉じこめた人を許すことができる人。いまは復讐の時ではなく、国を作る時だという。そして許しこそ最大の力と。まさにモーガン・フリーマンがネルソン・マンデラを好演。

 ただ、実話であって伝記映画的であることを承知であえて言えば、ちょっと物足りない感じも。決勝戦のスタジアムを下見する人物が誰か良くわからなかったのだが、怪しげな人物に見えて、狙撃事件のようなものが起きて、元SASの護衛官たちとドンパチがあるのか期待してしまった。

 ネルソン・マンデラにフォーカスされている分、弱小チームが強くなっていく過程がいまひとつ希薄だった気はした。だから実話でありながら、なぜ勝てたのかがセリフでは語られるが、いまひとつ説得力が感じられなかった。もちろんスポ根映画ではないのだが、そこが惜しい。

 なんと製作総指揮を兼ねているのがマンデラ役のモーガン・フリーマン。イーストウッド監督とはアカデミー賞作品賞を受賞した西部劇「許されざる者」(Unforgiven・1992・米)、自身がアカデミー賞助演男優賞を受賞した「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)で仕事をしている。そして本作でも主演男優賞にノミネートされている。個人的に好きな役者さんで、たまにハズレもあるが、出演作はほとんど面白い。「ショーシャンクの空に」(The Shawshank Redemption・1994・米)、「ベティ・サイズモア」(Nurse Betty・2000・独/米)、「スパイダー」(Along Came a Spider・2001・米/独/加)、「ブルース・オールマイティ」(Bluce Almighty・2003・米)、「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏/米/英)、「ラッキーナンバー7」(Lucky Number Slevin・2006・独/米)などなど。ちょっとお父さん的な雰囲気のある人で、スゴイ役者さんだと思う。

 主将のフランソワを演じたマット・デイモンもモーガン・フリーマン同様たくさんの作品に出まくり。内部告発映画「インフォーマント!」(The Imformant !・2009・米)のためなかなり体重を増やしたらしい。ブレイクしたのは「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(Good Will Hunting・1997・米)だが、やはり強い印象を残したのはアクションの「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)だろう。デイモン自身は「2」と「3」を担当したポール・グリーングラス監督に絶大な信頼を置いているようだが、ボクは1作目のダグ・リーマン監督のおかげではないかと思う。ただダグ・リーマンはほかにパッとしたものを撮っていないが……。個人的にはアクション・コメディの「ドグマ」(Dogma・1999・米)も好きだなあ。

 原作は新聞記者として世界各国で活躍したジョン・カーリン。それをアンソニー・ペッカムが脚本にした。アンソニー・ペッカムは、先頃急逝したブリタニー・マーフィが出演したサスペンス「サウンド・オブ・サイレンス」(Don't Say a Word・2001・米/豪)の脚本、そしてこれから公開される「シャーロック・ホームズ」の脚本も担当している。

 監督のクリント・イーストウッドはこのところ面白くてクォリティの高い作品を連発している。受賞歴は数知れず。フランスと日本から勲章も贈られている。1986年から2年、カリフォルニア、カーメル市の市長も務めている。オジサンにはやっぱり「荒野の用心棒」(Per qualche dollaro in piu・1965・伊/西/独)だったり、「ダーティハリー」(Dirty Harry・1971・米)だったりする。個人的には「マンハッタン無宿」(Coogan's Bluff・1968・米)や「戦略大作戦」(Kelly's Heroes・1970・ユーゴスラビア/米)、「アウトロー」(The Outlaw Josey Wales・1976・米)もいいなあ。初監督作品のストーカー・スリラー「恐怖のメロディ」(Play Misty foe Me・1971・米)は本当に恐かった。出演は減ったが「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米/独)は彼自身のようでピッタリ。感動した。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、コーヒーを買って40分前くらいに着。場内持ち込み禁止なので、ゆっくり美味しいコーヒーを飲んで待つと、20分前くらいに開場。ほとんど中高年で、男女比はほぼ半々。若い人は「ダーティハリー」を知らないのだからこんなものだろう。最終的に、遅れて入ってくるヤツが多くて、287席にたぶん9割りほどの入り。

 気になった予告は……「セックス・アンド・ザ・シティ2」が作られるらしいが、サラ・ジェシカ・パーカーってアメリカじゃ美人なの? どうにもピンと来ない。女性には人気らしいが、それも良くわからない。サラ・ミシェル・ゲラーは美人だと思うけど。

 サンドラ・ブロックがアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされている「しあわせの隠れ場所」は黒人の少年を養子にとる金持ち白人の話で、ちょっと出来過ぎの感じがしないでもない。感動作には間違いなさそうだが。それにしても速くタイルを出して欲しい。

 スクリーンがシネスコ・サイズになってからレオナルド・ディカプリオが出て、街が持ち上がっていって「インセプション」の予告。街が迷路で、ロゴになって……凄いビジュアル。こりゃ謎もたくさんあろうさという感じ。7月公開だそうで、日本語のサイトはまだない。

 「タイタンの戦い」は特にシネスコ・サイズになると凄い迫力の絵なのだが、いかんせんカットが短過ぎてパカパカつながれているので、めまいがする。これはいいのだろうか。こうしたいという演出サイドの希望というか欲望が先走り過ぎている感じ。


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