The Princess and the Frog


2010年3月6日(土)「プリンセスと魔法のキス」

THE PRINCESS AND THE FROG・2009・米・1時間37分

日本語字幕:手書き書体下、稲田嵯裕里/ビスタ・サイズ(1.85)/ドルビー、dts、SDDS(IMDbではドルビーデジタルのみ)

(米G指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/pkiss/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

アメリカ、ニューオーリンズの黒人の娘ティナ(声:アニカ・ノニ・ローズ)は貧しい家庭に生まれたが、優しい父ジェームズ(声:テレンス・ハワード)と母ユードラ(声:オプラ・ウィンフリー)に育てられ、気立ての良い年ごろの女性に成長した。夢は自分のレストランを持つことで、両親に教えられたように、いつも星に願いをかけ、そして仕事を掛け持ちして貯金し努力を重ねていた。そんなある日、マルトニアの王子ナヴィーン(声:ブルーノ・カンポス)が、従者のローレンス(声:ピーター・バートレット)とともに妃選びのためニューオーリンズを訪れる。邪悪なヴードゥー教の魔術師ファシリエ(声:キース・デイヴィッド)は、言葉巧みに王子を誘い込むと、「別世界の友」の力をかりて王子をカエルに変え、従者を王子に仕立てて富豪の娘と結婚させ、その富を奪おうと計画する。そして街一番の富豪で、ティナの母が乳母をしていたことからティナの幼なじみの娘シャーロット(声:ジェニファー・コーディ)が、王子を仮装パーティに招く。シャーロットに招待されたティナは、パーティーでカエルになった王子と出会い、呪いを解くにはプリンセスからキスしてもらわなければならないと告げられ、嫌々キスするが、ティナの姿までカエルになってしまう。突然現れた変えるに会場は騒然となり、命からがら沼地へと逃げ込む。

76点

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 デート・ムービーにピッタリの映画。ディズニー王道のアニメーション。王子さま、魔法、冒険、愛、星、仲間、キス……すべての要素が入った鉄板のストーリー。貧しい生まれの少女が、王子と出会って恋に落ち、幾多の苦難を乗り越えて、ついにはめでたく結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし、と。しかも、ミュージカル仕立て。素敵な曲とダンスもちゃんとある。ジャズ好きなワニがいて、ジャズも楽しめる。感動して、ちょっと涙が出そうに。

 あまりに定番過ぎるようだが、そこは、何本もアニメーション作品を成功させている製作総指揮のジョン・ラセター、ファンタジーでありながら、単なる夢物語にはしていない。そこがうまい。

 現代の話らしく、王子が実は放蕩息子で、両親から見放され破産状態のため、富豪の娘と結婚しなければならなくなっていたり、娘も星に願いを掛けるだけではなく、ちゃんと小遣いを貯めて貯金していたり、単に美女にキスしてもらったくらいでは元の姿にもどらず、魔法使いのばあさんも単純に解決してくれるのではなく、説教を垂れて何が必要かを教えてくれ、この冒険というか悪との戦いで犠牲者までもが出てしまう……。世の中そう簡単ではないよという展開。これで説得力が出てくる。

 ただ、やっぱり設定は出来過ぎの感じで、人種差別の激しかったアメリカ南部の貧しい黒人の家庭に生まれて、こんなに素直で優しい子に育つのかという疑問も湧く。しかも、貧民街のような地区に住み、自分も貧しいのに、作った鍋を近所のみんなに分けてやり、近所も明るくて善い人ばかり、というのはなあ。そうであってほしいけれど。

 そして、前半は肝心の王子が放蕩バカ息子で、子供の時から周りの者が何でもやってくれたので、自分では何にもできないというダメ男。音楽が好きで、女の子と遊んで歌って、楽しく暮らしていければそれでOKというタイプで、どうにも観客としては好きになれない感じ。これが最後で変わるから良いのだが、ちょっと振り幅が大き過ぎる気もした。

 声の出演は、ティナにアニカ・ノニ・ローズ(日本語吹替版は鈴木ほのか)。ジェニファー・ハドソンが注目された「ドリームガールズ」(Dreamgirls・2006・米)で歌姫の1人を演じていた人。どうりで歌がうまいわけだ。

 王子ナヴィーンはブルーノ・カンポス(日本語吹替版は丹宗立峰)。「コールドケース」や「CSI」、「ER」などのTVドラマに多く出ている人。映画はあまりないようだ。その従者のローレンスはピーター・バートレット(日本語吹替版は石住昭彦)。やはりTVが多い人のようだが、メル・ブルックスのコメディをリメイクした「プロデューサーズ」(The Producers・2005・米)で、セット・デザイナーを演じていたらしい。

 ヴードゥー教の魔術師ファシリエはキース・デイヴィッド(日本語吹替版は安崎求)。キャラクターとしてはやせ形で、いかにも狡そうなイメージで、こんな感じの俳優さんもいたと思うが、声を担当しているのは、良いパパというイメージの人。多くの作品に出ていて、古くはジョン・カーペンターの傑作SFホラー「遊星からの物体X」(The Thing・1982・米)に出ていた。最近は日本劇場未公開作品が多く、メジャーな作品だと「Mr. & Ms.スミス」(Mr. & Ms. Smith・2005・米)あたりか。

 沼地の奥の木の上の船に住んでいる、いかにも陽気な黒人の肝っ玉母さん風ママ・オーディの声はジェニファー・ルイス(日本語吹替版は荒井洸子)。絵のイメージとはまったく違ってスマートな人で、TVを中心に活躍している。アニメではウィル・スミスが声をやった「シャーク・テイル」(Shark Tale・2004・米)や「カーズ」(Cars・2006・米)などをやっている。

 ゆかいな沼の住人、ジャズ好きなワニのルイスはマイケル=レオン・ウーリー(日本語吹替版は小林アトム)。キャラクターにピッタリの巨漢で、いかにもトランペットを吹きそう。TVの「コスビー・ショー」に出ていたようで、キャリアーはそれほど古くない。映画では「ドリームガールズ」がある。同じく沼の住人、歯欠けのお調子者ホタルのレイはジム・カミングス(日本語吹替版は駒田一)。エヴァンジェリーンと自分で名付けた夜空に輝く星に恋しているロマンチストながら、ものすごい訛りで、どこかチープでおかしいキャラ。アメリカ版「天空の城ラピュタ」(Castle in the Sky Laputa・1986・日)の昔からアニメの声優をやっていたようで、大ヒット作「アラジン」(Aladdin・1992・米)、アニメではないが「ベイブ/都会へ行く」(Babe: Pig in the City・1998・豪)、「シュレック」(Shrek・2001・米)などもやっている。アメリカ生まれで、普通の白人っぽいが、この訛りのうまさには驚かされる。

 ほかには、お金持ちのビッグ・ダディに、イメージにピッタリの「スピード・レーサー」(Speed Racer・2008・米/豪/独)でお父さんを演じたジョン・グッドマン(日本語吹替版は玄田哲章)。ティアナの父ジェームズに、誠実な感じがピッタリの「ブレイブ・ワン」(The Brave One・2007・米/豪)のテレンス・ハワード(日本語吹替版は三上市朗)。

 脚本と監督を担当したのは、ジョン・マスカーとロン・クレルンツの2人。2人は一緒に「リトル・マーメード/人魚姫」(The Little Mermaid・1989・米)や「アラジン」、「レジャー・プラネット」(Treasure Planet・2002・米)などを手掛けたベテラン。どうりで、うまいわけだ。

 製作総指揮の1人がジョン・ラセター。ピクサーの初期作品から監督を務め、大ヒット作「トイ・ストーリー」(Toy Story・1995・米)、「バグズ・ライフ」(A Bug's Life・1998・米)、「カーズ」などを監督している。製作総指揮として関わっている作品の方が多く、「トイ・ストーリー3」も含め5本も作品が控えている。

 公開初日の、2回目(字幕版1回目)、新宿の劇場は全席指定なので前日に座席を確保しておいて、30分前くらいに着いてゆっくりコーヒーを飲むはずが遅れて、12〜13分前に開場になったのでコーヒーを半分諦めて場内へ。字幕版なのに10代前半から中高年までと幅広い客層。さすがディズニー。メインは若い20代くらい。男女比は3対7くらいで女性の方が圧倒的に多く、ちょっと暗くなって予告編が始まった時点で287席に2割りくらいの入り。最終的に3割り行っただろうか。ちょっと入りが少ないのでは。

 気になった予告編は、上下マスクの「NINE」は新しいバージョンでの予告。とにかく絵がキレイでカッコいい。物語はどろどろなのかもしれないが。

 リュック・ベッソン印の3D-CGアニメ、シリーズ第2弾「アーサーと魔王マルタザールの逆襲」は、「スター・ウォーズ」みたいなタイトルで、日本語吹替での予告。ほとんど3D-CGで、完全に子供向きといった印象。これはパスか?

 ティム・バートンの印の3D-CGアニメ「ナイン 9番目の奇妙な人形」は、ティム・バートンが監督していないのでそれほど暗くしないようで、かなり面白そう。巨大ロボットのようなモンスターが現れたりする大冒険のようだが、人形が生きていることの意味を探そうとする深さも秘めているらしい。5/8公開。

 左右マスクで始まる「トイ・ストーリー3」は今までの2作をうまく使い、悲しい雰囲気を漂わせた予告。

 遅れてきてペチャクチャしゃべるカップルがいて、うるさかった。映画を見る最低のルールというか、マナーも知らない観客が増えた。海賊版撲滅も結構だが、マナーを知らせるのも必要なのでは。遅れて場内に入ったら、まずは動かず目をならして、それから姿勢を低くして素早く席に着くとか、しゃべらないとか……。


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