Cirque du Freak: The Vampire's Assistant


2010年3月20日(土)「ダレン・シャン」

CIRQUE DU FREAK: THE VAMPIRE'S ASSISTANT・2009・米・1時間49分

日本語字幕:手書き書体下、稲田嵯裕里/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavison、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://darren-shan.com/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

高校生のダレン・シャン(クリス・マッソグリア)は、悪友のスティーブ(ジョッシュ・ハッチャーソン)にそそのかされて、学校から禁止されている街にやってきた一夜限りのフリーク・ショー、「シルク・ド・フリーク」を見に行く。そして、クモ好きのダレン・シャンは、楽屋に忍び込むと出演していたラーテン・クレスプリー(ジョン・C・ライリー)が使っていた毒グモのマダム・オクトを盗み出し、学校へ持っていく。しかしマダム・オクトはカゴから逃げ出すと、スティーブを噛んでしまう。そしてそのまま学校を出てラーテンの元にもどる。解毒剤を求めて「シルク・ド・フリーク」を追ったダレン・シャンは、ラーテンからハーフ・バンパイアになって昼間の警護や世話などアシスタントをやれという交換条件を出される。その頃、スティーブは、もめ事が好きだという謎の巨漢、ミスター・タイニー(マイケル・サーヴェリス)によって凶悪なバンパイア、バンパニーズのメンバーにされ、逆恨みからダレン・シャンとラーテンを倒そうとしていた。

70点

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 このところハーフものは多いので、いささか食傷気味だったのだが、原作小説&コミックスのシリーズ累計が640万部というのに惹かれて見てしまった。正直、中途半端な印象。シリアスかと思えばギャグもちりばめられているし、子供だましのような展開や悪ふざけ、リアルさのない漫画のようなSFXだったり、まるでチグハグ。見どころは恋人役らしいフリークのモンキー・ガール、レベッカ役のジェシカ・カールソンと、ほかのフリークスだけ。それがなかったらお金を払って劇場で見る価値はないかも。脚本も、演出も、どうにも感心できない。ゲスト出演のようなキャストは立派だが、予算のほとんどがキャストなのではないかと勘ぐりたくなるほど。

 シリアスにコメディの要素を盛り込み、冒険活劇として仕上げるなどということはよくあることだが、それはシリアスなのかコメディなのか、軸足をちゃんと定めているからできること。何でも良いから受けそうな要素を放り込めと作ったものなんて、面白いはずがない。まったくバラバラで、まとまりがなく、中途半端。まさかハーフだからどっち付かずにしたなんてことはないと思うが……。

 納得できない展開。しかもばかティーンの無軌道な行動によって事件は起きるわけで、まったく同情できない。あまりに酷くて、むしろ観客は罰を受ければいいのにと思ってしまう。避けられないのならまだしも、自ら惨事を呼び込んでいる。当然の報い。しかも助けようとする悪友が悪過ぎる。それを命まで掛けて救おうとするのがわからない。つるんでいることさえ理解不能。出てくるのはバカばっか。

 第2作を作る気満々の作りかただが、こんな出来では続編は難しいのではないだろうか。どうせ、あまり見たいと思わないし。もっと吸血鬼との戦いを見たかったが、第1話はしょせんネタ振りか。これで主役の子を世界に売り出そうというのだろうが、残念ながら印象悪過ぎ。バカに見える。

 その主役のダレン・シャンを演じたのはクリス・マッソグリア。「スーパーマン・リターンズ」(Superman Returns・2006・豪/米)のブランド・ラウスとか、「ドリヴン」(Driven・2001・米/加/豪)のキップ・パルデュー、「エラゴン遺志を継ぐ者」(Eragon・2006・)のエド・スペリーアスのように、自分の責任ではなく作品の出来のせいで沈没してしまうかもしれない。ショービズは恐い世界だ。

 その主役に輪をかけて酷いのがバカを絵に書いたような悪友のスティーブで、それを演じたのがジョシュ・ハッチャーソン。ゲームが本当になる「ザスーラ」(Zathura・2005・米)で悪ガキの兄を演じていた子。それとは対照的に、そして本作とも対照的に涙の感動作「テラビシアにかける橋」(Bridge to Terabithia・2007・米)で内気ないじめられっ子を演じていた。うまいから、余計に本作ではバカで憎たらしく見えたのだろう。

 お父さんのような存在感のバンバイア、ラーテン・クレスプリーを演じたのはジョン・C・ライリー。地味な脇役が多い人で、このような重要な役は似あわない感じがしたが、それでもうまい。1990年くらいから活躍しているが、パニック映画「パーフェクト・ストーム」(The Perfect Storm・2000・米)の漁師、悪党ミュージカル「シカゴ」(Chicago・2002・米/加)でレニー・ゼルウィガーに裏切られる夫、日本発のホラー「ダーク・ウォーター」(Dark Water・2004・米)で管理人を演じていた。

 モンキー・ガール、レベッカを演じた美女はジェシカ・カールソン。「マイレージ、マイ・ライフ」(Up in the Air・2009・米)のアンナ・ケンドリックと「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)のエイミー・アダムスを足して2で割ったような美しさ。これまでに数本の映画に出ているが大きな役は本作が初めての模様。今後にも期待の新人。

 凶悪なバンパイア、バンパニーズのマーロックを演じていたのはレイ・スティーヴンソン。なかなかの悪党ぶりだったが、強烈アクションの「パニッシャー:ウォー・ゾーン」(Punisher: War Zone・2008・米/加/独)では主役の悪を徹底的に懲らしめるヒーローを演じていた人。

 ゲスト出演的にチョイ役で出ていたのは、「シルク・ド・フリーク」の座長役で特殊メイクをした渡辺謙、ゲイっぽいバンパイアの紳士役でウィレム・デフォー、ヒゲが伸びるフリーク役でサルマ・ハエック、という豪華さ。

 原作は、子供向けホラー小説の巨匠と呼ばれるダレン・シャンの「ダレン・シャン ―奇怪なサーカス―」(小学館)。全12巻と外伝があり、日本ではコミック版も発売されシリーズ累計640万部を超えているという。

 問題ありそうな脚本を手掛けたのは、監督のポール・ワイツとブライアン・ヘルゲランド。ブライアン・ヘルゲランドは、「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)でアカデミー脚本賞を受賞した脚本家。監督もやる人で、メル・ギブソンの誘拐アクション「ペイバック」(Payback・1999・米)、傑作中世アクション「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)などを手掛けている。最近では面白かったアクション「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)を書いている。ただ、あまり出来の良くなかったリメイクの「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 123・2009・米/英)も手掛けているが。そんな人でも、この結果というのは、ポール・ワイツの責任大か……。

 監督のポール・ワイツは、青春Hコメディの「アメリカン・パイ」(American Pie・1999・米)の監督で注目され、ヒュー・グラントのコメディ・タッチ・ドラマ「アバウト・ア・ボーイ」(About a Boy・2002・英/米ほか)を弟のクリス・ワイツと監督し、アカデミー脚本賞にノミネートされた。ただし、それ以外はどれもあまりバッとしない。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は全席指定なので、前日に確保しておいて、15分前くらいに到着して10分前くらいに開場。客層はハイティーンから中高年までいたが、メインは10代の若い人。コミック人気のお陰か。男女比はほぼ半々くらいで、最終的には301席に3.5割りくらいの入り。この程度の出来ではこれでも入った方だろう。それにしても遅れて入ってくるヤツが多い。

 気になった予告編は……上下マスクの「タイタンの戦い」は新バージョンでの予告。面白そう。3Dは疲れるし集中できないのでパスしたいところ。「第9地区」も新バージョンで、モザイクが掛かっていた宇宙人の顔が一瞬モザイクが取れてあらわになる。たいして大きな驚きがないのはなぜだろう。うーむ。


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