Percy Jackson & The Olmpians: The Lightning Thief


2010年2月27日(土)「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」

PERCY JACKSON & THE OLMPIANS: THE LIGHTNING THIEF・2010・加/米・2時間01分(IMDbでは133分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、表記無し/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、by Panavision)/ドルビー、dts(IMDbではドルビーのみ)

(米PG指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/percy/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

パーシー・ジャクソン(ローガン・ラーマン)は、いけ好かない継父ゲイブ(ジョー・パントリアーノ)と献身的な母サリー(キャサリン・キーナー)と暮らす難読症の高校生。ある日、ギリシャ・ローマ博物館へ見学に行き、臨時でやって来た教師に襲われる。からくも駆けつけた松葉杖の親友のグローバー(ブランドン・T・ジャクソン)と、車いすのブルナー先生(ピアース・ブロスナン)に助けられる。彼らによれば、グローバーは実は半人半獣のサテュロス〈森の精〉といいパーシーの守護者で、ブルナー先生も半人半獣のケイロン〈ケンタウロス族〉だという。そしてパーシーは神のポセイドン(ケヴィン・マクキッド)と人間のハーフ、デミゴッドで、ゼウス(ショーン・ビーン)から稲妻を盗んだ容疑がかけられ、多くの者がそれを狙っているという。14日後の深夜0時までに返さなければ戦争だと。事件を聞いた母サリーは、グローバーと共にパーシーを連れて車で〈訓練所〉へ連れて行くが、途中でミノタウロスが襲いかかってくる。

73点

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 良くできた冒険談。ほとんどゲームのR.P.G.感覚で、次から次へと課題が現れて、休む間もなく一気にクライマックスまで持っていく。そのハラハラドキドキ感を楽しめばいい。

 原作を読んでいないが、どうもかなり長い話を2時間にまとめたようで、細かい説明はない。そして説得力を持たせるエピソードなどもない。日本の昔話と一緒で、「むかしむかし、神様のいる国があったそうな」と始まれば、その設定を受け入れて聞かなければならない。本作も「スーパー・パワーと大きな体を持つ神と呼ばれる種族と、人間が共存していた。そして神と人間の間に生まれた者をデミゴッドと呼んだ」というところから始まる。ちょっと戸惑うが、これを受け入れられないと楽しめないかもしれない。

 耳慣れたギリシャ神話の神々が登場し、大冒険が展開する。このわくわく感と楽しさ。普通の少年が、自分がデミゴッドであることを知り、とんでもない事件に巻き込まれていく。友情と、淡い恋心と、家族の絆と、少年の成長を描いた、いわば青春冒険ストーリー。感覚的には、若い人たちのお話に、有名スターがカメオ的に何人も出ているという所か。

 CGを使った特殊効果は目を見張るばかりだが、ちょっと現実感が薄い部分もあった。やり過ぎなのか、細部のこだわりが足りなかったのか、予算不足だったのかも。

 構成としては、大きなクエストとしては稲妻を盗んでいないことを証明することだが、そのためにまず訓練所で訓練を受けなければならない。そしてその後、冥界にさらわれた人間のママを助け出さなければならない。そのためには小さなクエストとして、3つの珠を集めなければならない。主人公と、その守護者の親友、半人半山羊のサテュロスのグローバーと、訓練所で知り合った美しい少女、戦いの女神アテナのデミゴッド、アナベスの3人の冒険が面白い。ところが、最初のゴーゴン(ゴーゴンは3姉妹で、その1人がメデューサ。ポセイドンに愛されていたがアテナの呪いで怪物に変えられたという経緯を持つ)は苦労するものの、そのあとの5つ頭のヒュドラ、ラスベガスの竜宮城のような世界は、だんだん消化試合のようになっていって、いまひとつ盛り上がりに欠けたかも。惜しい。「どろろ」(2007・日)でも似たような感じだったなあ。

 主人公を演じたのは、ローガン・ラーマン。アメリカ建国を描いた「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)でメル・ギブソンの幼い息子役でデビューしたのだとか。ほかに1作目は楽しめたアシュトン・カッチャーの「バタフライ・エフェクト」(The Butterfly Effect・2003・米)、ジム・キャリー主演の暗いドラマ「ナンバー23」(The Number 23・2007・米)などにも出ていたようだが、最も存在感があったのは感動西部劇「3時10分、決断の時」(3:10 to Yuma・2007・米)の息子役だろう。父を愛しながらも反発するナイーブな少年の感じが実にみごとだった。本作でも、実年齢に近い役だが、家庭環境も悪く、学校でもちゃんと授業についていけないのに、ひねくれはするが破綻してしまわず、ちゃんと周りを慮って行動するよい子を、ウソ臭くなく好演。彼がいたからこそ、この物語は爽やかにすがすがしいものになっている気がする。実際は解らないが、映画ではホントよい子。観客が思わず応援したくなる。

 おふざけパートを担当するグローバーを演じたのはブランドン・T・ジャクソン。ローガン・ラーマンより年上の26歳。スタンダップ・コメディアン出身で、戦争映画コメディ「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)にアルパ・チーノという名の役で出ていた人。つい最近、残念だったシリーズ最新作「ワイルド・スピードMAX」(Fast & Furious・2009・米)にもBMWのドライバー役で出ていたらしい。

 主人公が一目ぼれする、戦いの女神アテナのデミゴッド、アナベスを演じたのは、アレクサンドラ・ダダリオ。高校の時に昼ドラのオーディションに合格してTVデビュー。以来、多くのTVドラマに出演している。たぶん映画の大きな役初めて。ちょっと気位が高そうな感じが役のイメージにピッタリ。

 ヘルメス(有名ブランドのエルメスと同じ。旅人の神で、泥棒の守り神でもある。ここにヒントが。翼の生えた靴を履いている)のデミゴッド、ルークを演じたのはジェイク・アベル。好青年の雰囲気だが意地悪そうな雰囲気もあり、役にピッタリ。やはりTVを中心に活躍してきた人で、映画ではつい最近「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)に出ていたらしい。今後シリーズ化されるなら活躍しそう。

 主人公のままを演じたのはキャサリン・キーナー。1980年代から活躍している人で、「マルコヴィッチの穴」(Being John Malkovich・1999・米)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、「カポーティ」(Capote・2005・加/米)でも再びノミネートされている実力派。最近では「かいじゅうたちにいるところ」(Were the Wild Things Are・2009・米)でもママ役を演じていた。

 車いすの先生ブルナー、実は半人半獣のケイロンを演じたのは、元007、ピアース・ブロスナン。日本では007以降パッとしない。「ダイヤモンド・イン・パラダイス」(After the Sunset・2004・)はそこそこ面白かったのに小劇場での公開で、悪役を演じた面白い西部劇「セラフィム・フォールズ」(Seraphim Falls・2006・米)に至っては日本劇場未公開。久々の話題作「マンマ・ミーア!」(Mamma Mia !・2008・英/米/独)では苦手な歌に挑戦して酷評されてしまった。本作では存在感はあるが、あまり重要な役でもなく、目立ってもいない。

 ほかの有名キャストはほとんどゲスト出演的扱い。神々の王ゼウスは「007/ゴールデンアイ」(GoldenEye・1995・英/米)で敵役を演じたショーン・ビーン。メデューサを演じたのは「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)のユマ・サーマン。冥界(地獄)の神、ロック・スターのハデスは、「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」のアホ監督役のスティーヴ・クーガン。そのハデスにさらわれハリウッドにあるという設定の冥界に閉じこめられているペルセポネを演じたのは、「メン・イン・ブラック2」(Men in Black II・2002・米)のロザリオ・ドーソン、主人公のヨッパライの義父ゲイブは「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)の裏切り者役のジョン・バントリアーノ……という感じ。

 原作はリック・リオーダンの同名小説。数々の賞を受賞した作者の初めての児童文学だそうで、日本ではほるぷ出版から発売されている。「盗まれた雷撃」「魔海の冒険」「タイタンの呪い」「迷宮の戦い」「最後の神」と全5巻あるそうで、本作はその1巻目に当たる。続編はどうなるんだろうか。2年に1本でも主人公は10歳も歳を取ってしまうので、交代しなければならないだろう。「ハリー・ポッター」シリーズのようにいくかどうか。

 脚本はクレイグ・ティトリー。残念などたばたホラー・コメディの「スクービー・ドゥー」(Scooby-Doo・2002・米/豪)のストーリーを担当した人。その後ファミリー・コメディの「12人のパパ」(Cheaper by the Dozen・2003・米)の原案も担当しているが、日本劇場未公開。いずれもIMDbでも低い評価で、ほとんど笑えないコメディだったが、どこを買われたのか。シリアスなストーリーに軽いコメディを持ち込みたかったのか。TVアニメの「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」も1本書いているらしい。深読みすれば、冒険という部分で共通性が有るのかもしれない……。

 監督は脚本家としても、プロデューサーとしても活躍するクリス・コロンバス。スピルバーグに見出されて脚本家としてデビューし、アンブリンに所属しているんだとか。監督としてのデビュー作は、エリゾベス・シューがかわいくて面白かった「ベビーシッター・アドベンチャー」(Adventures in Babysitting・1987・米)。その後「ホーム・アローン」(Home Alone・1990・米)で大ヒットを飛ばし、マコーレー・カルキンを大スターにしてしまった。ほかに泣かせるSF「アンドリューNDR114」(Bicentennial Man・1999・米/独)、そして、あの「ハリー・ポッターと賢者の石」(Harry Potter and the Sorcerer's Stone・2001・米/英)を手掛けたかと思えば、深刻なテーマのミュージカルの映画化「RENT/レント」(Rent・2005・米)なんていうまったく違った傾向の作品も撮っている。基本は冒険もので、コメディだが、実は泣かせるのも好きというところか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定なので、前日に確保しておいて、30分前くらいに劇場へ。劇場内への飲食物持ち込み禁止ということで、スタバで買ったコーヒーをロビーで飲みながら開場を待つ。15分前くらいに開場となり、入場。

 20代後半くらいから中高年まで幅広かったが、多かったのはこの種の作品にしては意外と高齢者。ギリシア神話というところか。男女比は5.5対4.5くらいでやや男性の方が多かった。最終的には232席のほぼすべてが埋まった。よかった、よかった。

 気になった予告編は……「時をかける少女」は面白そうなのだが、いかにも中高生向きほろずっぱい青春物語、というか初恋物語みたいで、こりゃ見に行けないなあと。主演の仲里依沙のかわいいこと。見るとしたら平日の一番人の入っていなさそうな時間帯を狙うしかない。だったらDVDを待つか。「ライアゲーム」は画質がとてもいい感じだったが、またまたTVドラマの映画化で……。「アリス・イン・ワンダーランド」は3D版と同じ長めのバージョンで、ティム・バートンの暗さがどれだけ出ているかが気になるところ。

 上下マスクの「シャッター・アイランド」は陰鬱な絵にミステリーの予感たっぷり。むしろオカルトチックな雰囲気さえある。一体どんなことが起きるのだろう。気になる。10/30って……。

 「Gフォース」はお笑い芸人の日本語の歌付き予告で、よほど内容がない作品なのか、逆に心配になった。見るのは止めておこうか。かなり子供向きのようだ。一部3D上映(+700円)。アニメ「プリンセスと魔法のキス」は軽いというか、あまり力の入っていない感じの予告。アカデミー賞にノミネートされているのに、面白くなさそうに見える。ダメなのか。

 驚いたのは、スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから、刑務所から始まる予告。マイケル・ダグラスが映って、日本語タイトルは出なかった気がするが「Wall Street」と出た。続編が作られるらしい。あのガッカリ作品連続出演のシャイア・ラブーフも出るらしい。監督はオリバー・ストーン。

 もっと驚いたのは、トム・クルーズとキャメロン・ディアスのミステリー仕立てのアクション「ナイト&デイ」。素晴らしい予告編。MP7にレーザー付きグロックか。これは見たくなる。でも今秋公開って!


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