Sherlock Holmes


2010年3月13日(土)「シャーロック・ホームズ」

SHERLOCK HOLMES・2009・米/独・2時間08分

日本語字幕:手書き書体下、アンゼたかし/ビスタ・サイズ(by Panavison、Super 35、HDTV、1.85)/ドルビー・デジタル(新マーク)、dts、SDDS(IMDbではドルビー・デジタルのみ)

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/sherlock/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

19世紀末のロンドン、シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)とジョン・ワトソン(ジュード・ロウ)の2人は、レストレード警部(エディ・マーサン)率いる警官隊とともに、若い女性を誘拐して黒魔術のいけにえにして殺害しようとしていたブラックウッド卿(マーク・ストロング)の一味を現行犯で取り押さえる。裁判の結果、絞首刑にされるが、処刑の前にホームズと面会すると、これは始まりに過ぎないと告げる。医師であるワトソンはブラックウッド卿の死を確認するが、数日後、墓地の管理人が蘇ったブラックウッド卿を見たと通報。警察と駆けつけると、墓が荒らされており、棺の中にはまったく別人が入っていた。そんな時、ワトソンが「君を2度負かしたのは彼女だけ」という謎の女アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)が現れ、人を探してくれと言う。そして、レストレード警部の仲介でお偉いさんと会い、ブラックウッド卿のたくらみを止めてくれと依頼される。

75点

1つ前へ一覧へ次へ
 さすがバイオレンスのガイ・リッチー。いたるところに暴力をちりばめて、文系の探偵小説を体育系のアクション作品にしてしまった。しかも、暴力がほかのガイ・リッチー作品に比べてちょうどいい具合に抑えられているので、とてもおもしろい作品にまとまっている。イギリス的な皮肉の利いた笑いもたくさん埋め込まれ、おもしろい。

 19世紀末の猥雑な感じ、ちょっとホモッ気さえ感じさせるホームズとワトソンの友情関係、憎たらしく、ミステリアスな悪役、昔関係があったらしい謎の女、同じサイドのようですぐに逆の立場になる警察、世紀の発明に黒魔術、上流階級と庶民、それらが実にいい雰囲気を醸し出している。

 ホームズはストリート・ボクシングに出るようなマッチョで、銃も迷わず使うが、小説の設定どおり洞察力がずば抜けて優れていて、変人的ではあるが魅力的。しかも変装名人。新しいホームズ像だ。思索的というより行動的。ワトソンも単なる助手で、記録を取るだけではなく、対等な相棒で一緒に行動し、時にはホームズをリードする。ワトソンが結婚しようとすると、ちょっと邪魔するようなことをする。明らかに堅い友情で結ばれているが、ちょっと微妙な関係も。うまい。

 そして、お得意の緩急鮮やかな演出。スピードが速くなったり、スローになったり、戦い方をあらかじめスローモーションで見せてから、それを通常速度で実行するなどアクション・シーンの見せかたも面白い。

 新しいシャーロック・ホームズ像を演じて見せたロバート・ダウニー・Jrは、「チャーリー」(Chaplin・1992・英/米ほか)や「愛が微笑む時」(Heart and Souls・1993・米)などで注目を集めたが、麻薬に手を出し一時まったく沈んでしまった。その後ハル・ベリーのホラー「ゴシカ」(Githika・2003・米)あたりから復活してきて、「アイアンマン」(Iron Man・2008・米)で完全復活。コメディからシリアス、ヒーローものまで何でもこなし、芸の幅が広がった気がする。事件は良い経験になったのかも。

 ジョン・ワトソン役のジュード・ロウは、つい最近「Dr.パルナサスの鏡」(The Imaginarium of Doctor Parnassus・2009・英/加/仏)に出ていたが、いまひとつパッとしない感じが続いていた印象。無軌道な若者たちを描いた「ショッピング」(Shopping・1994・英/日)で注目され、「スターリングラード」(Enamy at the Gates・2001・米/独ほか)や「A.I.」(Artificial Intelligence: AI・2001・米)、「コールドマウンテン」(Cold Mountain・2003・米)など大作・話題作に出演していたのに。本作から復活か。ロンドン出身。

 謎の女アイリーン・アドラーを演じたのはレイチェル・マクアダムス。何といっても「きみに読む物語」(The Notebook・2004・米/ポルトガル)が良かった。かわいらしいお嬢さんのイメージ。それが強烈過ぎたのか、そういうイメージからちょっと脱出できず、次に良かったのは「きみがぼくを見つけた日」(The Time Traveler's Wife・2009・米)か。そしてまったく違うイメージで挑んだ生意気系の「消されたヘッドライン」(State of Play・2009・米/英/仏)の若手記者役は良かった。本作もお嬢様とは正反対。

 とんでもない犯罪者、ブラックウッド卿はロンドン出身のマーク・ストロング。ガイ・リッチー作品ではパンク・バイオレンスとでもいうべき「リボルバー」(Revolver・2005・仏/英)、「ロックンローラ」(RocknRolla・2008・英)に出ている。

 原案・脚本のマイケル・ロバート・ジョンソンは、映画学校からフォーカス・プラー/カメラ助手になり、ガイ・リッチーのラジー賞ダメ映画「スウェプト・アウェイ」(Swept Away・2002・英/伊)にも携わったらしい。本作が脚本家デビュー作品だとか。今後も期待できるかも。

 もう1人の脚本家、アンソニー・ペッカムは、つい先頃亡くなったブリタニー・マーフィーがいい味を出していたサスペンス「サウンド・オブ・サイレンス」(Don't say a Word・2001・米/豪)や実話に基づくイーストウッドの「インビクタス/負けざる者たち」(Invictus・2009・米)の脚本を手掛けた人。

 さらに、もう1人の脚本家、サイモン・キンバーグは、映画学校で卒論として書いた「Mr. & Ms.スミス」(Mr. & Ms. Smith・2005・米)が映画化され、日本劇場未公開ながら面白かった「トリプルXネクスト・レベル」(xXx:State of the Union・2005・米)、大ヒット・シリーズ「X-MEN:ファイナルーディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・加/米/英)を手掛け、最近、残念だった「ジャンパー」(Jumper・2008・米/加)を書いている。

 プロデューサーでもあるライオネル・ウィグラムは、本作の脚本と原案も兼ねている。メインはプロデューサーで、1980年代末から活躍をはじめ、最近では感動作「奇跡のシンフォニー」(August Rush・2007・米)、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(Harry Potter and the Order of the Phoenix・2007・英/米)、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(Harry Potter and the Half-Blood Prince・2009・英/米)の製作総指揮を務めている。

 監督のガイ・リッチーの映画はだいたい暴力、流血、汚い言葉、だまし、裏切り、ドラッグ、ホモ……などでできている。「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(Lock, Stock and Two Smoking Barrels・1998・英)は意外な展開で楽しめたが、それ以外はどれもパッとしなかった。というか、不快になるものばかり。たぶん本作が初めて脚本を書かなかった作品出はないだろうか。だから良かったのかも。

 曲が三味線っぽいのはなぜだろう。気のせいか、そういう曲を選んだのか。ホームズが増しなカッコをしてこいと言われて、アスコット・タイというのはなかなかおしゃれ。

 使われていた銃は、古いイギリスの3インチくらいのリボルバー。1挺は中折れのようなものがあったと思う。もちろん撃ち方も現代のようなダブル・ハンドではなく、片手で胸を張って半身に構えるやりかた。決闘のやりかたと一緒だ。レイチェル・マクアダムスが使っていたのは、もっと小型でトリガー・ガードの無いシース・タイプのトリガーだった。謎の紳士が変装したホームズに突きつけた袖から飛び出す銃は、4銃身のシャープス・デリンジャー。真ちゅうフレームで、小さそうだったので、.22口径かも。1859年〜1874年頃作られたということなので、設定的にはやや古い銃ではあるが、嘘にはならないだろう。ほかに水平2連ショットガンのピストル・タイプも出ていた。武器係はニック・ジェフリーズという人。ダニエル・クレイグの傑作戦争映画「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)を手掛けている。

 終りかたは、いかにも続編が作れますよという感じ。面白かったので、期待してしまう。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は60分前に着いたら20代くらいの男性と中年男性の2人。その後12〜13人になったところで、まだ50分前だったが早くも開場。これは嬉しかった。ほぼ中高年。男性。

 最終的には女性が増え、男女比は4.5対5.5くらいで女性の方が多くなり、若い人から中高年まで比較的ばらついていた。なぜか女性に2人連れが多かった。そして1,064席に4割りくらいの入りは、まあまあ良い方ではないだろうか。

 ただ、明るいまま予告に入ると、スクリーンが良く見えない。せめて前方くらいは暗くして欲しい。それに、寒い。空調が効いていないのか、設定温度が低いのか。暖め過ぎは良くないが、どうもここ系の劇場はみな寒い。映画に集中できないので、どうにかして欲しい。

 気になった予告は……せっかくのカッコイイ上下マスクの「アイアンマン2」の予告が明るくて良く見えない。ミッキー・ロークが大変なことになっているし、スカーレット・ヨハンソンはきれいだし、もう1人、美女が出てくるようだし、見たい。劇場前売り特典はヘルメットが可動するアイアンマン・キューピーの携帯ストラップ。6/11公開。

 上下マスクの「鉄拳」も暗いシーンが多いので良く見えなかった。かなりオリジナル・キャラクターに近い人が出ているよう。また外すかもしれないが、おもしろそうに見えた。北野武の上下マスク「アウトレイジ」は登場人物のほとんどが何か怒鳴っている感じできわめて暴力的。全員悪人、下克上なんだとか。うむむ……不快。

 「アリス・イン・ワンダーランド」の途中から暗くなったが、今度はピンが甘い感じ。どうなってんだ。上下マスクのSは「インセプション」はとにんく絵の力が強烈。逆光気味で、モノトーンっぽくカッコいい。すぐにも見たいが7月公開。レオナルド・ディカプリオは「シャッター・アイランド」も公開されていないのに、もう新作か。渡辺謙もこのほかに「ダレン・シャン」があるしなあ。

 上下マスクの「タイタンの戦い」は新しいバージョンでの予告。まあ、とにかくすごいビジュアル。カッコいい。クラーケンの醜いこと。スピード感、迫力、素晴らしい。3D上映もあるらしいが……。




1つ前へ一覧へ次へ